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思いがけない助っ人の参戦

「案外やるじゃない。普段は大人しい木石ぼくせきみたいなのに、いざという時は意外と頼りになるのね」



 生徒会が去った後、先輩は少しからかうような視線を俺に向けてきた。



 正直、そんな風に見つめられると照れくさくて仕方がなかった。



 「……結局、問題を解決するどころか相手を怒らせただけですから。俺、やっぱりコミュニケーション能力がゼロだなって痛感しましたよ」



 さっきの自分の振る舞いを思い返すと、情けなくて自分が嫌になる。



 「そんなことないよ、影山くん。さっき、部活のために勇気を出して立ち上がったのは、すごく格好よかった。……手がずっと震えていたのに、それでも逃げなかった。私みたいに、怖くて声も出せない臆病な人間こそ、本当にダメなんだよ」



 ……やっぱり夜空さんは、俺と同じ側にいる存在なんだな。同類に認められるというのは、存外、嬉しいものだった。



 「そうそう。肝心な時にビシッと決められる男の子は、気概があって素敵だわ」



 あんな危機的状況だったというのに、先輩はもう自分のデスクに戻ってBL漫画を読みふけっている。



 そののんびりした様子を見て、俺は思わず問いかけた。



 「本当に大丈夫なんですか、先輩? 来週には試合ですよ。こっちのメンバー、本当に五人揃うんですか?」



 「慌てない慌てない。それもこれも君のおかげよ、後輩くん。言い忘れてたけど、昨日もう一人新入部員を勧誘しておいたの。そろそろ来る頃じゃないかしら」


「どういう意味ですか、先輩?」



 俺は一瞬でパニックに陥った。俺のおかげで新人が来たなんて、どういうことだ。俺みたいな死に損ないのオタクが、人を惹きつけるなんてあり得るのか?



 「それがね、すごく可愛い女の子なのよ。昨日、校内でゲームのランクが上がらなくて悩んでいる彼女を見かけたから、**『シャドウ・オペレーション(暗影行動)』**がめちゃくちゃ強い人がうちの部にいるわよって教えてあげたら、入部に同意してくれたの」



 「えぇっ? そんな適当な理由で?」



 そんな適当な理由で、可愛い女の子がこんな人気のない部活に騙されて入ってくるなんて。……いや、きっと先輩の顔に説得力がありすぎたんだろう。こんな端麗な令嬢から誘われたら、断れるはずがない。



 ……中身はともかくとして。



 「というわけで、後輩くんには苦労をかけるけれど、毎日彼女のランク上げを手伝ってあげてね。まあ、相手は可愛い女の子だし、君みたいな年頃の男の子なら喜んで手伝ってあげるわよね?」



 先輩が必死に笑いを堪えているのが分かった。彼女は何かを思いついたようで、二秒ほど必死に笑いを噛み殺した後、平然を装った顔で真面目な声を響かせた。



 「だって、その理由があれば、正々堂々とその子の可愛い身体を眺めることができるものね。いくら成熟した女性の私でも、後輩くんにずっと見つめられるのは恥ずかしいんですもの」



 その瞬間、背後から突き刺さるような軽蔑の視線を感じた。やっぱり夜空さんだ。



 「……影山くん、ちょっとエッチ」



 助けてくれ。今すぐ頭を地面に埋めたい。なぜ俺は土遁どとんが使えないんだ? 先輩を盗み見ていたこと、ずっとバレていたのか?



 死にたい。今すぐ死にたい。こんな状況……もう、謝るしかなかった。



 けれど先輩は、全く気にしていない様子でこう続けた。



 「本当に申し訳ないと思うなら、来週の試合でしっかり活躍してちょうだい。あ、最後の一人については、佐藤さんに声をかけておくわ」


千鶴先輩の口から出た「佐藤さん」というのは、同じ部活に所属している男子先輩、佐藤さんのことだ。先輩と同じ三年生だが、受験勉強の準備があるとかで、最近はめったに顔を見せない。



 俺の記憶にある佐藤先輩は、背が低く痩せ型で、黒縁メガネをかけた、いかにも「ガリ勉の男子生徒」といった風貌の人だ。



 そんな同じ三年生の男子先輩のことを考えていると、ふと、さっき出会ったばかりのもう一人の「先輩」のことが頭に浮かんだ。――生徒会長、神城楓。



 彼女のことがこれほど強く印象に残っているのは、千鶴先輩にそっくりなその容姿と、二人が顔を合わせた瞬間に火花を散らした、あの異常なまでの緊張感のせいだ。この二人には、間違いなく何か物語わけがある。



 「千鶴先輩、生徒会長の……神城先輩とは、お知り合いなんですか?」



 抑えきれない好奇心に突き動かされ、俺は思い切って尋ねてみた。



 「ええ、知っているわよ、瞬くん。だって彼女、私の実の妹だもの」



 千鶴先輩は、まるで隠す様子もなくあっさりと答えた。



 やっぱり、そうだったのか。似た者同士の顔を見て、薄々そんな推測はしていたけれど……それでもまだ、何か深い事情があるような気がしてならない。



 けれど、今の雰囲気ではこれ以上深く踏み込むことはできなかった。



 俺は湧き上がる好奇心を無理やり抑え込み、パソコンを起動した。そして、もう一ヶ月以上もログインしていなかった『LoL』を立ち上げた。



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