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戦闘訓練-開始‐

惑星ルーシッドの住民の死生観についての小話


惑星ルーシッドでは高位魔法での蘇生、秘薬による復活が一般に認知されているので死に対しての忌避感がかなり薄い。

とはいえ魔法や秘薬を用いた蘇生も肉体の損傷が激しすぎる場合は失敗する事もあり、完全に消失した四肢や臓器を魔法で生み出したりすることは不可能なので、NPCの中には戦闘で腕を失い隻腕になったキャラなども存在する。

惑星ルーシッドの住民にもそれぞれ種族で個体差はあるが寿命の概念があり、寿命を迎えた者が蘇生魔法や秘薬で蘇ることはない。



例外として元は惑星ルーシッドの住民であった睡醒者プレイヤーはその限りではなく、戦闘で腕をなくしてもモンスターに丸呑みされようともいつの間にか五体満足でベッドで眠りについている。


風の噂ではどこからともなく現れたエルフの従機士集団が斃れた睡醒者を回収しているらしいが、その詳細は不明である。


現地民であるNPC達も「睡醒者は我々と見た目は同じだが、目覚めた時点で中身は別の生物」と認識している。

各々のプレイヤーが武器を手に取り、レベさんと土人形達と相対して構える。

それを俺達から少し離れた位置に移動したリーラライフさんが一瞥し、柏手を打ち口を開いた。



「制限時間はレベの『土人形クレイドール』が動かへんようなるまでさかい、大体5分ってとこやね」

「もしも戦闘訓練中に『無理!』ってなったらリラちゃんのいる方まで逃げてね!『土人形クレイドール』の私、自動で動いて結構強いから身の危険を感じたら逃げるのも戦略の一つだよ!」



今回行うのは戦闘訓練なので逃げ、もといギブアップの選択肢もきちんと用意されているようだ。


今や世間ではフルダイブ型のVRゲームが大流行したことで、手でコントローラーを操作するタイプではなく自身の脳波で身体全体を操作する一人称視点のゲームが一般的になって久しい。

