5話 打ち砕かれた希望
「三日間、ありがとうございました。」
「もう止めないけれど、命だけは気をつけてね。」
「わかりました。エンゲラ、出して」
この集落にはもう来ることもないだろう。協力は得られなかった。
「エンゲラ、あなたとはそろそろお別れになるかもしれない。」
あなたまで巻き込むわけにはいかない。
エンゲラは走りながらも、不機嫌そうに首を振っていた。彼女は、最後まで私に付き添うというのだろうか。
「エンゲラ、あなただけでも、今のうちに逃げて。」
エンゲラは唐突に足を止めた。先程まで揺れていた体が静寂に包まれる。彼女は体を下げ、ここから絶対に動かないと言っているようだった。
「ごめんね。あなたが満足するまで、私のそばにいて。」
エンゲラが動き出すその時まで、私は彼女に抱きつき続けた。
集落に帰り着く時には、もうすっかり夜だった。こんな夜更けでも、森の奥には戦火が見える。私が、あの炎を止めないと。
荷物を片付け、戦場に近づく。最低限の医療キットを持って。
あちこちに魔法が飛び交い、剣がぶつかりあい、木々は傷だらけ。風景画で見たかつてのエイジリア大森林は、もう影もない。
森の動植物やダークエルフたちと共存していた、先祖たちの愛したさぞ美しかった森は、今や動物たちの鳴き声は聞こえず、木々は魔法で傷つけられている。森を愛するエルフの一族。その恥晒しだ。
不眠では、助けられるはずだった者にも間に合わなくなる。ここは家に帰り、英気を養おう。
日に日に紛争は激化している。少しでも早く終わらせなければ、どちらかの民族が、エルフの一族から名を消すことになる。
2000年前から続く大紛争、私の代で終わらせなければ。




