振りすぎ注意報
「はい、どうぞー」
「ありがとうございます」
ポワポワとした雰囲気を纏ったフィーさんから布を受け取って濡れた全身を拭き始める。全身丸ごと包み込めそうなほど大きな布なのだが、流石にサイズが大きすぎて拭き取りにくいな……。
「なんか拭きにくそうだね?シキ君、私がやってあげるよ!」
「え?レベさ――おわわわわわッ!?」
それを見兼ねたレベさんが頭上から布をひょいと奪い取ると、そのまま巨大な布を頭から被せられて全身を包み込まれて文字通り揉みくちゃにされた。幼少期の風呂上がりに父親からバスタオルで濡れた全身の水気を拭き取られた事を思い出す。
「…………フィー、お前さんその布はどこから持ってきたんだい?」
「えーっと、人族用の防具に使うストック棚から持ってきましたぁ」
「確かに私は適当に乾いた布を持ってこいとは言ったがね、商品に使う布を渡せとは言っていないよ」
「最近人族の防具に使う布が余ってるからいいかなーって思ったんですけどぉ……」
「いいわけないだろう馬鹿者、渡した布代はお前の給料から引いとくからね」
「そんなぁ!?」
「相変わらずおっちょこちょいやなぁフィーは」
「うぅ……」
そんな布越しに繰り広げられる会話を耳にしながら、袋に詰められてシェイクされるポテトの気分を体験させられ暫く経過すると、包まれて薄暗かった視界が急に開けた。
「そろそろいいかな?」
「……あ、ありがとうございます」
「どういたしまして!」
全身を揺さぶられすぎて画面酔いに近い状態になりつつも気合で持ち直す。そして視界端に映る若干減少している体力ゲージを見ながらレベさんへと御礼を述べた。ダメージ判定になるのかこの揉みくちゃ乾燥方法……。まあ密閉された袋の中身をシャカシャカしたら中身に傷はつくけれども。
「あ、あのー、そこのお兄さん、その布よかったら買い取ってくれたりしませんかぁ?あとお兄さん、虹、持ってますよね?加工してお安くしておきますので、どうでしょう……?」
流石に防具の耐久値は減っていないよな……?と、不安になってきたので念の為にステートウォッチで装備の耐久値を確認しようとしたところ、申し訳無さそうな表情を浮かべたフィーさんに商談を持ちかけられる。虹?もしかしてリペアドランの素材の事を言っているのか?
 




