ちょっと何言ってるのかわからないですね
「手甲の制作と『瑞氷』の微調整に3時間はかかる。暫くどこかで時間を潰してな」
そう言い残してヴィレジャスさんは工房へと姿を消した。その後を追うようにフィーさんも駆け足で店の奥にある工房へと向かっていった。3時間か、結構時間が空くな。時間を潰すにもどうしたものか。
魔力上限アップの効果時間である120秒はとっくに過ぎて現在『魔力中毒』状態によるデメリットで魔力はすっからかんの0である。まあ魔法は使わない、というか現状魔法を習得しておらずそもそも使えないのでさしたる問題ではない。適当にクエストでもこなすか。
今後の予定をざっくりと脳内で練っていると、工房に姿を消したはずのフィーさんが乳白色の宝石が上部に埋め込まれた杖を大事そうに抱えて戻って来た。
「リーラちゃんお待たせしてごめんねー。調整、完了してるよー」
「なんや、調整もう終わっとったんやね。おおきに」
リーラライフさんは礼を述べながらその杖を受け取ると、愛おしそうに優しく撫でる。そういえば入店する前に用事があると言っていたっけか。
「ほんで、今回はどないな感じに仕上げてくれたん?」
「『智天』級の『月光石』の入荷があったから『座天』級の『月光石』から入れ替えておいたよー。魔力伝達速度上昇による発動までの時間短縮と消費魔力の軽減、効果上昇が大きな変更点かなぁ。あとは何時も通り!」
「なるほどなぁ。『熾天』級の『月光石』はやっぱりそう出回らんのやね?」
フィーさんとリーラライフさんが急に専門用語を織り交ぜて高速でキャッチボールを始めたが、流れから察するに杖に使用している宝石の話だろうか?
リーラライフさんが握る杖の上部に埋め込まれた楕円状にカッティングされた乳白色の宝石、あれが『月光石』かな。
ケバブだかバルブだか聞き逃してしまったが、セラフなら聞き覚えがあるぞ。確か天使の階級だ。そうなるとそれが宝石のランクを示しているのだろう。
「『蒼玉石』の『熾天』級なら入荷あったんだけどねー。魔鉱石の中でも『月光石』は流通自体が少ないからかなり難しいかなぁ」
「そうなんやね。まあ見かけたら確保よろしゅうな」
「はーい」