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月輪が見下ろすは喜劇

「だっ、誰がファンだ誰が!!今日という今日はその澄ましたキレイな面ボコボコにしてやるから覚悟しやがれ!!」


「ねーシュトーっち、毎回そのいかにも三下セリフ吐くのそろそろやめない?それ負けフラグ呼び寄せてるだけだと思うんだよねー」


「せやせや、マレリーナの言う通りやでホンマ」


「……いつもの事だろウチのリーダーが三下っぽいのは」


「バカにしてんのかオメーら!!?」


「ボクはそんなリーダー嫌いじゃないですけどね」


「ブッキだけかよ俺の味方は……!」


「え?ボク別にリーダーの事を好きとか味方とか一言も言ってないですけど?」


「んが!?」


「上げて落とす事に定評あるブッキ、流石やわ」


「ブッちーほんとブレないよねー」




「…………ミサさん、もしかして毎回()()()()()見させられてるんですか?」


「そうよ?愉快な方達でしょう?」



突然の奇襲から一変、眼前で繰り広げられるコントの様な会話を見させられて小声で問いかけると、ミサさんは口元を手で隠しながらクスリと笑みを浮かべた。



「んがあああ!!なーに笑ってやがんだゴラァ!!?」



が、それが気に障ったのか、それともイジられて立つ瀬がない事に対する腹癒せか。集団のリーダーを務めるシュトーと呼ばれた男がこちらに怒号を飛ばしてきた。



「あら?喜劇を披露してくれていたのではなくて?」


「コントじゃねーわ!」



憤慨して地団駄を踏みご立腹のシュトーが何かしらのスキルを発動し、爆発的な踏み込みと共に急接近。だがミサさんはその直情的な行動に対して並足を揃えて軽くしゃがみ、背を向けてスキルを唱えた。



「――『廻天鉄山靠』」


「ぐあっ!!?」



一直線に迫ったシュトーへの華麗なカウンターが決まり、身体は車に跳ね飛ばされたボールのように宙を舞った。



「簡単にカウンター決められすぎやろボケリーダー!ほんま仕方ないやっちゃなぁ……マレリーナ!」


「はいはーい『ハイ・キュア』~♪」



小人族である小柄な少女が本を取り出し回復魔法を唱える。放たれた光球は宙を滑空するシュトーの身体を包み込む。



「一撃で8割持っていかれたクソ……!なんで前より大幅に火力上がってやがんだ……!」


「……あの【拳鬼婦人バーサークレディ】が前と同じなわけねぇだろそんな簡単な事もわかんねぇのかよ」


「強敵と戦闘すればするほど経験値を多く貰える仕組みですからねこのゲーム。雑魚狩りばかりしてて腕が鈍ったんじゃないですかリーダー?」


戦闘狂バトルジャンキー相手に真正面から接近するとかいう無策披露すんの恥ずいからホンマやめぇやボケ」


「シュトーっち、感謝の声がきこえなーい」


「ど、どいつもこいつも……!」



イジられキャラでやや人望がなさそうなのが透けて見えるシュトーは味方であるはずの仲間達からの小言に対して針の筵であった。



「やっぱ接近戦は分が悪すぎるねー。サブっちー、どうする?」


「カシンのナイフ投擲が本人狙いじゃなかったとはいえ簡単に叩き落されたから遠距離は無理、接近戦は相手の十八番、どうしようもあらへんわ」


「……本気じゃねぇから当たらなかっただけだ。次は当てる」


「あの、誰も攻めないならボク行ってもいいですか?試したい事があるんですよ」


「おー、ブっちーやる気満々じゃーん?ならバフかけとくねー『ハイ・カレイジャス』ー」


「ありがとうございます。行ってきます」



味方からのバフを授かり、身の丈以上の大剣を背後に携えた中性的な容姿のプレイヤーが自身の得物へと手を伸ばす。その動きに対してミサさんはやや腰を落として半身になり迎撃の姿勢を取る。



「注意なさい、彼女はあの集団で最も優れた戦闘力を備えているわ」


「そうなんですか?」


「前回私に唯一手傷を負わせる事が出来たのが彼女なの。油断していると貴方の首と胴が泣き別れになるわよ?とはいえ、手の届く範囲にいれば指一本触れさせない自信はあるわ。なので決して私の傍を離れないようになさい」


「わ、わかりました」



ミサさんが警戒するということはかなりの強者とされる中性的な容姿のプレイヤーは上半身を捻り、溜めを作るような姿勢で大剣を構えた。

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