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シュート6歳の終わり

いつも読んでいただき、本当にありがとうございます。 温かい応援のおかげで、頑張れています。どうぞお楽しみください!

戦後処理が一段落した翌日、父さんの呼びかけで、再び集会所に村の主な者たちが集められた。


ドリマ村のドリクさんたちも同席している。


集会所の空気は、痛切な危機感と、それでも前を向こうとする静かな決意に満ちていた。


「皆、集まってくれて感謝する」


父さんが、疲労の色を隠さずに口を開いた。


「昨日の戦い、我々は勝った。だが、多くのものを失った。


この事態を重く受け止め、今後の村の方針を早急に決めねばならん」


まず議題に上がったのは、今後の作業の優先順位だ。


「食料確保のための開墾は重要だ。だが、今はそれ以上に、村の安全確保が最優先と判断する。


よって、東の畑の拡張は一時中断し、全ての労力を、北側防御施設のさらなる増強に注ぎ込む!」


父さんの力強い宣言に、異論を唱える者はいなかった。


「具体的にはどうする?」


ジョバンニさんが尋ねる。


「まず、既存の空堀の外側に、もう一つ堀を掘る。そして、西の川から水を引き込み、『水堀』とする。


空堀と水堀による二重防御だ。これだけでも、敵の接近は格段に困難になるはずだ」


「さらに、土塁の上だ。今のままでは、敵の攻撃に身を晒しすぎだ。


土塁の上に、身を隠したまま魔法や弓矢を放てる『銃眼じゅうがん』を備えた胸壁を作る。


ダンテ石も使って、可能な限り頑丈にな」


(銃眼…! それがあれば、昨日の戦いでも犠牲者は減らせたかもしれない…!)俺は、父さんの言葉に強く頷いた。


「しかし村長、それだけの工事となると、資材も人手も…」


ドリクさんが懸念を示す。


「分かっている。だからこそ、次の手も打つ」


父さんは頷き、続けた。


「俺とドリク殿で、数日中に領都フレッドへ向かう」


「領都へ?」


「そうだ。目的は三つ。

一つは、昨日の戦いで得た魔石と素材の売却。オークやハイオークのものは、相当な値になるはずだ。


二つ目は、その金で、村の防衛に必要な、より強力な武器を購入してくること。


三つ目は、今回の甚大な被害を男爵様に報告し、税の減免を申請することだ」


「ダンテ石を少し売れば、もっと資金ができるのでは?」


村の誰かが提案したが、父さんは首を横に振った。


「いや、それはまだ早い。ダンテ石のことは、まだ我々だけの秘密にしておくべきだ。下手に外部に知られれば、余計な詮索を招きかねん」


その判断に、皆が同意した。


(父さんの判断は正しい。ダンテ石は、まだ切り札として隠しておくべきだ)


