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新領都と三つの備え

いつも読んでいただき、本当にありがとうございます。 温かい応援のおかげで、頑張れています。どうぞお楽しみください!

鑑定の儀の熱狂から数日。


ルアン村――いや、アケト・ミナモトが新たな名を冠すると宣言したこの地は、降り積もった雪に覆われ、静かな年の瀬の雰囲気を残しつつも、どこか新しい時代の到来を予感させる引き締まった空気に包まれていた。


日ノ本神社の参道には、まだ新年の露店の名残の品々が見受けられ、子供たちが雪玉を投げ合って興じる元気な声が時折、冬の澄んだ空気を震わせる。


厳しい寒さの中にも、人々の顔には先の鑑定結果への興奮と、未来への確かな希望が宿っていた。


そんな中、日ノ本神社の社務所には、アケト・ミナモト(シュート)、アオイ・ホウジョウ、ダンテ、ルカオン、シャナイア、ジョバンニ、そして鑑定で目覚ましい才能を示したブレディ、ジャン、ライカ、リリー、キャシーといった主要メンバーが集められていた。


囲炉裏の火がぱちぱちと小気味よい音を立て、部屋を暖かく照らしている。


窓の外には、雪化粧を施した木々と、その下で後述する、「朱備あかぞなえ」の候補となる若者たちが、早くも基礎訓練に励む姿が見えた。


「さて、皆、新年の喧騒も少し落ち着いたことだし、今後の我々の方針について、しっかりと話し合っておきたい」


アケトが、いつもの冷静な口調ながらも、その瞳には10歳にして豪族の長としての強い意志を宿して切り出した。


一同の視線が、若き指導者に注がれる。


その視線には、信頼と期待、そしてほんの少しの畏敬の念が混じっていた。


「まず初めに、一つ大きな提案がある」


アケトは、一呼吸置いて言葉を続ける。


「我らが本拠地、このルアン村の名だが…この二年足らずで人口も飛躍的に増え、現在では五百人を超えた。

ドリマ村も復興し、新たにイルーガ村も我らの仲間となることを表明してくれた。これは、我々の未来への大きな飛躍の始まりだ。

そこで、この地を新たな拠点として、神のお告げにある、いにしえの東方の武家の都の名を借り、『領都カマクラ』と改めたいと思う。皆、どうだろうか?」


「カマクラ…か」


ダンテは、深く息を吸い込んだ。


彼の脳裏には、ほんの数年前の、魔物の脅威に怯え、貧困に喘いでいた寂れたルアン村の姿と、今の活気に満ち、目覚ましい発展を遂げた村の姿が重なって見えた。


「良い名だ。アケト、お前がこの村に生まれ、いや、舞い降りてから、この地は本当に生まれ変わった。

…『領都カマクラ』、誰一人として文句などあろうはずがない!」


「カマクラ!なんだか強そうだ!」


「新しい都の始まりだな!俺たちのカマクラだ!」


若者たちからも、興奮した賛同の声が次々と上がる。




「次に、イルーガ村についてだ」


アケトは卓上の地図を指し示す。


「現在、カマクラからイルーガ村までは徒歩で五日以上、馬車を使っても二日以上かかる。

フレッド男爵領の奥深くにあり、いざという時の支援も難しい。

そこで、街道の城塞からイルーガ村へ直通する新たな道、急峻な山を切り開くことになるが、『棒道ぼうみち』を建設する。

これにより、物資輸送と派兵の効率を格段に上げ、イルーガ村を我々の確固たる勢力圏に組み込む」


ルカオンが、大地を揺るがすような豪快な笑い声を上げた。


「棒道か!面白え!まるで天を突くような道だな!

アケトの『大地創造』と俺の『大地創成』、それに村の土魔法使いが数人加われば、夏までと言わず、春の終わりには形にしてやらあ!任せとけ!」


「ありがとう、兄さん。頼りにしている」


アケトは兄に微笑みかけ、そしてアオイに向き直った。


「そして、イルーガ村の民が一日も早く自立できるよう、農業部隊を派遣する。

アオイ、そしてステフィ、君たちを中心に、まずは芋やかぼちゃといった、痩せた土地でも比較的早く収穫でき、保存も利く作物の栽培を指導してほしい」


「はい、アケトさん。イルーガ村の方々にも、一日も早く豊かな食卓と、安心できる暮らしを届けたいです。

ステフィさんと一緒に、必ずや成功させてみせますわ」


アオイが、慈愛に満ちた優しい声で応える。


「はい、アオイ様!私も、私の『牧場主』としての知識や『促成栽培』のスキルを活かして、土壌改良からお手伝いできるかもしれません!」


「最後に、来るべき戦いに備え、より効率的かつ強力な戦闘集団を組織したい。

名を『そなえ』とする。目的と特性に応じ、三つの部隊を創設する」


アケトは、用意していた羊皮紙を卓上に広げた。そこには、彼が構想する新しい軍組織の編成案が、緻密な文字で記されている。


「一つ、我がミナモト豪族の主力攻撃部隊、『朱備あかぞなえ』。総勢五十名!我が指揮の下、敵陣を切り裂く刃となる!

