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The Chaos Effect  作者: Michael Lange
第一反復 2001年〜2010年
3/23

混沌の意味は 仮説3

何かを成功させるためにはそのプロセスの中で予測できない障害を予測し、それによる干渉によって結果が変わることをなるべく防がなければならない。例えば「異世界から魔術師が転移される。」とか。その点で言えばالقاعده(実行した組織)とاسام بن لا(実行犯)دنは間違いを犯した。彼女…Tesifaを無効化できなかった。そのために犠牲となると思われた人々の約半数が生き残った。ただ、テロを行ったという事実は変わらないため、اسامه بن لا(実行犯)دنは2011年5月2日にSeal Team 6によって殺害されるだろう。《U.S(アメリカ合衆国)》が同じような間違いを犯していなければ…。彼女の話をしよう。Tesifaだ。話を変えよう。


Tesifaはゆっくりと目を開けた。


天井がとても白い。


腕にチューブが刺さっており、それが袋につながっている。これの名前をTesifaは知っている。《点滴》。


確か医療器具じゃなかったか。覚えていない。


私が寝ているベッドの横に20代くらいの女性が座っている。その女性はうとうとしており、寝るのを必死で我慢しているように見える。Tesifaが目を開けたのを見ると驚いて丸椅子から転んでしまった。


「あっごめん。驚いちゃって。だって急に起きたんだもの。」


その女性が言い訳をする。


私は無視した、というよりも無視しかできなかった。喋ろうとする元気がなかった。とても疲れている。


「《看護師》さーん。起きましたよぉ〜。」


《看護師》と呼ばれた女性が部屋に入ってくる。


「起きたときの調子はいかがですか?」


Tesifaは警戒している


「・・・。」


《看護師》は少し困ったような顔をすると言った。


「う~ん。少し手品をしますね。」


何か始めた。


胸ポケットから一本のペンを取り出す。


「ここに一本のペンがあります。そしてこのペンを…。」


ペンをペンを持っていない方の手を隠した。その後、ペンを持っていない方の手を引くと、


「なーんと不思議、ペンがなくなったではありませんか。」


Tesifaは笑った。その手品がインチキすぎたからだ。なぜか20代くらいの女性は目を丸くして拍手をしている。


拍手が鳴り止んでから


「これから少し質問をしますね。」


と《看護師》が言った。


その質問とは主に記憶のことだった。例えば「ここがどこか分かりますか。」とか「どこ出身ですか。」とか全て分かりませんで通した。


質問が終わると《看護師》が言った。


「今の回答を踏まえてあとで結果を伝えますね。安静にしていてください。」


ドアが閉まった。


「私は…」


20代くらいの女性が唐突に話を始めた。


「私はTaylor Taylor Glenwoodよ。よろしくね。」


私は…なんとなく気が向いたから…答えた。


「よろしくお願いします。」


そこからははっきり言ってTaylorがウザかったことしか覚えていない。


「あっ、お花に水あげないとね。あげとくね。」


何だ?


「じゃじゃーん。今日はJennifer Lopezの曲持ってきました〜。ほら…名前わかんないけど…拍手拍手!」


何なんだ?


「もう。ちゃんと食べないと早く退院できないよ。むん。」


何なんなんだ?


この女性…Taylorだったか…は毎日のように病室に来て何かしら喋りかけてくる。なぜこんなにウザいんだろう。


ベッドの横にある絵が動く箱…TVと呼ばれたもの…が崩壊していく建物を映し出している。私がかけた魔法が時間経過で切れたらしい。


「このスープあっつ。あちちちち。さっき自販機で買ったんだけどね。すごく熱くて。」


「あなたは…誰なんですか。」


Taylorがコーンスープの缶を落とす。白い床に黄色い液体が広がっていく。


「あっごめんね。あなたが急に喋るものだから。びっくりしちゃった。拭かなきゃな。」


そういってどこからともなく布巾を取り出し床を拭いていく。


こぼしたのが私の個室でよかった。Tesifaはそう思ったとき、「こぼしたのが個室でよかった。」Taylorが言った。


「質問の答えだけどね。まだ言えないや。私は。次の診察の時のサプライズってことで。」


はぐらかされた。まあ追及する気もないしこの話題はやめることにした。


そして診察の時が来た。


「先生、お願いします。ほらあなたも。」


「お願いします。」


Taylorに怒られた。


《医者》と呼ばれた人は物腰柔らかで優しそうな壮年の男性だった。


彼は言った。「こちらこそよろしくお願いします。」


私は椅子に座った。Taylorも隣に座る。


「まず、単刀直入に言ってしまうとあなたは記憶喪失です。」


たぶん私に向けられたであろう言葉。まあショックではなかった。


Taylorはとてもびっくりしている。


「あなたの記憶の中で、陳述記憶の中でもエピソード記憶が抜け落ちています。また、意味記憶の中でも地名や人名などと言った基本事項が抜け落ちています。もしかしたら…最初から知らなかったのかもしれません。ただ、非陳述記憶などはほとんど抜け落ちていないと思います。まあ、難しく言えば解離性健忘という症状です。」


《医者》は悲しげな口調で告白する。


「理解できましたか?」


彼女は理解できた。上っ面だけではなく完全にだ。《英語》についてはよく分からないし、発音やスペルも彼女がよく知っているイェジマレ・アヒグチ南部語と違う点が多い。しかし、その時だけははっきりと意味が分かった。ただ問題は…


「それで、もう一つ…Glenwoodさんに頼まれていた彼女のポーチに書かれていた文字列の意味が分かりました。」


そうだ。ポーチ!ポーチはどこに?大切な《友人》が編んでくれたあのポーチ。《友人》?《友人》って誰だろう?


