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EPISODE:4

[10]

ジュウジャはポケットから小刀を出した。

「俺が気を引く間に逃げるんだ。一応たくさん道具は持ってきたからそれなりに時間稼ぎは出来るだろう」

「そんな小さな剣じゃ…絶対無理!一緒に戦って、こいつ倒して…それで一緒に帰ろう」

このときもう私は弱気になってて少し涙声だったなぁ。

「この小刀には、痺れ薬を塗り込んである。少しでもかすらせることが出来れば多少動きを止められる…効果があるかは分からんがな」


虎が動いた。

私たちは虎の突進を辛うじて避けることが出来た。

虎は明らかにジュウジャよりも私を狙っていた。


「どこを見てやがる!この骨董品野郎が!!」

ジュウジャは小さな玉を虎の顔に投げつけた。

その玉は大きな音で破裂し、周囲が一瞬明るく照らされた。

その隙に小刀で切りつけようとしたが、虎は怯みもせずに逆にジュウジャに噛み付こうとしてジュウジャが紙一重で避けた。

私は後ろから愛橋で突きを狙ったが、虎の素早い動きに合わせられず踏み込みが浅くてダメージは全然与えられなかった。


「おい、何してる!逃げろって!」

「そんなの嫌に決まってるでしょ!」


虎は私を狙い大きな口を開けて噛み付いてきた。

「だからぁ…お前はハロパじゃなくてこの俺を狙えって!」

ジュウジャは大声で虎の背後から斬りかかった。

虎は今までのジュウジャの動きから畏怖を感じなかったのか、ジュウジャの攻撃を避けようとせずに無視するように私だけをターゲットにしていた。



(戦闘が苦手なジュウジャが私を逃がすために戦ってくれている…それなのに、それなのに、この私が逃げ腰でどーするのよ!?)

「なによ、お前なんて全然怖くないんだから!」

私に噛み付こうとジャンプしてきてガラ空きになった虎の懐に飛び込んだ。


リーチの長い愛橋の柄を掌で滑らせて先端に持ち替えて、カウンターで虎の腹部に穂を深々と突き刺すことに成功した!

同時にジュウジャも小刀を背中に刺した。

「「よし!」」

私たちの声が重なった。




[11]

私たちの攻撃は、普通の虎だったら確実に致命傷を与えられていた。

しかし、この木で出来た虎は出血することもなく弱っているかどうかの判断もつかなかった。

腹部には愛橋の一突きの穴、背中にはジュウジャの小刀が突き刺さったままの状態だが…

虎はまだ動いている。



「コイツ…ヤツらみたいに道管があって弱点があるわけじゃないのか?どーやったら死ぬんだよ」

「わかんないけど…動きは明らかに鈍くなってるよ」


「ハロパちゃん!!!!!」

後ろからイレビーの大声がした。


「…イレビー?」

一瞬、大好きな親友の声が聞こえて振り向いてよそ見をしてしまった。

虎はその隙を見逃さなかった。

虎は左前足を大きく振りかぶって鋭い爪で引き裂こうと飛びかかった。


「バカ!どこ見てるんだよ!?」

ジュウジャが私を庇って正面から虎の爪を受けてしまった。


「イヤァァァ、ジュウジャ君!」

今度はイレビーの悲鳴が周囲に響いた。


「…ははっ、ハロパ!こうやって身を挺してお前を守るのは2度目だな。そして、俺の発明品の凄さを証明するのもな!」

ジュウジャは“着るマモ君”によって護られていた。

「いけ!ハロパ!!!」

私と虎の前にジュウジャがいることで、結果的に私は虎の死角になっていた。



「この……木製虎ー!」

私はジュウジャの肩を踏み台にしてジャンプをして愛橋を左に大きく振りきった。穂の軌道は、虎の首を刈り取るには十分だった。


虎はそれを理解したのか、また後ろにジャンプして穂の軌道から逃れようとした。

「(チッ、また避けられちゃう!)」

しかし、虎はビリッと痺れたような動きをして………

私の愛橋は虎の首を刎ね飛ばした。




[12]

切断された虎の首は左へと吹っ飛んでいき、胴体からは一滴の出血も出なかった。

首を刎ねられ地面に倒れた瞬間から、まるで最初からそこにあった置物かのように動かなくなった。



「やった…」

呆然としている私に、後ろから涙声のイレビーがミサイルのように突っ込んで来た。

「ハロパちゃぁぁぁん」

大号泣の親友に抱きしめられたら、私も一気に緊張の糸が切れて何故か一緒にわんわん泣いちゃったの。


「イレビー、私…ちゃんと約束守ったよ。イレビーを傷付けた虎、ちゃんと倒したよ」

「そんな事いいの。ハロパちゃんが生きてて本当に良かった」

二人で抱き合って大号泣した。


「全く…ハロパはもちろん凄いが、意外と俺も頑張ったんだぞ。今日で死ぬと思ったんだからな。気付いたか?首を刎ねられる直前、虎が痺れて動けなくなっただろ?俺が背中に刺した小刀の痺れ薬が時間差で効いたんだ」

「あ、だから動きが止まったんだ」

「うん、うん…ジュウジャ君も本当にありがとう」

「さて、もう遅いし早く家に帰るか!!」

3人は家に帰るべく帰路に就いた。



「私、これからは愛橋をいつでも使えるように分離しないで持つことにするよ。今日もそれで助かったし」

「たしかに武器なのに組み立て式なのって急に襲われたときに不便だよね…そもそもなんで組み立て式にしたの?」

イレビーが小声で訊いてきた。

「理由?うーん、忘れちゃった」

「お前が薙刀は長くて持ち運びが面倒臭いから分離式にしろって俺にお願いしてきたんだろうが!」

「あー、たしか…そうだっけ??

それとさ、さっきの小刀ある?痺れるやつ!あれ1本私にちょうだい♪あれは使える!」

「一応あと1本ストックがあるが…まぁ自作発明品を褒められるのは悪い気しないな!特別に1本お前にあげよう」

「ありがとー。“着るマモ君”は…性能はいいんだけどねぇ、通気性良く改良してくれたら欲しいかも。だって今ジュウジャちょっと臭いし」

他愛のない話、いつもの日常、またイレビーとジュウジャと笑い合える。

私は幸せ者だ。

こんな時間がいつまでも続けばいい…



「ハロパちゃん!危ない!!」

急にイレビーが大声を出した。

何かと思った瞬間、左首と左肩が燃えるように熱くなった。

「………は?」

木でできた大きな虎が、私の左首に噛みついていた。

「(しまった!1匹だけじゃなかった!!2人がいて安心しきってて完全に気が抜けてた。全然周りを警戒していなかった…)」


ジュウジャとイレビーの顔色が一瞬で変わったのが見えた。

更にもう1匹、別の虎が横からイレビーに体当たりしてきてイレビーは倒れて後頭部を打って気を失ったみたいだ。


「ハ、ハロパ…」

首筋を噛まれて明らかに致命傷を負った私を見て、ジュウジャは完全に意気消沈していた。

虎はあと2匹いたの…こんなのもう絶望的でしょ。

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