第三反復 失った記憶 仮説4
TesifaはGMのSUBURBANに乗り込んだ。酔わないといいが。
Judithが口を開く。
「さて。メンバーを紹介しようか。」
その車に乗っていたのは自分も含めて6名。
「さて。私は前に自己紹介したな。Judithだ。読み方はДжудитだ。間違えるなよ。」
その隣、笑って手を挙げている女の人がいる。黒い肌に黄色い縁の眼鏡をしている。着ているのは藍色のスーツだ。
「やっほ☆。私はEmma.Emma Stillmore。よろしくね☆」
「彼女は世界中の国に247の顔と戸籍を持っている。変装のエキスパートだ。本当の顔は今はもう数人しか知らない。」
「今も違うの?」
「そうだよ☆この顔はDaphne Dasherっていう顔だよ☆」
「へえ。」
Judithはその後ろ、腕を組んで眠っている男の人の説明を始めた。
「そこの無愛想で可愛げのない男はDuaneだ。フルネームはDuane Mineola。」
Duaneは起きない。
「よろしく。」
Duaneは無視だ。
「・・・。」
「私の紹介はまだなのですか?Too late, dammit.」
それは東洋系の顔をした人物。
「あの、クソガキは《アメリカ合衆国のための選択肢》だ。」
「今クソガキと言いましたか?Brat? Don't mess with me.」
「とってもムカつくが気にするな。」
「はい。」
「ムカつく!?どういうことですか!?」
「それで、その隣にいる大男は…気にしなくて結構だ。」
「おい!それはどういうことだ?」
見た目からは考えられないほど少し高い声でその肌が黒い大男は叫んだ。
「あーー。もういいや。こいつはElijah Funston。真面目過ぎてからかいがいがあるやつだ。」
「言ったな?」
「冗談だ。真に受けるな。」
「はい。」
「さて。紹介は終了だ。次は武器の贈呈だな…どれがいい?Tesifa Glenwood…お前に強大な武器があるのは知っているが、《覚醒》から1年も経っていないからな。いつ《暴走》するかわからない。だから……なるべく《አስማት》は使うな。この中から一つ拳銃を選べ。」
そう言ってJudithは一つの黒いトランクをTesifaの前で開けた。
その中身はAutomag 44、Kimber Aegis、Glock17、FP-45、Wellrod、S&W、Vz61 Scorpion、そしてDesert Eagle
「銃は好きか?」
Judithが聞いた。
「私は…」
「嫌いだ。」
8月20日午前6時04分(Atlanta時間)
「こんにちは。《炎の勇者》。」
「君は…誰だい?」
「私は…ただの人間ですよ。ただの。」
「なんだってここに?」
「実はかくかくしかじかで手伝ってもらいたくてですね。」
「断った場合は?」
「残念ですが、命をいただくことになります。」
「それはとってもひどいじゃないか。」
「かもしれないですね。私は《Guernica》と呼んでください。」
「《España》人か。」
8月20日午前12時04分(Hamburg時間)
「さて。私はお前とは行動しない。別行動だ。まあ、ダブルブッキングだ。気にするな。」
「え?」
「私と《アメリカ合衆国のための選択肢》はSonthofenに行くことになった。まあ、あまり関係ないな。」
「そうだよ。私たちがいるからね。安心して☆」
Emmaが言った。
「さて、着いたぞ。じゃあ、お別れだ。」
Hartsfield-Jackson Atlanta Airport、1年前《雷狼》が初めて《U.S.》に上陸した場所であり、そして…
「あれ?マジで来ちゃいましたか???!!!」
新たな戦場だ。
8月20日午前6時14分(Atlanta時間)
《草原の聖女》は3時間前、《U.S.》に初上陸した。
目的は《Team31》を撃破すること。
彼女が目指したのはWienに行くために使うであろうDelta Air Linesが入るコンコースF。
そして、彼女はTACOやDuty Freeが立ち並ぶコンコースFにやってきた。
彼女が片手にドリンクを持ちながらエントランスを見はっていると、ついにその時が来た。
彼女は嫌そうな顔と嬉しそうな顔の中間な顔をしながらこう言った。
「あれ?マジで来ちゃいましたか???!!!」
8月20日午前6時14分(Atlanta時間)
目の前の人物は不思議な格好をしていた。
まあ、私の価値観で言えば“ふつう”なのだが、この《世界》の価値観で言えば“ありえない”格好だ。
《Christianity》国家《U.S.》国民から見たらあのシスター服はシスター服とは言わない。
オープンフロント・ドレスにアシンメトリー・ラップスカートとかおかしい。
しかも歩くたびに緑色の蔦のような形のガーターベルトが見える。ハイヒールが甲高い音を放ち、頭にはコイフを申し訳程度に着けている。しかし、銀髪の髪はもう隠せていない。
なんじゃこいつ?
