見慣れぬ武器があったので
「随分と珍しい武器を使うのね」
「そうですね。ボクもあまりこの武器を使っているプレイヤーを見たことはないんですけど、実際に見たら使ってみたくなったので貰っちゃいました」
「奪った、の間違いではなくて?」
「そうとも言います」
逆手に握る剣を手に馴染ませるように夜風を何度か切り裂いたブッキは地面に這うような低い姿勢を取る。対してミサさんは左脚を前に右脚を後ろに引いて中腰に構える。
直後、月明りを反射したナイフが地表スレスレを滑空して接近する。飛翔物に対してミサさんは踵落としで撃墜。その衝撃で地面に大穴が空き、地表を亀裂が走った。
投擲物の行方に注視していると、ブッキは眼前からいつの間にか姿を消していた。しかし夜風による木々のざわめきに紛れて確かに聞こえる足音が耳に届く。音の方へ視線を向けると、地面に突き刺さった大剣に向かい、地面から抜き取る人影を捉えた。
「えいっ」
そして緩い声と共に投げつけられた大剣が高速で此方へ襲いかかってきた。俺の背丈よりも大きな大剣が視界を覆い尽くす。加えて大剣の影に隠れて彼女の姿も見えない。目眩ましと攻撃を兼ね備えた計算された投擲。
「――手癖の悪い人ね」
しかしミサさんは飛来する大剣の動きを見極め、回避しながら大剣の柄の部分を空中で掴み取ると、その場で華麗なターンを披露し、遠心力を加えて投げ返してみせた。もはや曲芸だ。
「っ!?」
流石に空中で掴んで投げ返されるとは予想していなかったのか、勢いを増して戻ってきた大剣を逆手剣でかろうじて弾くもブッキは大きく吹き飛ばされ、雑木林まで転がっていく。
「なんやあの動き、もはやプレイヤーの皮被ったボスモンスターやろ」
「ってゆーかさっきの動きスキル使ってなくない?ブっちーでああなら今日も無理じゃん」
「……馬鹿正直に単騎で挑むからだろ、まだ指咥えて見てるつもりかよリーダー」
「パーティーリストにまだ名前が表示されてるからブッキはやられてねぇ。……マレリーナはブッキの回復に迎え、サブとカシンは俺と一緒に攻めて時間を稼ぎだ」
「なんや、時間稼ぎっちゅーことは倒しにいかんのかい、日和ったんかボケ」
「あんな動き見せられたら逆立ちしたって勝てねぇ事くらい分かるっつーの。短時間で強くなりすぎてやがった、どうしようもねぇ」
「……ずっと後ろにいる新人みてぇのはどうすんだよ」
「後ろで守られてるってことはその程度の実力ってことだろ。ほっとけ」
離れて攻防を見ていた集団がなにやら会話をした後、小人族のプレイヤーが仲間が吹き飛ばされた雑木林の元へと駆けていくのが見えた。残った3人はそれぞれ武器を構えて距離を詰めてきた。
距離があったので会話の内容は聞き取れなかったが、3人からは敵意はあるが攻め込む気配をあまり感じない。回復魔法を使っていたプレイヤーが救援に向かった様子から、回復させて体勢を建て直そうとしているのだろうか。




