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EPISODE:5 [完]

[13]

「ジュウジャ、イレビをー抱えて逃げてぇ!!」

今度は私が絶叫した。さっきと真逆な展開。

私の首に噛み付いた虎は獲物を離そうとせずにずっと噛み付いたままだ。


ジュウジャはハッとしたが、判断に迷った表情をした。

「私はいいの!もう無理だから!」

「ハロパ…」

ジュウジャが泣きそうな顔になった。


「お願いだから…ちゃんと当たってよねー、私の可愛い愛橋ちゃん!!」

私は渾身の力で右手に持った愛橋をイレビーに体当たりした虎に投擲した。

狙いは顔面で本当は仕留めるつもりだったけど、避けられて…でも偶然だけど虎の左足を貫いて地面の岩場に固定することが出来たの。神様この時は本当にありがとう。


「お前は少し痺れてて」

さっきジュウジャに貰っておいた小刀がいきなり役に立った。

私に噛みついて離さない虎の口と私の肩に深々と小刀を刺して固定した。

この木の虎は攻撃されても一切鳴き声も発さないから逆に怖い。



「ジュウジャ、今なら逃げられるから早く行って」

「お前も一緒に…」

「自分で分かるの。虎の牙が首を貫通するくらい深く刺さってる。本当は今、喋るのもしんどいからさ。もう私はだめだよ」

ジュウジャの目から一気に大量の涙が溢れ出た。


「もう長く話せないから私の言いたいことだけ言わせて!!私、ジュウジャのこと大好きだよ!でね…イレビーも大好き!だから、私がいなくなったら代わりにイレビーのこと大切にしてあげてほしい」

「なんだよそれ、ワケわかんねぇよ」


「私の事忘れて、幸せになって…」

「なんで勝手なことばっか言ってんだよ!!」


「……声出なく、、、なってき、、、た」

「俺も大好きだから!こんなの嫌だ!!ハロパァーーー!」


「ありがと、、、はや、、、く、、、行って、、」

私は最期にとびきりの笑顔を作ったつもりだったけど、上手く笑えてたかなぁ〜?自信ないや!

薄れゆく視界で、ジュウジャがイレビーを抱えて走っていく姿を見て安心した…そして、目の前が次第に暗くなっていった。



暗いなぁ、真っ暗だ

フッフッフッ…♪

でも私は全ッッッ然怖くない!


だって、私は大好きな彼氏と、大好きな親友をこの手で守れたから。

だから死ぬのも全ッッッ然怖くない!


ここまでの話が全て私の走馬灯!

死ぬ前に見る一瞬の映像、なんかジュウジャとイレビーばっかりだったなぁ。

でもこれだけは自信を持って言える…私、2人のおかけで幸せだった。

ジュウジャ、イレビー、ありがと




[14]

最愛の恋人を失った俺は廃人のようになった。

大切な人を守れなかった武器に何の価値がある!?

何が武器職人だ…

武器を作っている時間があるなら、もしその全ての時間を鍛錬に費やしていたなら、俺もハロパを守ってやれるくらいに強くなれた可能性もあるんじゃないか?

ハロパが死なない未来もあったんじゃないか?不甲斐ない自分が憎かった。



イレビーは頭部を打って気絶していたが、翌朝には目を覚ました。

俺はハロパが死んだことを伝えた。

「ハロパを…きみの親友を守れなかった。ごめん!」と泣きながら頭を下げた。

予想に反してその時イレビーは何も言わずに真っ直ぐに俺を直視していた。

いつもの弱気で泣き虫なイレビーではなく、強い視線…と言えばいいか?