武器の購入、という言葉を聞いて、俺は意を決して手を挙げた。


「父さん、お願いがあります」


「なんだ、シュート?」


「フレッドで武器を買う時に、僕にも、ちゃんとした剣を買ってきてほしいんです」


俺の突然の直訴に、周りの大人たちが少し驚いた顔をする。


「木剣じゃ、もうダメだ。この前の戦いでよく分かった。


僕は、もっと強くなって、この村を、兄さんや姉さんを守りたい。


そのためには、本物の剣が必要なんだ」


俺は、父さんの目を真っ直ぐに見つめて言った。


「それと、兄さんの分もお願いできますか? 兄さんだって、今回の戦いで怪我をしたけど、これからも僕と一緒に戦ってくれるはずです。


兄さんにも、もっと強い武器が必要になると思います」


俺の言葉に、その場にいたルカオン兄さんが(怪我で顔色は悪いが、会議には参加していた)驚いたように俺を見たが、すぐに決意を秘めた目で父さんを見た。


父さんは、しばらく俺と兄さんの顔を交互に見つめ、何かを考えるように黙っていたが、やがて、ふっと息を吐き、頷いた。


「…分かった。シュート、お前の覚悟は伝わった。そしてルカオン、お前のこれまでの働きと、これからの期待も込めて、お前たちの分の剣も、俺が責任を持って選んでこよう。


だが、シュート、前にも言ったが、剣はただの道具ではない。使い方を誤れば、自分も他人も傷つける。そのことを肝に銘じ、鍛錬を怠らないと誓えるか?」


「はい! 誓います!」


俺は力強く答えた。


「俺もです、父さん!」


兄さんも、少し掠れた声ながら、しっかりと応じた。


「よし。ならば、お前たちに見合う剣を選んでくる」


「ありがとう、父さん!」


「ありがとうございます!」


俺と兄さんは頭を下げた。ついに、本物の剣が手に入る…! その思いが、重苦しい空気の中で、わずかな希望の光のように感じられた。


会議は終わり、具体的な準備が始まった。父さんとドリクさんは、厳選されたオークやハイオークの魔石、牙、皮などの素材を、新しく手に入れた馬車に慎重に積み込んでいく。


村人たちは、二人の無事と、交渉の成功を祈りながら、その様子を見守っていた。


数日後、準備を終えた二人は、村人たちに見送られ、南の街道へと馬車を進めた。


俺は、遠ざかっていく馬車を見送りながら、胸に込み上げてくる様々な思いを噛み締めていた。


兄さんと姉さんの早い回復への祈り、村の未来への責任感、そして、自分の手で振るうことになるであろう、本物の剣への期待と、微かな緊張感。


ルアン村は、苦い勝利を乗り越え、新たな決意と共に、再び歩み始めていた。




ハイオークとの死闘から一ヶ月が過ぎた。


季節は本格的な夏へと移り変わり、強い日差しが容赦なく大地に照りつけ、むせ返るような草いきれと、けたたましい虫の声が満ちるようになっていた。


俺たちが拡張した東の畑では、春に植えられ、既に一度収穫を終えたイモ畑の代わりに、秋の収穫(と納税)を見据えて植えられた麦が、夏の太陽を浴びて青々とした穂を伸ばし始めていた。


実りの秋にはまだ遠いが、その力強い緑は村に食料の希望を与えている。



北側の防御施設は、村人総出の努力によってさらに強化され、川から引き込まれた水が外側の堀を満たし、空堀と合わせて二重の防御ラインを形成していた。


土塁の上には銃眼を備えた胸壁も設置され、その威容は以前とは比較にならない。


村の中では、ドリマ村の人々のための新しい家々も次々と完成に近づき、少しずつ日常が、以前とは違う形ながらも、戻りつつあった。


ルカオン兄さんとシャナイア姉さんの怪我も、リリーの献身的な『ウォーターキュア』による治療と、村の薬草師の手当て、そして何より二人の生命力のおかげで、命に別状はなく、快方に向かっていた。


まだ完治とは言えず、激しい動きはできないものの、歩行も可能になり、家の中の手伝いができるまでには回復していた。


二人が元気を取り戻してくれたことは、村全体の大きな喜びであり、救いだった。


そんな暑い夏のある日の午後、南の街道を見張っていた者から、待望の知らせがもたらされた。


「村長たちが帰ってきたぞー!」


その声に、村中が沸き立った。


誰もが作業の手を止め、南の虎口へと駆けつける。俺も、訓練仲間たちと一緒に、期待と少しの不安を胸に、父さんたちの帰りを迎えた。


馬車が、ドリクさんの手綱捌きでゆっくりと虎口を抜けてくる。


父さんも隣で無事な姿を見せている。まずは二人の無事な帰還に、村人たちから安堵の声と労いの言葉がかけられた。


「おお、村長! ドリクさんも! ご無事で何より!」


「長旅、お疲れ様でした!」


馬車の荷台には、布で覆われた荷物が積まれている。


その隙間から、槍の穂先や、新しい斧の刃が鈍く光っているのが見えた。


武器の購入は上手くいったようだ。


そして、その中に、俺と兄さんのためのものだろうか、二振りの剣の柄が見えた気がした。


心臓が、期待に小さく跳ねる。


しかし、俺たちの安堵と期待とは裏腹に、父さんとドリクさんの表情は硬く、その顔には深い疲労と、それだけではない重苦しい何かが暗い影のように浮かんでいた。


村人たちも、すぐにその芳しくない雰囲気を察し、喜びの声は次第に小さくなっていく。


まるで鉛でも飲み込んだかのような空気が、じわりと広がり始めた。


「…皆、集まってくれ。報告がある」


父さんは、集まった村人たちを促し、そのまま集会所へと向かった。


その重い足取りが、良くない知らせを予感させた。


集会所に入り、全員が席に着くのを待って、父さんは重い口を開いた。


「まずは、報告だ。魔石と素材の売却、そして武器の購入は、概ね上手くいった。ドリク殿の目利きと交渉のおかげで、質の良い武器を、予想よりも多く手に入れることができた」


