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前門の竜、後門の鬼

ドラゴンの動きを警戒しつつ振り向くと、そこに立っていた声の主には見覚えがあった。

差し色で赤いラインの入った黒を基調としたバトルスーツのような防具で全身を包んだ女性プレイヤーは、昼間に大観衆が見守る闘技場で大立ち回りを繰り広げた、確か【拳鬼婦人(バーサークレディ)】と呼ばれていたミサさんだった。



「見ない顔ね。その装いでリペアドランに立ち向かう気概を見せるのは結構だけれど、それは勇敢ではなくただの蛮勇でしてよ?」



一歩一歩、こちらへと淀みのない足取りで近づいてくる彼女に気づいたのは俺だけではなかった。



「……グルル……!」



先程まで上の空であったリペアドランと呼ばれたドラゴンの意識が明確に此方を向いた。否、俺ではなくその先に居る彼女をリペアドランは見据える。完全に板挟みの状態だ。前門の虎、後門の狼ならぬ前門の竜、後門の鬼である。



「そこの貴方、命が惜しければ撤退する事を推奨しますわ。巻き添えになりたくなければ疾く失せなさい」


何かしらのスキルを発動したのか彼女の全身から紅蓮の闘気が溢れ出し、それを見ていたリペアドランも耳を劈くような咆哮で応える。

一触即発の雰囲気が漂っており、このままでは両者の中間にいる俺は衝突に巻き込まれるのは必至である。俺は忠告に従い坑道の脇へと逃避する。



「プレイヤー以外を相手にすると()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。強敵に困らないのは加点要素だけれど」



彼女は腕につけた黄金のバンクルを撫でながら距離を詰めていくと、相対するリペアドランは無数の色が織り交ぜられた二対の大翼を洞窟の天井に触れそうになるほど雄々しく広げてみせる。



「アナタが身に纏う極彩色の鱗と剛毛、頂戴するわ」



歩みを緩めて立ち止まり、リペアドランに対して半身に構えた彼女が小さく何かを呟くと同時に姿が消失し、バキリと地面が破砕する音から数刻遅れて何かが爆発したかのような痛烈な衝突音が洞窟内を反響した。

音の発信源に視線を向けると瞬く間に距離を詰めたミサさんがリペアドランに接触し、虹色に輝く鱗をその手で剥ぎ取っている姿があった。


あまりにも一瞬の出来事で何も見えなかった。スキルにしたって移動速度が速すぎる。何をどうしたら地面にクレーターが出来るレベルの踏み込みが成立するのか。

というかさり気なく素手で鱗を剥ぎ取った?素手で剥ぎ取れるものなのか鱗って?1枚1枚がマンホールの蓋くらいの厚みがあるように見えるが?


闘技場で名付けられたであろうバーサークの異名は伊達ではないと証明するかのように、彼女は攻撃の手を緩めることなく巨大な竜を攻め立てた。


迫り来る鋭利な豪爪を華麗に回避し、振り切った竜の前脚を踵落としで地面に打ち付けバランスを崩す。その隙を逃さず地面を蹴り宙へと跳ねた彼女は竜の背後に飛び乗り、獰猛な笑みを浮かべて水平に右手を薙いだ。

それにより極彩色の竜の体表からハラハラと綺羅びやかな虹の繊維が舞い上がる。彼女はそれを余すことなく左手で掴み取ってみせた。


素手で鱗を剥がされ手刀で体毛を刈り取られて狼狽するリペアドランだが、その体表に外傷は見られない。……いや、よく見ると回復しているのか?鱗が剥がされた箇所からソーマが回復魔法を使用した際に目撃した光と同じ輝きを放っているのが見て取れた。回復魔法?特に何かを発動したようなモーションはなかったし自動回復(リジェネ)系統か?エリクシードを食べていたのが何か関係している?

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