おおきく振りかぶって
「とりあえず投げた瓦礫は撃墜されちまったけど、投擲スキルで届く距離にいるってんなら不肖わたくし一番槍、務めさせていただきまァす!!『槍射一掃』だりゃあああ!!」
先程瓦礫を投擲したプレイヤーが、今度は自身の携えた青い槍をトネルオラージュ目掛けてスキルを発動しながらぶん投げた。スキルエフェクトを纏いながら高速で放たれた槍が、大気と雨を穿ちながら突き進む。
あっという間に天高く駆け上がった槍は、そのまま黒い雷を纏っていない通常のトネルオラージュの胴体を掠めた。
「GIYAAU!?」
「うがぁぁぁぁ!!微妙にズレた!!」
「当てただけ十分だっての!物理攻撃は普通に通りそうだな!!」
「アンタって槍の投擲系スキル持ってたんだ。……あれ?ところで外れた槍ってどうすんの?」
「ふっふっふ、回収はセルフとなってるんだなーこれが。……クソが!聞こえてるか運営!!投擲系スキルはほとんどが武器の使い捨て前提になってるのどうにかしろ!!」
トネルオラージュの胴体を掠めてそのまま市街地へと自然落下していく青い槍を、投擲したプレイヤーは大声で文句を垂れながら全速力で追いかける。見た限り威力は高そうなスキルだったけど、直撃しないと武器の回収が大変そうだ。
しかしその甲斐あって、トネルオラージュのヘイトが完全にこちらを向いた。自身の不機嫌さを示すように、トネルオラージュの全身の羽毛が逆立ち、雷雲も連れるようにゴロゴロと雷鳴を轟かせる。
「……GIYAAAOOOO!!」
トネルオラージュの怒りに震える咆哮と共に空が発光し、白い稲妻が地上に降り注ぐ。
「うぎゃっ!?」
音よりも疾く駆ける雷光が、地上にいる名も知れぬプレイヤーの身を焼き焦がす。短い断末魔を上げて地面に倒れ込むプレイヤーはソロなのか、周囲で彼を回復しようと動く者はいなかった。
「背が高いプレイヤーに優先的に落ちるわけじゃないんだなこの雷攻撃」
「そんな仕様だったら巨人族が圧倒的に不利すぎるから流石にランダムでしょ」
「天候のせいで雷魔法の攻撃力上がってるのが厄介だなクソ、精神力ろくに上げてねぇからクリティカルで喰らったら一撃でやられるぞこれ」
「精神力アップの魔法、かけとく?」
「いやー、レベル差考慮しても焼け石に水だろ。雷だけど。当たったら運が悪かったで割り切るしかねぇな」