「こんにちは。みんな大好き聖女さまですよ〜。」
「みんな。迎撃態勢だ。」
Judithが叫んだ。
複数のトランクが落ちる音が響いた。
8月20日午前6時15分(Atlanta時間)
天から複数の光が降り注ぐ。
それが致死性の高いものだとわかっているから何とかして避ける。
「《አስማት》を使うことは禁止だ。」
Judithが戦闘の前にそう私に告げた。
よって私は《感覚》でなんとか避ける。
Judithたちはもう…人の所業とは思えない。
「あら?なかなか当たらないものね〜。」
聖女を名乗った女性は両手を前に伸ばす(実際には両手を少しづつ動かしている。なんとなく指も動いている)。
先ほどまで避難誘導を行っていたEmmaはVz61 Scorpionを両手持ちし、聖女と名乗った女性(この《አስማት》から判断するとこいつは《草原の聖女》だな)に弾丸を撃ち込む。
《草原の聖女》は自身の目の前に《光》を落としてそれを蒸発させる。
「チッ。」
Emmaは軽く舌打ちをすると、横に転がる。
それまでEmmaがいたところに《光》が降り注ぐ。
コンコースFの床が円状に焦げて剥げる。
同じく避難誘導を行っていたDuaneは走りながら《草原の聖女》に弾丸を撃ち込もうとするがすべて《光》に蒸発されてしまう。
Duaneの進行方向に《光》が降り注ぐ。
Duaneは急転換して避ける。
Duaneのコートの裾が焼けた。
最初から戦闘をしていた戦闘狂の《アメリカ合衆国のための選択肢》はどこからか2mはある刀を2本取り出して《草原の聖女》に斬りかかるが《光》に邪魔をされて上手く前に進めないようだ。
Elijahは…どこ行った?
そして私はなすすべもなくジャンプしてどうにか回避する。自分の服から焦げ臭い匂いがするがもう気にしない。そういえば銃ってどうしたっけ?トランクに入れたよな…あそこにあるトランクから煙が出ているように見えるのは…幻覚だよな。幻覚。げんか…私の着替えがァァァァ。
そのときJudithが叫んだ。
「10の指だ!指で《光》をコントロールしている。」
私はそれを聞いた直後、ほかのものに気を取られていた。そこにいたのはいかにも逃げ遅れたであろう3歳くらいの男の子。うずくまって泣いていた。だから気づかなかったんだろうな……頭上から《光》が迫っていたことを…。
Judithが《草原の聖女》から少し距離を取りながら叫んだ。
「Tesifa!《አስማት》の使用を解禁する!」
その瞬間、私は状況を察知し、行動を起こした。
《光》が落ちてくるまで約3秒。
その3秒の間に私は右手の人差し指と中指を立て、上に向けた。《光》が霧散する。
男の子の手を取り、手を引いて走りながら右手の人差し指と中指をそのまま《草原の聖女》にも向け、振り下ろした。
《草原の聖女》の左腕が落ちた。
《草原の聖女》は甲高く絶叫する。
《ቄስ》系の人々は《ፈውስ》系《አስማት》がよく使える人が多い。
そのため、彼女が左腕を回復させるのに30秒もかからないだろう。
しかし、それに集中してしまえば《光》は使えない。よって、左腕は応急処置にとどめて《光》を使うだろう。ここで問題が一つ。一本腕がなくなったことで5本指で《光》を操るしかなくなり、《光》の包囲網が手薄になる。
だから、ここが勝敗の分かれ目だ。
《草原の聖女》は言った。
「የተናገርከውን ሁሉ አስታውሳለሁ። እባክዎን እኔን ለመርዳት እነዚህን ቃላት መጠቀም ይችላሉ? ግራ እጄን አስተካክል?」
予想外だ。こいつ《ራስ-ፈውስ》を使いやがった。
腕を治すのに40秒はかかるが《光》を落とすことに集中でき、なおかつ腕が勝手に再生していく。
本当に予想外だ。
私は男の子を安全な場所に連れていくと急いで戻った。
そのときJudithが叫んだ。
「Elijah!」
そのとき全ての電気が消えた。
1秒ほど遅れてElijahがブレーカーを落としたのだと気づいた。
その1秒でJudithが前に出ていったのを気づかなかった。
「ねえ?なんなの?この小芝居は?哀れな人たちね♡……」
そのとき《草原の聖女》が後ろを振り向いて…そのときそこにいた人と目と目があった。
《草原の聖女》の緑色の目が見開かれる。
《草原の聖女》の細い首に革ベルトが食い込んだ。
《草原の聖女》は声にならない悲鳴をあげる。
《光》の包囲網が途切れた。
《草原の聖女》は舌を出して酸素を求めるが、舌を噛んでしまう。
そして《草原の聖女》は白目を剥いて倒れた。
革ベルトから手を離すとJudithは言った。
「さて、まずは1勝だ。」
8月20日午前6時20分(Atlanta時間)
第三反復は2011年を舞台にしているため、もしかしたら当時なかったはずの店や場所が出てくるかもしれません。




