瓢箪から駒が出る
「気概に免じて無償で渡す、と言ってやりたい所だがこちとら商売でやってるもんでね。そんな事をしてたら商売上がったりさ。本来なら1000万Gは要求したい所だが、特別に快福竜の鱗4枚で譲渡してやってもいい。どうする?」
リペアドランの鱗は1枚50万Gで4枚だと200万G、『瑞氷』は1000万G相当の武器だとするなら8割引の大特価。わざわざ工房から持ってきた上に売り物ではない武器である『雪月天』の試製品、ということは特別な武器のいわゆるユニーク武器だ。これは断る理由はないのではないだろうか?
「ぜひ、お願いします」
「ん、商談成立だ。フィー、素材を受け取りな」
「は、はいお師匠様!」
ヴィレジャスさんに促されたフィーさんがこちらへ接近してきたので、リペアドランの鱗を4枚取り出して引き渡す。瞳を異常にキラキラさせてソワソワしているフィーさん。おそらくさきほどの発作を起こさないように必死に耐えているのだろう。
「それとその布も回収しな、さっきの早合点の詫びも兼ねて装備を拵えてやる。これに関してはお代は不要、素材はその快福竜の鱗から2枚使わせてもらう。これだけだと作れるのは手甲か腰装備になるがお前さん、どっちがいい?」
「えぇ!?いいんですかお師匠様ぁ!?」
「なんでお前さんが驚いているんだい……。私はそこの小僧に尋ねたんだよ。いいから黙ってお前さんは回収しな」
「あぅっ……ごめんなさい。えーっと、お兄さんその布、回収しますねー」
コロコロと表情が変化し感情表現が豊かなフィーさんへと布を手渡す。手甲か腰装備か、手甲ってなると文字通り手に覆うタイプの装備だよな。防具のパターンが多いけどゲームによっては武器のパターンもあるが、このゲームだとどっちになるんだろうか?
……ん?てかしれっとリペアドランの鱗で装備作ろうとしてくれてる?鱗4枚でユニーク武器と新装備とか詫びの内容が破格すぎないか?
元を辿ればリペアドランの素材はミサさんと偶然出逢ってから貰った棚ぼたみたいな素材なのに、いつの間にか話が進んで新しい装備に変わろうとしている。日頃の行いによるものか、それとも不幸の前触れか。後者じゃなければいいが……。
なにはともあれ追加で作ってもらえる装備だ。性能も然ることながら、プレイスタイルに合わない装備だと宝の持ち腐れになってしまう。無難なのは腰装備なんだろうけど、手甲が気になるな。
ヴィレジャスさんが頼んでもいないのに解説してくれた辺り、性能に関して尋ねれば説明してくれそうだし聞いてみるか。
「手甲が気になるんですけど、どんな装備になりますか?」
「そいつは見てのお楽しみさね」
まさかの説明拒否である。
初めて間もないがわりと不親切な事が多くあるんだよなこのゲーム、マップ内の移動とかね。いやまあ実質タダで作ってくれるんだから文句言うのも違うんだろうけど。まあ何が出来るかワクワクするのも一興か。