父さんは、ドリクさんに目配せし、ドリクさんが疲れた顔で頷く。


荷車に積まれた新しい武器は、これからの村の大きな力になるだろう。


そして父さんは、荷物の中から布に包まれた二振りの剣を取り出した。


一振りは俺の背丈に、もう一振りは兄さんの体格に合わせたものだ。


「シュート、ルカオン。約束の剣だ。お前たちの覚悟に見合うものを選んできたつもりだ。


だが、忘れるな。これはおもちゃではない。何を守るために振るうのか、その重みを常に感じ、覚悟を持って振るえ」


「はい…! ありがとう、父さん!」


「ありがとうございます!」


俺と兄さんは、緊張しながらも、それぞれの剣を受け取った。


ずしりと重い。木剣とは全く違う、冷たい鉄の感触。


鞘から少しだけ抜くと、美しく磨かれた刀身が鈍い光を放った。


これが、俺たちの剣…。喜びと同時に、その重みが、これから背負うであろう責任として、俺たちの両肩にのしかかるのを感じた。


だが、父さんの報告は、そこで終わらなかった。その表情が、さらに険しくなる。


「問題は、男爵様への拝謁と、税の減免申請だ…」


父さんの声が、一層低くなる。


「まず、男爵様に謁見するだけで、二週間も待たされた。理由は、『他の村の対応で忙しい』とのことだった…」


二週間…。その間、父さんたちは領都で待機していたということか。それだけでも、相当な負担だったはずだ。


「そして、ようやくお会いできた男爵様に、我々の村が受けた被害、ドリマ村の惨状、そして命懸けで魔物を退けたことを訴え、どうか税の減免をとお願いしたのだが…」


父さんは、一度言葉を切り、集まった全員の顔を、苦々しい表情で見渡した。


そして、絞り出すように言った。


「…答えは、否だ。それどころか、『他の村も同様に厳しい状況であり、領地全体の防衛のためにはさらなる資金が必要である』として…今年の税は、これまでの額から、さらに三割増しにすると、そう言い渡された」


「「「なっ…!?」」」


「さ、三割増しだと!?」


「嘘だろ!? 人が死んだんだぞ!」


「どうやって払えというのだ! ふざけるな!」


「助けを求めたのに、さらに取るというのか!」


父さんの言葉に、集会所は一瞬の静寂の後、悲鳴と怒号、そして絶望の声に包まれた。


三割増し。それは、ただでさえ厳しい村の暮らしを、根底から破壊しかねない要求だ。


人々の顔から血の気が引き、怒りと無力感に拳が震える。


(三割増し…だと? あれだけの被害を受けて、助けを求めた結果がこれか…!


他の村も厳しい? だから、生き残った我々からさらに搾り取ると!? 民を守るのが貴族の務めだろうが!)


俺は、新たに手にした剣の柄を、指が白くなるほどギリリと握りしめていた。


込み上げてくるのは、悲しみや絶望よりも、ただただ、燃えるような激しい怒りだった。


(ふざけるな…! なんなんだ、フレッド男爵って奴は!


自分は安全な場所にいて、命懸けで戦った俺たちから、さらに奪うことしか考えないのか!?


これが、この世界の理不尽さか…!


領主がこれなら、国は、世界はどうなっているんだ…?)


父さんも、ドリクさんも、他の大人たちも、皆、唇を噛み締め、やり場のない怒りと無力感に打ち震えている。


(ダメだ…このままじゃ。領主が民を守らないなら、自分たちでやるしかない。いや、それだけじゃ足りない。搾取され続けるだけの弱い立場から、抜け出さなければ…!)


俺は、強く、強く決意した。


いつか必ず、この村を、いや、この村を中心とした共同体を、どんな権力者にも、どんな魔物にも脅かされない、誰もが安心して笑って暮らせる場所にしてみせる。


そのためなら、どんな手段を使ってでも。


俺の知識と、魔法と、そしてこの手にした剣で。


集会所には、領主からの理不尽な要求に対する怒りと、未来への重苦しい不安が渦巻いていた。


苦い勝利の後に訪れたのは、さらに厳しい現実。ルアン村の本当の戦いは、魔物だけを相手にするものではないのかもしれない。


俺は、それを改めて痛感させられていた。


季節は、あの激闘と苦い勝利の記憶を乗せて、着実に移ろいでいった。


盛夏の眩しい日差しは、やがて黄金色の麦の穂が頭を垂れる豊かな実りの秋へと変わり、そして再び、白い息が朝の空気に溶け、霜柱が地面を持ち上げる年末の、静かで厳しい季節がルアン村を包み込んでいた。


