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借りたものは返す、これ常識

「…………戻ってきたら必ず返して。返さないと()()()()()



その発言の直後、彼女の袖の部分からジャラジャラと金属同士が擦れ合う音と共に真っ黒な鎖が床に落下する。先端部分には返しの付いたアンカーが鈍く光っている。武器……なのか?よくわからないが吊るすって事はまあ()()()()使()()()をする道具なんだろうけど。

というかこのレインコート、別にくれるわけじゃないのか。あくまでレンタルなのね。



「わかりました、必ず返します」



「…………ん」



俺の返事を聞いた少女は満足そうに頷くと、どういう原理か地面に伸び切った鎖を一瞬で袖の中に収納し、それから瞬く間に姿を消した。

きちんと約束を守り返却しないととんでもない事になるのを確信しつつ、レインコートを装備して俺は店の外へと出るのだった。



相変わらず降り注ぐ雨を半ば強制的に命を担保に借りたレインコートで弾きながら街中を歩く。地面には水たまりが出来ており、それを覗くときちんと自分のアバターの姿が映し出されるのは本当に狂ったグラフィック性能をしているゲームだなと感心しつつ、俺はギルドへと向かう。



「あーもうびしょ濡れで気持ち悪いんだけど!なんでゲームの中なのに不快な気分にならなきゃなんないの!?」


「そこの道具屋の店先で売ってた傘を買わなかったアンタが悪いんじゃん。アタシ言ったよね?」


「だって傘1本2000円もするんでしょ!?高くない!?手持ち5000円しかないのに!?」


「円じゃなくてゴルドね。適正価格かどうか知らないけど、雨降ってるなら普通買うデショ」


「わぶっ!?ちょっ!傘回して水滴こっちに飛ばすなし!!」




ギルドの入口では雨に打たれてずぶ濡れのプレイヤーと、傘を差して涼しげな表情を浮かべているプレイヤーが口論をしていた。

まあみんながみんな、現実となんら遜色ない狂気じみた仮想世界内での再現性を喜ぶわけではないよな。

再現性が高すぎるのもそれはそれで問題あるよなと思いながら、レインコートを脱いでギルドの中へと向かう。


昼の時間が迫っているせいか、それとも雨で外出する予定が潰れたか、ギルド内はログインした時より更に混雑していた。

クエストを受注する為のカウンターも人、人、人、偶に巨人、ケモミミ、なんかメカメカしい人型と様々な人種が長い列を形成している。


というか基本的にプレイヤーの種族って人族が多いな。亜人族や機人族はあまり見かけない。

まあ亜人族の中でもエルフ族や巨人族、ドワーフや小人族以外はわりと獣寄りのアバターになるから大衆の好みの問題もあるんだろうけど。

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