続行希望
「…………はぁ、興冷めね。戦う気概が毛頭ないのであれば、これみよがしに武器を構える必要はなくてよ?撤退したければどうぞご自由に。此方から追撃する事は致しませんわ」
短い嘆息を吐き、眼前の3人に攻める気力がない事に気付いたミサさんは、自身の不機嫌さを示すように低い声音で言葉を投げた。
「攻める気ないのバレとるやんけ」
「……前回は問答無用で襲いかかってたんだからそりゃ違和感からバレるだろ」
「……あー、その、なんだ、手前勝手に襲撃しておいて、分が悪いと判断したら即撤退っつーダッサイ真似して興削いで悪かったな」
「……自覚があるなら結構。彼我の戦力差を埋める為に徒党を組むのは間違いではないわ。けれど折角組んだ共闘関係を活かすわけでもなく、各々単独で攻めた所で私に勝てる筈がないでしょう?まだ前回の様な混戦に持ち込んだ方が可能性はありましたわ」
「あかんわ、ド正論すぎてなんも言い返せへん」
「……ハナから一斉に仕掛けてりゃ良かっただけの話じゃねぇか」
「…………ん?いや待て、元を辿ればサブとブッキが飛び出してなけ――」
「――何を勝手に終わらせてるんですか?」
「ッ!?」
戦う意思を放棄した三人組とミサさんの間に割って入るように、雑木林から声と逆手持ちの剣が飛来して両者を裂くかのように深々と地面へと突き刺さる。
「まだ闘いは終わってないですよね?」
「ちょっ、ブっちー待って待って!終わりだってばー!ボコられる前に帰ろうよー!」
まとめて吹き飛ばされた大剣を手に取りながら戦線続行を望むブッキと、進まんとする彼女を呼び止める小さな人影が雑木林から現れた。
「終わってないです、むしろここからが本番です。もう遅れは取りません」
「なんや完全にスイッチ入っとるやんけブッキのヤツ」
「あーもうっ、あたし知らないからねー!」
「……おい、マレリーナ逃げたぞリーダー」
「毎度の事だ、構わねぇよ。……しゃあねぇ、腹括るか!前言撤回だ、当たって砕くぞオメーら!!」
「結局やるんかーい。まあ不完全燃焼で終わるよりマシやけど」
どうやらこのまま撤退するつもりだったようだが、ブッキの発言を聞いた途端に潮目が変わり、流れが変わる。PK集団の瞳に明確な攻撃の意思が宿る。
とはいえ状況が変化しようと俺に出来る事は特にないので、依然としてミサさんの背後にいるだけなのだが。
彼らとは因縁も何もないので正直ものすごく気まずい。出来る事なら俺もそそくさと逃げておけばよかったのかもしれない。