「これはአማራ(アムハラ)語でした。《ኢትዮጵያ(エチオピア)》などでよく使われる言語です。意味は、『《希望》へのプレゼント』」


「どういうこと?」


「もし《希望》が人名だとしたら?」


Taylorははっと息を呑んだ。


テロから1日が経ち、彼女はだんだんと自分がどのような状況に置かれているかがわかってきた…つもりだった。


彼はゆっくり、一呼吸おいてから話を続けた。


「Tesifaという単語をご存知ないですか?」


「…それは…」


私は怖かったんだ。それは決して一人ぼっちで夜の闇の中、都会の喧騒に一歩を踏み出すことでも一人で公園にテントを張ることではない。


自分が“また”記憶に囚われてしまうことが。この都市に一人立っていた際、私は自由だった。何も考えないことが自分にとって救いだった。


ここで認めてしまえば自由を、“自分が勝ち取った”自由を失ってしまうことになる。それは…


「とても嫌だ。」


「え?」


Taylorが、彼女から突発的に意味のわからない発言が飛び出したことに驚いたような顔を見せる。


「どういうこと?」


《医者》が困惑した表情で質問をする。


「君は…《非道》だ。」


誰かが言った。


知らない言葉。


思い出した?


何を?


君がTesifaだってことをだよ。


わからない。


なら…これから知っていけばいい。



それでも…君は私だ。



私はTesifa。君の名前は?


「Tesifa。」


また彼女から突発的に意味のわからない発言が飛び出したことにTaylorが益々困惑の表情を浮かべる。


でも…認めるんだ。例え今の自分がTesifaであるかどうか分からなくても。そう。そうしたほうが生存に有利な気がするから…。


「It is…my name.」


沈黙が2分ほど続く。


「そうと決まれば家を整えなくちゃね。 お医者さん、テシファはあと何日で退院できますか?」


沈黙を遮るようにTaylorが言った。


あれ?


「一週間ほどですかね。」


「退院後は何食べさせたらいいとかありますか?」


「特に何もありませんよ。ご自宅はどちらですか?」


あれれ?どういうことだ?


「Georgia州のStockbridgeという町なのですがご存知ですか?」


「Georgia州ですか…車で14時間ほどですかね……大変ですね。」


「はい。そうなんですよ~。3日に1回家に帰る感じで、帰れない週もあります。」


「では4日ほどでいいので様子を見ていてあげてくださいね。」


あれれれ?


「どういうことですか?」


思わず聞いてしまった。


「あれ?言ってなかったっけ?あなたは家で預かることになったのよ。養子として。」


「え?」


「手続き大変だったんだからね。」


どういう…ことだ?


「確かあなたの職場はSilverstein Prop(あの会社)ertiesでしたっけ?」


「ええ…あの事件があったから本社は大変らしいです〜。」


「本当に…怖いですね。まだ見つかっていない人もいるわけでしょう。本当に…ひどい。この病院もてんてこまいですよ。」


「話を変えましょう、ね?」


「そうですね。確か、Glenwoodさんにはお子さんがいらっしゃいましたよね。」


「はい。男の子で、今は6歳で、kindergartenが終わって最近小学生になったんですよ。」


「そうですか。あっ。」


何か平べったい箱のようなものが甲高い音を出している。


「すみません。呼ばれてしまいました。退院予定日は明日の診察で決めましょう。では、まずはお大事に。」


「ありがとうございました。 ほら、Tesifaも。」


「ありがとう…ございました。」


少し…変な気分だ。



一週間後…


「はい。オーケーです。Emory at Eagles Landingに紹介状を書いたので、一週間に一度リハビリのために通ってくださいね。あと車での移動の際に何かありましたらすぐに電話をしてください。できる限りの対応をいたします。ではこれで診察は以上になります。お大事になさってください。」


「ありがとうございました。」


「ありがとうございました。」


退院になった。以上。


ここのことがなんとなくわかってきたところだったのに。


退院を宣告されたのは2日前のことだった。


その日からTaylorは私に英語や文法、数学など基礎教養と呼ばれるものや礼儀作法などを教えていった。


私は覚えるのが早いと言われ、Taylorは少し不気味がっていた。


きょうの朝、


「どうやったらたった2日で高校範囲まで習得できるの……。」と言われ、私はその言葉を褒め言葉として受け取っておいた。


そして、退院の日が来た。


お見送りは誰もおらず、《看護師》からは「お大事に。」とだけ言われた。


…Taylorは「改めてこれからよろしくね。Tesifa.」


こういうときは返す言葉は一つだけだということを私は知っている。


「こちらこそ…よろしくお願いします。」



第一反復は2001年を舞台にしているため、調査が2007年頃までしか遡ることができず、もしかしたら当時なかったはずの店や場所が出てくるかもしれません。もしあったら教えていただければ幸いです。

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