洞窟探索
程よく明るく程よく暗い坑道を進むと開けた空間に到達。道が二手にわかれており、MAPで確認するとどちらもある程度先までいくと更に分岐していた。
だがどちらの道も最終的には行き止まりになっている。洞窟を進むと別の何処かへ繋がっている、というわけではなさそうだ。
クエストに記されていた情報によるとエリクシードは洞窟の深部に自生しているようなので、どっちにしろ坑道の奥底まで進まなければならない。右か左か。まあどっちにしろ見つけるまでは帰れないのでどっちが先でもいいか。右の道にしよう。
右の坑道を選択して更に洞窟の深部へと足を運ぶ。今のところ他のプレイヤーとの遭遇はなく、モンスターも出てこない。足元を見ると小さな虫やらムカデのような生物が這いずり回っているのは見えるが、背景の一部のようなものなのかこちらに襲いかかってくるような気配もない。
洞窟内部を反響する戦闘音やモンスターの声が木霊するようなこともなく、拍子抜けするほど何も起こらず洞窟内部の探索を続けていると、細い小路を発見する。
MAPで確認すると小路の先は行き止まりになってはいたが気になったので進んでみると、突き当りの岩壁から樹の枝のようなものが伸びていた。
枝の先端には人間の拳くらいの大きさがある円形状で水色の果物のようなものが実を結んでいる。数は1つのみ。クエストの詳細に表記されていたエリクシードと同じ色かつ形状であり、情報と合致している。これは幸先が良いぞ。
早速回収しようとエリクシードを掴み枝から毟り取ろうとしたが、エリクシードは樹の枝との結合が強すぎてびくともしない。そんなことある?こういうのって普通はすんなり取れるようなものじゃないのか?
仕方がないのでブロンズソードを手に取り枝に斬りかかると、枝は簡単にサクッと切れた。
「――っと、やべ」
枝から切り離されたエリクシードが手から転がり落ちて地面に落下するのを防ごうと手を伸ばすも間に合わず、エリクシードは地面にベチャッっと潰れるような音と共に着地失敗。おい嫌な予感がするぞ。
潰れて中身が溢れだしたエリクシードを手に取ると『潰れたエリクシード』という名称のアイテムになっていた。採取時に失敗すると駄目なパターンかこれ。
クエストの納品ノルマも『エリクシード0/5個』のまま変化がないので判定としてアウトのようだ。
エリクシードは『エリクサー』と呼ばれる回復アイテムの原料になるので、説明文を読む限りだと潰れた状態であっても一応アイテムとして使用するとプレイヤーの体力と魔力を回復することは出来るらしい。
だが高濃度の魔力が内包されているエリクシードをそのまま服用すると状態異常『魔力中毒』になるらしく、一定時間の魔力上限アップののち、その後24時間魔力が0になるデメリットがあるので無闇な使用は厳禁と注意書きがフレーバーテキストでなされていた。
ふむ、こういう回復アイテムって相手やモンスターにも使えるからなんか悪さ出来そうだな?アンデット系モンスターには回復アイテムや回復魔法が有効だったりするし、クエストの納品には使えないが個人的に取っておくとするか。
潰れたエリクシードをステートウォッチにかざして収納。さて、気を取り直してまた探さねば。
小道を引き返し、俺は更に洞窟の奥底へと脚を踏み入れていく。