逸る気持ちは言葉も加速させる
「虹ってリペアドランの素材の事ですか?」
丁度いいや、どのタイミングで話を切り出そうか悩んでいたから今ここで昨日ミサさんから受け取ったリペアドランの素材の価値を聞いてしまおう。
耐久値の事は後回しにしてアイテム欄からリペアドランの素材を取り出してフィーさんへ見せると、彼女は目をキラキラと輝かせて身をこちらへずいっと寄せてきた。
「高濃度の魔力の気配がしたからそうかなぁって思ったらやっぱり持ってたんですね!?この眩くもどこか温かみのある数多の色が織り交ぜられて極彩色に輝く鱗、間違いなくリペアドランのものです!!エリクシードのみを食す偏食の竜であるリペアドランは体内に内包された膨大な魔力が全身隈なく行き届いていて、剥がれた鱗にも高濃度の魔力が含まれているので加工すれば強力な武器や防具の素材になるんですよ!!鱗1つとっても私の1ヶ月分の給料になるくらい高価な素材なんですけど、入手方法が直線剥ぎ取るか自然に剥がれ落ちた鱗を採取しなければいけなくてですね!!そもそも個体数が少ないってのもあるんですけど――」
ものすごい既視感を覚える豹変っぷりに若干面をくらいつつ、食い気味にリペアドランの素材を力説するフィーさん。それを見ていたヴィレジャスさんは軽く溜息をついていた。たぶんよくある光景なのだろう。
というかしれっとプレイヤーの所持しているアイテムを把握している。ゲームによっては特定アイテムを所持した状態で話しかけたりすると特殊なイベントが発生したりするからそういう仕様なのだろうか。
「フィー、落ち着きぃ。珍しい素材見ると興奮するクセは昔からやね、白髪の兄ちゃん引いとるよ」
旧知の仲なのか、リーラライフさんもやれやれといった感じで諌める。
「――ハッ!?………あぅ、ごめんなさい!わたし、よく喋りすぎる事があってぇ……!」
「全然、大丈夫ですよ」
まあ突然の捲し立ては蒼馬で慣れてるので、ポワポワした温和な態度からのギアチェンジは多少驚いたが個人的に見慣れた光景である。それにリペアドランの素材の価値も判明したしな。鱗1つで鍛冶屋の給料1ヶ月分相当ならかなりの値が張りそうだ。
ただリペアドランの素材にそれだけの値打ちがあるということは、加工する金額もかなりの額を要求されそうではある。少なくとも現在の所持金では最低でも桁が2つは足りないだろう。