4話 最後の希望
「セレスタ、久しぶり。あなたも懲りないのね。」
「ええ。私が引き下がるわけにはいきませんので。」
集落長さんは、あの集落からこの集落へ逃げ去ることになった際、私のことも誘ってくださっていた。でも、私は断ることにした。私までも引き下がったら、いよいよもって森が焼け滅んでしまう。
「どう?今からでも遅くないと思うわ。あの集落の者たちは、もう戦争以外目に入っていない。あんなところであなたに苦しんでほしくない。住居は余ってるわ。」
「いえ、大丈夫です。ですが、万が一があった際は逃げ込ませてください。」
「構わないわ。いつでも来てちょうだい。くれぐれも、ラインを誤らないように気をつけなさいよ。」
「忠告、感謝します。胸に留めておきます。」
「それで、本当の要は?」
「説得に、協力していただけないかと。」
「……それは、難しいわ。私も、この集落に逃げ込んだ者たちも、あんなところ二度と戻りたくないもの。」
「そこをなんとか!」
「セレスタ、いいこと?一人でも大勢でも、覆せないことは一定数存在するの。これ以上の干渉はやめなさい。あなたがすり減るだけよ。」
「はい……わかりました。今日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。」
「帰るのは明日なのでしょう?少しでもゆっくりしていきなさい。」
「はい……」
重い足を引きずり、馬小屋へ向かう。
「エンゲラ、紛争を止めるなんて、やっぱり無理なのかな。」
彼女は慰めにくるように、自身の顔を私に擦り付けた。
差し伸べられた頭を、優しく抱きしめる。彼女の鼓動が、手や体を伝ってくる。温かい。
「明日、またよろしくね」
エンゲラは頷くように、首を振っていた。
あの集落とは違う雰囲気を纏った、集落を見て回る。殺気は一切感じず、ゆったりとした時間が流れている。常に生命の危機に晒される、あんな場所とは大違いだ。
決して大きくはないけれど、平和に過ごせているだけでお釣りが返ってくるほどだ。
宿屋に戻る。あれほどの平和を見てしまうと、帰る気が失せてしまう。だが、私さえも撤退してしまえばエイジリア大森林は壊滅の一途を辿るのみだ。どれだけ危険で、解決しようのないことだろうと、時間がある限り立ち向かわないといけない。
決意を胸に抱き、眠りについた。