「お前が守れなかったんだ!お前のせいでハロパが死んだんだ!」と無言で責められているような気がした。

俺は気まずさを感じてしまい逃げるように帰った。



俺はこの先、何を糧に生きていけばいいのか分からなくなっちまった。

「そうだよ…」

俺は半日かけて、ありったけの火薬を集めて爆弾を作って服に忍ばせた。

「ごめんな、ハロパ…やっぱお前のこと忘れられないや。ごめんな、お前との約束守ってやれないわ」

2匹は無理でも、ハロパに噛み付いた1匹だけでも虎を道連れにしてやろう。

俺はハロパに噛みついて直接死に追いやった虎を狙って、心中爆発することに決めた。

時間帯もハロパが死んだ時刻に合わせることにした。



夕方になり、俺は一人で虎の住処である岩場に向かった。

「(昨日ここに来た時はハロパと一緒だったんだよな。アイツ、その時イレビーが襲われてイライラしてて俺への対応も結構ツンケンしてたんだよな)」

そんなことを思い出して涙が出る。

もうすぐ虎の住処に着く…自分のやるべき事をやるだけだ。


「うぇーん」


近くで泣き声が聞こえた気がした。

最初は俺が完全におかしくなって幻聴が聞こえはじめたのか、もしくは風の音かと思っていた。

虎の住処に着いて…俺は驚愕してすぐに岩陰に隠れた。



イレビーが一人座り込んで泣いていた。

手には俺が以前に渡した木製の包丁が2本握られている。

その周囲には、14匹の木の虎が置物のように横たわっていた。

「ハロパちゃん、私も…私も、ちゃんと約束守ったからね」

泣きながらも普段と別人のようなイレビーの力強い声で叫んでいるのが聞こえた。



「(なんだよ、あれ。あの木の虎を一人で14匹もどーやって倒したんだ!?俺が渡した木製の包丁でやったのか?てか2匹じゃなくて他に12匹もいたってのかよ!?)」

ジュウジャは以前ハロパが言っていた“優しさセーブがかかっちゃう私より強い人”の話を思い出していた。



「(親友の仇討ちで14匹…俺は恋人の仇討ちで1匹と自爆するつもりだったんて、情けなさすぎるだろう!

イレビーはハロパとの約束を守ったんだ。俺は、俺は…ハロパとの約束を守らないつもりか!?)」

俺は悔しくて、悔しくて、強く握りしめた拳から出血していた。




[15]

イレビーはそれからめっきり姿を見せなくなった。元々は人見知りで対人恐怖症気味だったが、親友であるハロパがいたから無理やりにでも外に連れ出されて他人との交流があったようなものだった。


ハロパが言う通り優しすぎる子だ。

親友の死によって、約束を守るためにリミッターが一時的に外れた結果ではあるだろうが…

それでもあの木の虎を相手に単独で14匹も討伐する戦闘力は俺も畏怖する。




「………お兄ちゃん、大丈夫?」

急に1人の女の子が俺の顔を下から覗き込んで話し掛けてきた。

「え!?あぁいや、俺は大丈夫だ…よッ!??」

話し掛けてきた女の子、まだ5歳くらいだろうが見た目がハロパそっくりで本当に驚いた。

「ねぇ、サンちゃん!知らない人と話したらダメだって!!ボクがパパから怒られちゃうよぉ」

「(もう1人男の子?雰囲気が似ている…この子達、双子か?)」

「うん…でも、アレちゃん、このお兄ちゃん心が泣いてるの。だから可哀想なの。お兄ちゃん、これ食べる?」

女の子は持っていた紙袋を俺に渡してきた。


「あーーー、それ2日前にお姉ちゃんから貰ったヤツ!知らない人にあげちゃうの!?」

「うん、私たち2人じゃ全部食べきれないし…もう食べすぎて飽きちゃったし」


「これは?」

俺に手渡された紙袋を開けてみた。

中には少し焦げた不格好なアップルパイが入っていた。


「これね、この前お友達になった…えっと、、、はろぱお姉ちゃん??が食べていいよってくれたの!」

「ハロパ!?」

「好きな人にあげようと頑張って作ったんだけど、失敗しちゃったから私たちに食べていいよーって」

「2日前のだから冷めててもう美味しくないと思うぞ、でもサンちゃんがあげるって言ったんだから…知らない人、残さないで感謝しながら全部食べるんだぞ」

「お兄ちゃん、これ食べて元気だしてねバイバーイ」

双子は手を繋いで走って行った。



「そうか、あの時ハロパと一緒に採り過ぎたりんごか…

ちくしょう、ちくしょう…

ありがとなハロパ、焦げてても冷めててもこんなに美味しいアップルパイ生まれて初めて食べたよ」

俺はまた自然と涙が溢れ出て止まらなくなった。


…こんな思いは他の誰にもさせない!

これからはもっと精度の高い武器を作って、俺も身体を鍛えて、鍛錬もして、さっきの双子のような子供たちが悲しい思いをしない世界にするんだ!!

俺は冷たくなった世界一温かい手作りアップルパイを食べながら亡き恋人に誓った。



ーーーーー

暗いなぁ、本ッッッ当に真っ暗だ

このままずーっと暗い世界なのかな?

ん…なんか少し眩しい…??

うーん、瞼開けてみようかなぁ…

開けられるのかな?

少しずつ薄目を開けて光を見た

「あれ?」

目の前には満天の星空、綺麗に輝く月

「綺麗、天国にも星空ってあるんだ」

月に右手を伸ばしてみた…

「え!?あ〜…なんだぁ、コレ夢なんだ。はははッ…変なの……だって私の右手、木になってる」


トライアングル -緑の地球(番外編)- END

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