定義1 《雷狼》Idili
オレはオマエを殺した。
殺してしまったんだ。
「Idili。それがあなたの名前ね?」
殺したんだ。
「あなたは私の騎士様なんだから。ちゃんとしなさいよ。かっこ悪いわよ。」
殺してしまった。
「大丈夫なの?《雷狼》?」
いつもそのとぼけたような顔を思い出す。
もう…失ってしまったのに。
その日々を思い出す。
「おい。《雷狼》!働け!《祭事》が始まるぞ。」
やめてくれ。逃げたい。もう逃げたいんだ。
「まあまあ。落ち着いて。《雷狼》クンは疲れているんじゃん?」
思い出させるな。押し寄せる。やめろ。
《狼》!!!!!!
「オイオイオイ。オレを困らせんなよ。逃げられる心配はして来てねえんだからよォ。」
いや。逃げてるのはオレの方じゃないのかァ?
「諦めんなよ。逃げるって決めたんなら逃げ続けろ。」
諦めるな。たぶんオマエはオレよりも強いはずだ。
「オレの前に立っている自覚を持てよ。それは…オマエは…戦うべきなんだ。オマエはただ殺されるって言われて、抵抗もせずただ逃げ惑っているだけなのか?違うだろ。オマエは人間だろ。抵抗しろ。武器を取れ。武器なんてどこにでも転がってる。せめて…生命力を見せろ。」
そうだ。逃げ続けるな。オレみたいになるな。まだ若いんだから高い壁に立ち向かっていけ。
「俺は、いつかお前と対峙する。だから、待ってろヤバいヤツ。」
よかった。やっちまえ。さあ、抵抗しろ。敵を倒せ。未来を切り開け。そう…だから…
「あぁ。待ってる。」
「ガンバれよ。」
《狼》は疑えと言っている。
疑え、今すぐ殺せ!と言っている。
だが…逃げろ。オレが見失うまで。逃げろ。
逃げろ!!!
人狼になる。ただそれだけ。
それだけのことで殺してしまった。殺してしまったんだ。
彼女は死んでしまったんだ。
あのとぼけたような顔はもう見れない。
終わったのにまだ彼女がいると錯覚する。
終わったんだ。ただそれだけ。




