10話 歩を進める計画
「どうぞ」
「失礼する。」
ただの洞窟に招いて悪いけれど、集落に招くわけにもいかないからね。
「セレスタ、君の家はここなのか?」
「いえ、家は集落にあります。この洞窟はキャンプ地です。」
「なぜ家にいないのだ?」
集落から逃げてきた、とは言えないな。
「私は森を愛しています。森を肌で感じたいのです。」
「紛争中だぞ。危険がすぐ隣だというのに、正気か?」
「ここは中心部から外れており、この洞窟を訪れるものは稀ですから。洞窟周辺は、戦うにも足場が悪いですし。」
「そうなのか、それは面白いことを聞いた。……話が逸れてしまったな、本題に戻ろう。私がまた、ここを訪れた理由。聞いてくれないか?」
「ええ、いいですよ。」
「なんだか、君とは気が合う気がしたんだ。君なら、この紛争を止められると思ったんだ。」
「それは、どうも。まあ、この有様ですが。」
「すまない、少し嫌な話をしてしまっただろうか。気を悪くさせてしまったのなら謝ろう。」
「いえ、こちらこそ。少し意地悪な言い方をしてしまいました。紛争を止めたい気持ちがあるのは本当です。しかし、私では力不足でした。」
「それは……辛いことを聞いてしまった。ごめん。」
「いえいえ。ミカリスさんは何も悪くないのですから、どうか謝らないでください。」
「お前…ああいや、セレスタ。君で力不足ならば、私も計画に加わろう。先日は醜態を晒してしまったが、これでも兵士だ。他の兵からの信頼もある。」
そう言われることを期待していた。が、よくよく考えたところ、ダークエルフを引き入れたことにより効果が生まれるとは思えない。フォレストエルフとダークエルフが手を組んでいると知られたら、まずいことになってしまう。紛争の悪化という最悪の事態を招く可能性があるのだ。
「それはとてもありがたいのですが、あまり現実的ではありません。紛争がより悪化する予感がします。」
「予感なんだろう?ものは試しだ。協力関係を築いてみないてみないか?」
それは、そうだけど。ただ、どうしても引っかかる。
「……先に、信頼関係を築くべきだろうと思います。共通の目標があるとは言えど、以前敵同士。信頼関係すらない状態で協力関係を築くのは少々不安が残ります。」
「確かにそうだな。まずはお友達から、ということか?」
「そういうことになりますね。」
「では、セレスタ。よろしく頼む。」
「こちらこそ、ミカリスさん。」
こうして、ダークエルフの中に知り合いを作ることに成功した。正直に言うと、効果はイマイチ期待できない。頭の硬いフォレストエルフとは違い、好戦的でターゲットとみなしたものはすぐに攻撃する。こちらもこちらで説得が難しいのだ。ただ、好戦的という点は、ミカリスさんで中和できる可能性がある。だが、彼女の言い方次第では火に油を注ぐ事態に発展してしまう。彼女との交友関係は、慎重な足取りを心がけるべきだ。




