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お眼鏡に叶う

「ほなうちらは用事が済んだからもう行くさかい、さっきみたいな無謀な事はあまりせぇへんようにね」


「シキ君、またねー!」



それから目的を済ませた二人は扉を開けて店の外へと出ていくのを会釈して見送った。カランコロンと鳴り響く鈴の音が別れを告げる。


フィーさんはヴィレジャスさんに呼ばれて工房に戻ってしまったので、現在店内には俺と天井から監視する用心棒の人物の二人だけ。悪い事をしていないのに天から降り注ぐ視線が俺に集中しているのをヒシヒシと感じる。そんな悪さしそうに見える風貌してますかね俺……。


いたたまれないのでとりあえず俺も店を出よう。手甲が出来上がるまで3時間も店内で時間を潰すのは流石に心が保たない。

店外へ向かった二人の後を追うように扉を開くと、背後で着地音がしたので思わず振り返る。



「…………」



漆黒の装束で全身を包んだ小柄な人物が、こちらを見定めるように空いた目元から鋭い眼光を飛ばしていた。燃え盛る炎のような紅い瞳が俺をじっと見据えている。



「えっと……、な、なにか?」


「…………これ」



外の雨音で掻き消えそうなほどか細い少女の声が溢れる。少女が差し出す手には彼女が身につけている装束と同じ漆黒の布が置かれていた。



「…………外、まだ雨が降ってる。使って」



布をよく見るとフードがついているのが見える。使って、という事はレインコートなのだろうか?しかしなぜ突然そんな提案を?思いがけない提案に面を喰らっていると、少女は俺との距離を大幅に詰めてぐいっと両手と黒布を差し出してくる。



「…………使って」



どうやら聞き取れなかったと判断したらしい。いや意識しないと聞き取れないくらいか細い声ではあったけれども。喧騒の中では間違いなく聞き逃すくらいの声量ではあったが、驚いて声が出ないのは別の理由があるわけで。



「えっと、い――むごっ」


「…………使()()()


「……ふぁい(ハイ)」



有無を言わさないとはこの事か。理由を尋ねようとした瞬間に口元へ布を押し付けられた。なんなんだ一体、店内での行動の何がクリティカルヒットしたんだ…?

尽きぬ疑問に困惑しながら、俺は押し付けられた黒い装束を受け取った。



――――『漆黒のレインコート』を入手しました。

【装備解説】


『漆黒のレインコート』


カテゴリ:アクセサリー

効果:雨天時の移動速度減少効果無効。水属性魔法ダメージ20%軽減。耐久+30

説明:悪天候時での行動を想定したアクセサリー。耐水性に優れた特殊な布を素材にしており、防具への吸水を妨げることで移動速度の低下を防ぐ。

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