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18/20

初めてもらった告白手紙

月曜日



 昨夜徹夜明けでくたくただった俺は、あくびを噛み殺しながら、のろのろと部屋から這い出してきた。



「おはよう、瞬」



 今日の雫はまたあのダサい眼鏡をかけ、前髪を少し下ろして顔を隠してる。



「なんでいつもそんな格好してるんだよ?」



「面倒なことが減るから。

 こんな感じでも告白されちゃうし、モテすぎると勉強に集中できないでしょ?」



……絶対、内心ちょっと自慢してるだろ。



 そんな気配がした。



 でも正直、雫は性格もいいし、料理も完璧だし、素のままでも可愛いし……完璧な美少女だ。



 本気でおしゃれして素を出せば、白瀬さんに負けないくらいモテるはずなのに。



「告白されて断っても、相手が厄介なタイプだったら、学校生活に響いちゃうでしょ。だから……」



「だから?」



「瞬、この1年は他の女の子と付き合わないでくれる?

 じゃないと私、行き場がなくなっちゃうよ……べそべそ」



 雫は哀れんげな顔をするけど、声は完全に甘えモード。



「それとこれ、関係あるのかよ」



 適当に洗顔して、食卓に座る。



「もちろんあるよ~。瞬に彼女ができたら、一緒に住んでる私が邪魔でしょ?

 そしたら家に帰らなきゃだし、美味しいポテチもチョコも、面白いドラマも全部お別れ~」



「元々、ご飯と遊びが目的だったのかよ」



 俺はわざと傷ついたふりをする。



「じゃあ、瞬のためにヤキモチ焼いてもいいよ?

 瞬のこと大好きだから、他の子には目もくれないでね~」



 雫は声を潰して甘ったるく言ってきて、俺、鳥肌が立った。



「やめろやめろ、わかった。約束するから、その声はやめてくれ……

 まあ、元々俺なんかに好きな子なんていないし」



「じゃあ放課後、一緒に帰ろう?

 私、全然気にしないよ。

 むしろ付き合ってると思われた方が、勉強に集中できるし」



「俺みたいな陰キャと付き合ってると思われたら、雫の評判が落ちるだろ?

 クラスで小グループと揉めたこともある俺だし」



「大丈夫だよ。

 むしろ瞬と付き合ってるって思われた方が、誰も寄ってこなくて最高かも」



 その「付き合ってる」という言葉だけで、俺の顔が酒でも飲んだみたいに熱くなった。



「もう、時間がないから早く行こう」



「照れてる~」



「全然照れてない。先に行く、バイバイ」



「気をつけてね。お弁当持ってすぐ行くから」



 ……正直、これって告白なのか?



 道中ずっと考えてた。



 きっと違う。ただの冗談だろ。



 本当に可愛い子からラブレターをもらって、桜舞う夕方に真剣に告白されたら……なんて夢見た。



 所詮、恋愛経験が皆無なだけあって、女の子と接する機会が少なすぎて、明らかな冗談にもつい期待しちゃう。



 俺の春、いつになったら来るんだよ。



 校庭の桜、もうずっと咲いてるのに。



 やっぱり高校入っても陰キャはモテない。



 靴箱開けて、手紙一枚もないの見て、ため息ついた。



 朝、美少女とイチャイチャしたせいで、完全に枯れてた心にまた火が灯っちゃった。



 そういえば、ラノベでなんでみんな靴箱に手紙入れるんだ?



 臭くないのかよ……と思いながら、妙に期待してしまった。



 席について、机の中の漫画出そうとしたら、突然、手紙みたいなのに触れた。



 こっそり取り出したら、心臓が止まりそうになった。



 絶対、女の子が書いた手紙だ。



 綺麗な字、ピンクの封筒。



 内容は、部活終わりに校庭の桜の木の下で待ち合わせ。



 恋人がいないなら来てほしい、気持ちを伝えたいって。



 告白だ。絶対告白だ。



 俺の春、来るのか……?



 神様、ありがとう。



 朝に願っただけなのに、本当に恋が降ってきた。



 相手どんな子だろう。



 やっぱりこっちから告白した方が男らしいかな……



 まだ顔も見てないのに、もう彼女できた後の学校生活を勝手に想像してた。



 そのとき、雫が教室に入ってきて、俺の席の前を通り過ぎた。



 思わず目を逸らした。



 朝、「1年は他の子と付き合わない」って約束したばっかりだから。



 ……これ、浮気気分?



 俺、クズ男か?



 でも……もしこの手紙が本気で、悪戯じゃなかったら?



 うわぁ……彼女、欲しい。



 しかも好いてくれた子を裏切るのも、最低だよな。



 ……やっぱ、雫に話そうか。



 いや、ダメだ。



 話したら絶対「いいよ、行ってきな」って許してくれる。



 前からそういう子だって分かってるし、雫の優しさは隠せない。



 いつも冗談っぽくしてるけど、俺が本気で彼女欲しいって言ったら、絶対自分を犠牲にして許す。



 あの日、家に来て「自由に1年過ごそう」って言ってくれたときの、あの嬉しそうな目……隠せなかった。



 雫は優しい子だ。



 優しい子を泣かせたくない。



 しかも、雫は俺の友達だ。



 女の子できたからって、友達を裏切るようなヤツにはなりたくない。



 でも、告白してくれる子を無視するのも悪い。



 ちゃんと感謝して、断ろう。



 さようなら、始まる前に終わった初恋。



 心の中で、泣きそうだった。

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