名刀は担い手を見ている 己を振るうに能う者か否か
「……、そうかい。どうやら私の早合点だったようだね」
『雪月天』を納刀して二振りの刀を台座に戻したヴィレジャスさんは、オーバーオールのポケットからハイポーションの瓶を取り出して一気に飲み干してみせた。なぜこのタイミングで回復を?武器使用に伴うデメリットだろうか?
その疑問を含んだ視線に気がついたのか、ヴィレジャスさんは俺と視線が交錯すると空になったハイポーションの空き瓶を両手で丸めな、が……――待て待て待て!?瓶を丸めてる!?どういうこと!?まるで意味がわからないのだが!?
驚愕で目を見開くが、ヴィレジャスさんの視線はすでに外れて二振りの刀に注がれ、背中を向けているのでこちらに気づかない。
驚きが隠せない様子なのは俺だけだからフィーさん達からすればよくある事なんだろうけど、え?説明とか特に何もなしで進む感じですか?
「この二振りは妖刀でね、持ち主の生命力を喰らう『無明』と魔力を吸い上げる『雪月天』は半端者ではまともに握れやしない利かん坊さ」
進む感じみたいですね、まあいいか。ヴィレジャスさんのなんらかの特殊スキルだろう。
別の疑問を解消する為に背中で語るヴィレジャスさんは、続けてポケットからハイポーションの瓶とは似て非なる形状の瓶を取り出して口元へと傾けた。
確かあれは魔力を回復させるハイマナポーションだった気がする。『ディパート』の店内に並んでいたっけか。まあ魔法を習得していない俺には現段階では不必要なアイテムだったので購入しなかったが。
「どうだい小僧、試しに触れてみるかい?快福竜の鱗を持ってるってんならお前さん、それなりの力はあるんだろう?」
「や、やめておいた方がいいです……!わたしがお師匠様に無理言って触らせてもらった時、一瞬で魔力を全部吸われて暫く気絶したのでほんっっっっとうに危ないですよ!?」」
「それはフィーの魔力総量が低いからやろ?うちの1/4くらいしからあらへんもんなぁ」
「リーラちゃんが多すぎるだけだからぁ!わたしはこれでもエルフ族の平均よりは高いよ!?」
「ハイハイ。まぁ安心しぃや白髪の兄ちゃん、仮に気絶してもうちが叩き起こしたるさかい。そもそも睡醒者として目覚めた者なら身体の作りがうちらとは異なるわけやし、死んでも死なへんからなぁ」
「もし勢い余って死んじゃったら急いで私がギルドまで届けるから安心してね!」
俺が一言も発する隙間も暇もなく、なんか自然とやる方向で話がまとまりつつあるなこれ。そしてレベさん笑顔のサムズアップ、直前のかなりクレイジーな発言がなければスクショして残しておきたいくらいなんだけど、勢い余って死んじゃったらってなんなんですかね……。
まあ魔力切れで行動不能はあっても戦闘不能になるゲームはこれまでにゲームで経験した事ないし、ヴィレジャスさんの説明を聞く限りだと体力を削り取りにくる『無明』に触れなければ問題なさそうだし試してみるか。