疾風怒濤の時期
「……兄さんのせいで怒られたじゃないですか」
「……お前が謝らないから俺まで怒られただろ」
母の一言で終戦したかに思えた小競り合いだが、勿論そんなことはなく。小声での延長戦が即勃発。
「……声を最初に荒げたのは兄さんですよ」
「……いきなり脚の小指に扉をぶつけて来たのはお前だぞ」
「「…………!」」
互いに色々と思うところはあるが、またも母の逆鱗に触れて再度怒りの鉄槌を振り落とさせようものなら、ペナルティでなんらかの禁止令か家事手伝いの刑で処される恐れがある。これ以上は平行線で埒が明かないと、繋がる言葉は喉の奥へと引っ込めて互いに睨み合いながら扉をすれ違った。
未來のヤツ、数年前まではまだ可愛げあったんだけど最近は刺々しくて食卓以外で顔合わせる度にこれだ、思春期か?まあ俺も思春期真っ只中だから、この言葉がそっくりそのまま己自身の後頭部に突き刺さるわけだが。
胸中で投げた言葉のブーメランが頭に直撃するのとジワジワと鈍く残る脚の小指の痛みに顔を歪めながら、階段を昇って自室へと戻った。
ベッドに放置していたVRヘッドセットを戸棚に片付け、勉強机の上で充電していたスマホを手に取る。
寝る前に軽くLDDの情報でも見ておくかな。えーっと、まとめサイトのブクマは……っと。
部屋の電気を一番薄暗い状態にまで下げてベッドに寝っ転がりながら、スマホを操作してLDDの情報をまとめたサイトを開く。
気になった記事をざーっと流し見している内に眠気が少しずつ背後にジリジリと滲み寄り、気付いた時にはスマホが手から離れて画面は消灯しており、どうやら寝落ちしていたようだ。
スマホの画面をタップして時刻を確認すると夜中の2時を過ぎたあたりだった。また微妙な時間に目が冴えてしまった。
とはいえ寝落ちして半覚醒の状態はふつーに眠いので、俺の脳内でゆっくりと肩をポンポンと叩いてサムズアップしてくる睡魔を受け入れ、部屋の電気を完全に消して二度寝という名の深い眠りにつくのであった。
 




