ものは言いよう
「わ、わぁ!?お師匠様以外で『雪月天』を抜刀出来る方、わたしはじめて見ました!?」
掲げた刀身の中で揺蕩う綺羅びやかな光につい見惚れていると、すぐそばにいるフィーさんが興奮気味に大はしゃぎしていた。エリクシードを使った魔力ドーピングによる結果だが、抜刀チャレンジ成功である。まあ特に何かあるわけではないんだが。
抜刀した状態だと魔力ゲージの減少速度が早まっており、120まであった魔力がもう残り40以下になっていた。いくらなんでも燃費が悪すぎるな、マナポーションを常にガブ飲みかなんらからの方法で魔力を常時自動回復出来る装備品が運用するには必須なんだろうか。それとも精神力が低いから魔力を吸われすぎているのか?うーん、詳しい仕様がわからないな。
降って湧いてくる尽きぬ疑問に頭を悩ませるが、まあ悩ませた所でこの武器が自分のモノになるわけではないので考えるだけ無駄である。とりあえず納刀しとくか。
煌めきを目に焼き付けるようにじっと眺めながら刀身をゆっくりと鞘へと収める。
「……お前さん、引き抜く途中で口に含んだのはありゃなんだい?水色が垣間見えたがまさかエリクシードじゃないだろうね?」
納刀した『雪月天』をヴィレジャスさんへと手渡すと、怪訝そうな表情を浮かべながら尋ねられる。
「え?エリクシードですけど、何かダメでしたか?」
「……ちょい待ち、エリクシードって言うたんか?」
エリクシードという単語を聞き、リーラライフさんが会話に割って入ってくる。おっと?俺なんかやっちゃいましたか?
「エリクシードって秘薬エリクサーの原料になる木の実だっけ?」
「せやね。エリクシードを乾燥させてから粉末状にすり潰して小分けにして、他の材料と混ぜ合わせてエリクサーは作るんやけど、エリクシードをそのまま生で食べるんは体内のマナを通す経絡をエリクシードに含まれた高濃度のマナでズタズタにする自殺行為なんよ。普通はしいひん」
「え?じゃあシキ君死んじゃうの?ギルドに連れてく準備した方がいい?」
「いや、うちらみたいな非睡醒者がエリクシードをそのまま食べたら最悪死に至るんやけど、睡醒者の場合は死んでも死なへんから別に問題はないんよ。ただ、いくら睡醒者といえど暫く魔力を練れへんようになるから普通はせえへんのよ。普通は」
「シキ君はただ者じゃないってこと?」
「……、ものは言いようやね。うちはレベのそういうとこ、嫌いやないよ」