俺が6歳になってからの一年は、まさに激動という言葉がふさわしい、濃密すぎる時間だった。


振り返れば、あのフレッド男爵からの理不尽な重税(3割増し)の知らせは、村全体を絶望の淵に突き落としかけた。


だが、俺たちは屈しなかった。


春から夏にかけて、魔法の力を総動員して拡張した東側の畑が、秋には見事な豊作をもたらしたのだ。


夏前に収穫したイモは村人たちの貴重な食料となり、その後に植えた小麦も、作付け面積を増やしたおかげで、なんとか納税に必要な量を確保できた。


村中総出での収穫作業は過酷だったが、誰も文句一つ言わず、歯を食いしばって働いた。


それだけではない。


ジョバンニさん、ケイトさん夫妻を中心とした狩猟部隊


――今ではドリマ村の経験豊富な男たちも加わり、さらにジャンの火魔法による陽動や、リリーが弓の腕を上げて遠距離からの援護も可能になり、以前よりずっと強力になっていた――


が、森で大活躍した。


俺が考案した罠も改良を重ねて効果を発揮し、牙猪ファングボア森歩鳥モリアユドリ、時には大型の鹿などを安定して狩ることができた。


その肉は貴重なタンパク源となり、上質な毛皮や、狩りの過程で得られた魔石は、父さんたちが再びフレッドの街へ赴き、武器の購入費の残りで買った薬や塩などと交換し、不足する税の一部を補うことができたのだ。


村人たちの誰もが、文字通り死に物狂いで働き、知恵を絞り、助け合った。


その結果、あの絶望的な重税を、俺たちは乗り切ることができたのだ。


集会所で収穫と納税の完了が報告された時、村中から安堵と喜びの声が上がったが、それは同時に、誰もが疲労困憊していることをも示していた。


それでも、皆の顔には「やり遂げた」という達成感が浮かんでいた。


行商人のオラライさんは、あの一件以来、すっかり態度を改めて、毎月律儀に村を訪れた。


彼は俺を(そして俺の後ろにいるであろう村の大人たちを)相当恐れているようで、交易は常に適正価格、いや、むしろ村に有利な条件で行われた。


俺は彼を貴重な情報源としても活用した。


彼の話によれば、各地での魔物の活発化は依然として続いており、貴族間の緊張も高まっているなど、キナ臭い噂は絶えなかった。


また、俺は彼に依頼して、この地域では珍しい野菜――例えば、寒さに強い種類のカブのような葉物野菜や、栄養価の高い豆類、保存の利く根菜などの種子を、いくつか取り寄せてもらった。