とはいえ、いきなりあの巨大なレベさんや人型の土人形と戦うことに恐怖を覚える者もいるだろう。


まあ俺の場合は目の前にぶら下げられた人参に齧りつきたい馬のように好奇心が勝って恐怖は感じないが。


このLDDを始める前からフルダイブ型のVRゲームはそれなりに遊んでいたし、格闘対戦系のVRゲームもNPC相手であれば最高難度設定でも難なく倒す程度に実力はある。

対人戦、となると連戦連勝とまではいかないが、それなりの経験はあるのでなんとかなるだろう。


……まあなんとかならなくてもご褒美の為になんとかしなきゃいけないわけだが。


目覚めろ俺の知らない隠れた才能。頼むぞプロゲーマー御用達のVR機。

ゲームをプレイし始めた時に抱いた違和感、身体が動きすぎるってことは脳波を読み取ってからの反応速度が一般用と比較して優れている証明に他ならない。

この反応速度は咄嗟の判断で生死を分ける戦闘において大きな有利になるはずだ。


制限時間が5分ならまず1~3分は周囲の動きを見ながら回避に専念しつつ、レベさんと土人形の攻撃パターンを分析するのが無難だな。


もし戦闘中にご褒美目当てでレベさんに集団で特攻をかけるプレイヤー達がいたらお相伴に預かることも選択に入れておこう。

多勢に無勢という言葉があるように、土人形を突破して数人がかりでレベさんに特攻をかければ一撃を入れられるかもしれない。


まあレベさん本人の実力が如何ほどのものなのかが一切不明な現状では皮算用でしかないのだが……。



「それとレベ自身かなりの手練れやし、いくらレベが可憐やからって手ぇ抜いた状態で一撃入れられるとは思わんことやね。舐めてかかったらほんまに死によるよ?」

「こ、殺さないからね!?訓練だからその辺りは弁えてるから!大丈夫、安心して!」

「この前うっかり殺しかけたのは誰やったかなぁ。あん時は治療大変やったなぁ」

「あの時は当たりどころが悪かっただけだってば!?」



死ぬだの殺すだの物騒な単語が混じっているのに和気藹々と会話するレベさんとリーラライフさん。

どうやらLDDではNPC達の死生観がかなり軽いようだ、たぶん水素くらい軽い。


リーラライフさんが先ほど「完全に死んだ者は蘇生できひん」と蘇生云々の話をしていたが、LDDには死者を蘇生させる魔法が存在するのだろう。



「……え、死ぬこともあるの?リアルで?」

「いやいや死なない死なない!ゲームだよこれ?錯覚で衝撃を感じることはあっても痛覚は再現されないってネットで見たよ」

「なーんだ、びっくりしたぁ」



LDDはゲームだからプレイヤーが実際に死ぬなんてことはないので、リアルで命の危機に陥るとかそういう心配をする必要はなさそうだが、ゲームとはいえこうもリアルに身体が動くと不安になるのもわからなくはない。


しかしゲームはどうあがいてもゲームでしかない。

現実に酷似していたとしても実際は疑似体験であり、現実では様々な制約があって出来ないことが出来る。それがゲームのいいところだ。

まあのめりこみは注意が必要だと思うけど。



「ほな改めて、準備はええな?」

「ご褒美……リベちゃんさんからのご褒美……」

「とりあえずあの土で出来た人の攻撃避け続けるか、でっかい女の子に攻撃当てればいいんでしょ?」

「他にもプレイヤーがいるからぶつからないように気をつけながらね。まあなるようになるでしょ」

「リーラライフ様から癒やしの施しを受けたいけど施しを受けるとご褒美が貰えない……!どうすれば……!」



よく通るリーラライフさんの声に応じて周囲のプレイヤーはそれぞれ武器を握る者、小盾を構える者、頭を抱えて悩む者と三者三様。

いやもう戦闘訓練始まるけど大丈夫かよ最後の人。



「カシさん、どうします?いきなりブッコミますか?」

「レベちゃんに突撃してぇのは山々だがこの体格差じゃあ迂闊に飛び込んでも返り討ちに遭うのが目に見えてら。とりあえず最初は様子見だ、あと使えそうなヤツいたら目ェつけといて俺に教えな」

「了解っす」



右前方から二本の刀を装備した赤髪の男とバンダナを巻いた短剣と小盾を装備した金髪の男プレイヤーが作戦会議をしているのが聞こえてきた。


二刀流の男性プレイヤー、さっき叫んでリーラライフさんにツッコミ入れられてた人だな。

あのプレイヤーもレベさんのご褒美狙いなら目的は同じだろうから出来るだけ近くで立ち回ってみるか。




「みんな!手加減とかいらないから本気で掛かってきてね!それじゃあ戦闘訓練――開始だよ!!」



号令と共に鞘から剣を引き抜き、戦闘態勢に入る。

さあ、戦闘訓練開始だ。まずは3分間、逃げに徹して情報収集の時間だ。

【用語解説】

デスペナルティ:LDDではプレイヤーのHPが0になった際、蘇生可能時間内に蘇生アイテムや蘇生魔法を使用しなかった場合、プレイヤーは付近のベッドでリスポーンするゲームシステムとなっている。

その際に課せられるペナルティの事。

ペナルティ内容はゲームへの再ログイン不可6時間。


VRゲームはフルダイブシステムを利用する為、従来のコントローラーで操作するゲームと比較しても脳にかかる負荷が危険視されており、健康上の対策として設定されている。


……が、あくまで一部のVR規制派を納得させる為の建前であり、実際に健康被害が発生したことはこれまで確認されていない。



LDDは月額課金制のゲームであり、基本プレイのみの【プランα】ではこのデスペナルティが存在する。


上位プランとして

デスペナルティが削除された【プランβ】(かなり長い規約書を読んだ上で同意する必要がある)

プランβに加えて戦闘補助を行う従機士が加入する【プランγ】が存在する


闘技場に入り浸る対人ガチ勢や攻略ガチ勢はほとんど上位プランだが、戦闘と関わりの薄いゲーム内カジノメインのプレイヤーや生産職系のジョブを選んだプレイヤーはプランαを選択する傾向にある。

ちなみにゲーム内通貨はリアルマネーで追加購入が可能となっている

10000G=100円



生産職「素材が足りないねぇ!!」

カジノ狂い「掛け金が足りねぇ!!!!」


ゲーム内通貨は特定条件を達成するとLDDのアプリで提携店での買物支払い時にポイント扱いで利用する事が出来る(月額上限あり)

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