ブレディ、ジャン、そしてライカ、君たちにはその中核となってもらう。

その他、新たに中核を担う者たちを紹介する!」


アケトの視線が、前列に並ぶ若者たちへと注がれる。


「バルトス!」


「はっ!」


呼ばれたのは、岩のような体躯を持つ精悍な青年だった。


その手には、既に愛用の手槍が握られている。


「エルミ!」


「はい!」背筋をすっと伸ばし、涼やかな瞳で応えたのは、長剣を腰に差した凛とした雰囲気の女性。


「ライラ!」


「ここに!」


弓を背負い、快活な笑顔を見せたのは、ジャンの幼馴染でもある勝気な少女だった。


アケトは頷き、言葉を続ける。


「バルトスの突破力、エルミの剣技、ライラの狙撃の腕は、既に目を見張るものがある。

朱備えの先鋒として、その力を存分に発揮してもらいたい!」


「「「応!!」」」


三人は力強く応え、ブレディ、ジャン、ライカも彼らを頼もしげに見つめた。


朱備えの他のメンバーも、先の鑑定で高い戦闘能力を示した者たちで固められており、その練兵場は早くも熱気に満ちていた。


「次に、攻撃補佐、回復、そして後方支援の要、『蒼備あおぞなえ』!

総勢三十名!アオイをリーダーとし、シャナイア、リリーがその両翼を担う!新たに加わるのは…」


アケトの視線が、少し控えめに立つ二人の青年に移る。


「ケイレブ!」


「は、はい!」少し気弱そうだが、澄んだ瞳を持つ少年が緊張した面持ちで返事をした。


「アルド!」


「お任せください」


落ち着いた物腰で、しかし確かな意志を感じさせる青年が応えた。


「ケイレブの持つ清浄な魔力は癒しに、アルドの冷静な判断力と補助魔法は戦場の生命線となるだろう。

蒼備えの守りを、そして攻めを支えてくれ!」


アオイは二人に優しく微笑みかけ、「一緒に頑張りましょう」と声をかける。


シャナイアとリリーも、新たな仲間の加入を心強く感じていた。


「最後に、工兵作業、偵察、そしてあらゆる特殊任務を担う『黒備くろぞなえ』!総勢二十名!

ルカオン兄さんをリーダーとし、キャシーがその影として動く!そして…」


「ゼファー!」


「ここに!」


風のように素早い動きで前に出たのは、鋭い目つきの青年だった。


「ルナ!」


「はい」


物静かだが、全てを見通すような知的な瞳の女性が応えた。


「ゼファーの俊足と隠密行動、ルナの情報収集能力と分析力は、黒備えの任務に不可欠だ。

ルカオン兄さんの下、カマクラの目となり耳となり、時には敵を欺く刃となれ!」


「へへっ、面白え奴らが揃ったじゃねえか!」


ルカオンはにやりと笑い、キャシーも新しい仲間たちに興味深そうな視線を送っていた。


「これらの計画を、まずは夏頃までに達成したい」


アケトは一同を見渡し、最後に表情を引き締めた。


「だが、忘れてはならない。コライス子爵がいつ本格的に攻めてくるかは、依然として不明だ。

我々がこれらの計画を進めている間にも、奴らが奇襲を仕掛けてくる可能性は十分にある。

ドリマ村の防備は固めたが、カマクラも、そしてイルーガへ向かう部隊も、常に警戒を怠ってはならない。

各『備え』は連携を密にし、日々の訓練もより一層厳しく行うように。

我々の未来は、我々の手で掴み取るのだ!」


「「「応!!」」」


社務所に集まった若きリーダーたちの力強い返事が、冬の静けさの中に、そして新たな時代の始まりを告げるかのように、力強く響き渡った。


こうして組織された三つの「備え」は、それぞれの役割に応じた厳しい訓練を開始した。


朱備えはアケト直々の指導のもと、実戦さながらの連携訓練に汗を流し、蒼備えはアオイを中心に負傷者救護や結界展開の練度を高め、黒備えはルカオンの指揮で斥候術や罠設置、さらには土木作業の効率化にも取り組んだ。


カマクラの冬は、彼らの熱気で少しだけ暖かくなったように感じられた。


ご一読いただきありがとうございます!

思った以上に読んでくださる方がいて、とても嬉しいです。

もっと楽しんでもらえるように頑張りたいと思います。

今後の励みになりますのでもし「面白かった」「続きが読みたい」と思っていただけたら、 ページ下の【☆☆☆☆☆】からポイントを入れて応援してもらえると嬉しいです。


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