もちろん、代金は適正価格(オラライさんにとっては少し痛い出費だろうが)で支払った。


来年、これらの新しい野菜が少しでも育てば、村の食料事情はさらに改善されるはずだ。ささやかながらも、未来への種まきだった。


そして、俺たち七人の子供たち。あの大規模な襲撃と、仲間たちの死傷は、僕たちの心に深い傷と、そして同時に、燃えるような決意を刻みつけた。


以来、僕たちの訓練への取り組み方は、以前とは比較にならないほど真剣で、必死なものに変わっていた。


「目の色が変わる」とは、まさにこのことだろう。


「…ハァッ! セイッ!」


訓練用の広場で、回復したルカオン兄さんが、父さんに買ってもらった新しい剣を手に、激しく訓練用の丸太に打ち込んでいる。


息を切らしながらも、その眼差しは鋭く、あの日、ハイオークの攻撃で吹き飛ばされた悔しさが、彼を突き動かしているのが分かる。


剣筋も以前より格段に力強くなっていた。


隣では、シャナイア姉さんも、額に汗を浮かべ、真剣な眼差しで魔法の制御訓練を繰り返していた。


回復支援だけでなく、攻撃にも転用できるよう、リリーと共に水の塊を高速で打ち出す『ウォーターボール』の練度も、着実に上げていたのだ。


もう、ただ守られるだけの存在ではない、という強い意志がその横顔から感じられた。


「兄さん、姉さん、無理しないで。まだ完治したわけじゃないんだから」


俺が声をかける。


「分かってるよ、シュート。でもな…」


ルカオン兄さんが、汗を拭いながら僕を見る。


「次は、絶対にやられない。ううん、次は、僕たちがあいつらを倒すんだ。そのためなら、どんな厳しい訓練だって…!」


「そうよ、シュート」


シャナイア姉さんも、静かだが強い意志を込めて言う。


「もう、守られるだけじゃ嫌なの。私たちも、みんなを守れる力が欲しい。シュートだけに背負わせるわけにはいかないもの」


二人の瞳には、捲土重来を期す強い光が宿っていた。


俺自身も、父さんに買ってもらった本物の剣を使っての訓練に没頭していた。


最初は、その重さと鋭さに戸惑ったが、今はもう体の一部のように馴染んできている。


今は、剣そのものの扱いだけでなく、剣に魔力を流す感覚を鍛えることに集中している。


前世の知識…ゲームやラノベで見たような「魔法剣」がこの世界で可能なのかは分からない。


だが、やってみる価値はあるはずだ。集中して土の魔力を流し込むと、剣が僅かに重く、硬質になったような感覚がある。


切っ先が微かに輝くこともある。


まだ、攻撃力が上がっているのか、防御力が上がっているのかさえ判然としない、不安定な現象だ。


実戦で使えるレベルには程遠いが、この感覚を磨いていけば、きっと強力な武器になるはずだ。俺だけの、新しい力に。


皆があの『神様のお告げ』(ということにした魔力増強法)――瞑想と、魔力が空になるまでの限界行使――を日々続けた結果、一人一人の魔力の総量は、以前とは比較にならないほど増大しているのが、誰の目にも明らかだった。


使える魔法の威力も、持続時間も、目に見えて向上している。


これが、僕たちの血のにじむような努力の成果だ。


「シュート、すごい集中力だね…。剣、もうすっかり自分のものにしてる」


訓練の後、一人で剣の手入れをしていると、リリーがそっと隣に座った。


彼女もまた、弓の腕を上げ、水魔法だけでなく、キャシーと共に風魔法の基礎も学び始めていた。水と風を組み合わせた新しい魔法を模索しているらしい。


「リリー。…ああ、少し考え事をしてただけだよ。この剣の重みに、まだ慣れなくて」


「…無理しないでね。シュートは、いつも一人で色々なことを背負いすぎてる気がするから」


彼女は、少し心配そうに僕の顔を覗き込む。


「私たちもいるんだから。ルカオンさんやシャナイアさんだって、ジャンだって、ブレディ君やキャシーちゃんだって、みんな、シュートと一緒に戦いたいって思ってるんだよ。もっと頼ってくれてもいいんだよ?」


「…うん。ありがとう、リリー。そうだな…一人で抱え込むのは、もうやめにするよ」


彼女の優しい言葉が、張り詰めていた俺の心を少しだけ和らげてくれる。


(そうだ、僕は一人じゃない。こんなに頼もしい仲間たちがいるんだ)


ジャンもブレディも、二人の火魔法使いは互いにライバル意識を燃やしながら、その威力を着実に高めていた。


今では二人とも、安定して『ファイアボール』を連射できるようになり、ブレディは槍状の炎『フレイムランス』の精度を、ジャンはより広範囲を攻撃できる『ファイアストーム』の習得を目指していた。


キャシーの風魔法も、今では偵察に鳥を使ったり、風の壁で短時間なら矢を防いだりできるようになってきている。


僕たち七人は、互いに競い合い、励まし合いながら、着実に力をつけている。


年末を迎えたルアン村は、静かだが、確かな力強さを湛えていた。


北側と南側を守る防御施設は、水堀と土塁、そして銃眼を備えた胸壁によって完成し、以前とは比較にならないほどの威容を誇っている。


村の中には新しい家々が立ち並び、ドリマ村の人々も完全に村の一員として溶け込んでいる。


食料は何とか確保され、子供たちは神官様から文字と数を学び始めている。


村人たちの顔には、厳しい現実を乗り越えた自信と、仲間との強い絆が見て取れた。


だが、同時に、領主への不信感や、いつまた襲ってくるか分からない魔物の脅威への警戒心も、決して消えてはいなかった。


冬の夜、皆で焚き火を囲む時も、誰かが必ず見張りに立ち、遠くの物音に耳を澄ませている。


こうして、多くの悲しみと、それ以上の成長と変化を経験した、俺の6歳の年は終わろうとしていた。


守るべきものが増え、目指すべき場所はまだ遠い。


それでも、確かな手応えを感じながら、俺は、来るべき新しい年と、そこに待ち受けるであろう新たな戦いに、静かに思いを馳せるのだった。


(蒼依、俺はこっちで、なんとかやっている。君も、どこかで無事でいてくれ…そして、必ず君を探し出すから…)

ご一読いただきありがとうございます!

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もっと楽しんでもらえるように頑張りたいと思います。

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