12話 揺れる目
今日はまだ彼女が来ない。それもそうだ、彼女には守る命がある。目の前で命が消えかかる中、彼女は敵である私にも目を向けてくれているのだ。むしろ、昨日一昨日来てくれたのはただの気まぐれだったのかもしれないのだ。
彼女がいなかろうが私でどうにかしてみせる。彼女は計画において必須の存在ではない。だから、大丈夫、また私の元から消えようと、何も問題は……
「やあ、セレスタ。暗くなった頃にすまない。」
「ミカリスさん!?」
どうやら、夜の集落を抜けてきたらしい。こんな暗い時間に視界不良の夜に安全地帯である集落から抜け出すなんて、命知らずなエルフ。
「ふふっ、もう来ないかと思っていましたよ」
「そんな薄情なことをするやつだと思われていたのか…」
「冗談ですよ。」
「突然押しかけたというのに悪いが、あまり長くはいられないんだ。顔だけ見にきた、ということにしてもらえないかな?」
「ええ、承知の上ですよ。むしろ、こんな危険な時間にわざわざ会いに来て下さってありがとうございます。」
「それでは。夜襲には気をつけて、おやすみなさい。」
「そちらこそお気をつけて、おやすみなさい。」
危険を冒してまで会いにきて、そんなに私の計画、気に入ったのかな。森で襲われていないといいな。いや、祈るだけじゃダメだ。私がこの紛争を止めるのだから。でも、彼女なら勝てていそうな気がするな。
なんだか王子様みたいな彼女。いや、プリンセス気分になってはいけない。彼女はあくまで敵なのだ、まだ完全に信用しきれていないのだから油断はいけないんだ。
でも、エンゲラが彼女を警戒することは無くなった。そもそも、初めて出会った時以外、エンゲラは彼女に敵意を向けることはしていなかった。エンゲラのどこかでは、もう彼女を信用しているのかもしれない。いや、ダメだ、エンゲラは確かに見抜く目があるけれど、エンゲラすらも見抜けない裏があるかもしれない。警戒するに越したことはないだろう。
右往左往する思考をまとめながら、私は眠りについた。




