冒険者ギルド『レーヴ』
【用語解説】
冒険者ギルド『レーヴ』
ムルフィーム1番街に存在する冒険者ギルド
新規プレイヤーが最初に訪れるべき場所であり、冒険者登録や戦闘訓練を行う事が出来る
他にはムルフィームに済む住民からの採集依頼やムルフィームの外を闊歩するモンスターの討伐依頼、サンセットやルナティスへ移動する住民の護衛依頼など様々なクエストを受注する事が可能
クエスト達成に応じて報酬が支払われる仕組みとなっており、クエストの達成数と達成難易度に応じてランクが上昇する
以下、ランクの意味と次のランクへの昇格条件
Cランク【初心者】実力が乏しい者
昇格条件:Cランクのクエスト10回クリアでBランクに昇格
Bランク【中級者】実力が備わりし者
昇格条件:Bランクのクエスト10回クリアでAランクに昇格
Aランク【上級者】 実力と実績を携えた者
昇格条件:Aランクのクエスト10回クリアと特定条件でSランクに昇格
Sランク 優秀者 一線を画す実力と戦績を収めし者
頭上にプレイヤーネームが表示されている無数の人物とすれ違いながらムルフィームの街中を駆け足気味で進むこと15分、目的地であるムルフィーム1番街に到着。
冒険者ギルド『レーヴ』は1番街の丁度中央の位置にあり、なおかつ最も高い建造物なので遠目からでも一目で視認出来た。
「ギルドまであともう少しってところか」
ギルドへ近づくにつれ、往来を行き交う人の数が目に見えて増えていくのを感じる。
週末の朝でこれなのだから、昼以降は現実世界の繁華街と同じくらい混雑するんじゃないのかという懸念を抱きつつも進める歩を早める。
そうしてすれ違うプレイヤーの動きを見極め、人混みを縫うようにスルスルと駆け抜け更に5分。
やけに街中が広くて、というか広すぎて早くもファストトラベル的な機能が欲しくなるのを感じながらも冒険者ギルドに到着。
チュートリアルは個人で行うものと相場が決まっているので、サクッと終わらせて蒼馬と龍斗を待つことするか。
解放された両開きの大扉からギルド内に歩みを進めると、横一列に並んだカウンターと受付嬢らしき人達と大量のプレイヤー達が目に飛び込んできた。
『LDD』がサービスを開始してからはや二ヶ月。新規プレイヤーは昼夜を問わず増加の一途を辿っているらしく、新規プレイヤーが集うギルドの中はさながら満員電車の如く人でごった返していた。
とはいえログインしているプレイヤーすべてをゲーム上で視認出来るという訳ではなく、原理はよく知らないが今の俺の視界に収まるプレイヤー達はその一部らしい。
まあ数百万単位の人間が同時に遊ぶゲームで同じ座標に大量のプレイヤーが表示されようものなら、処理落ちしてゲームどころじゃなくなるだろうからな。
とりあえず俺も先人たちに倣い列に並び待つこと5分、ようやく順番が回ってくる。
「冒険者ギルド『レーヴ』へようこそ。私クーリアがご要件を承ります」
前髪は目にかからないよう斜め一文字に切り揃えら、後ろ髪は肩くらいまで伸びた黒髪で猫耳の受付嬢クーリアが冷淡な声音で会釈をする。つられて俺も軽く会釈。
見た目は人族だけど猫耳が生えてるってことは従機士かこの人。
NPCなんだろうけど、発声に淀みや機械的なぶつ切り感もなく非常に流暢に喋るものだから一瞬プレイヤーかと錯覚してしまった。
「えっと、こんにちは。冒険者登録を行いたいんですけど」
「冒険者登録ですね、畏まりました。ではこちらのスキャナーに貴方様の『ステートウォッチ』をかざしてください」
クーリアは引出しの中から謎の四角い端末を取り出し目の前に設置した。
見た目は現実世界のレジに置いてあるタッチ決済時に使用する読み取り機のような感じだ。
「『ステートウォッチ』?」
聞き慣れない単語に思わず聞き返す。ステートなら【状態】って意味でウォッチって事は──
「貴方様の左手首に装着されているそちらです」
「ああ、これか」
──推測の途中で答え合わせ完了。
つい先刻と同じ言葉を口にしながらスマートウォッチのような端末、改めステートウォッチを言われた通りスキャナーにかざすと、軽快な電子音と共に端末が緑色に発光した。
「ありがとうございます。これで冒険者登録は完了です」
「早っ」
「左様でございますか」
正味1分も掛かってないぞ?なんかもっとこう、水晶みたいなのに手をかざして能力判定とかそういうのやるもんだと勝手に思ってたけど、そもそもこれにステータスが記録されてるんだから同期するだけでいいのか。
……うん、やっぱオーバーテクノロジーすぎるなこの辺り。ログアウトしたら考察系のサイト読み漁るの確定。中世的な世界観と乖離しすぎてる謎が気になって仕方ない。
「シキ様、他にご要件はございますか?」
当初の目的であった冒険者登録が呆気なく完遂したので色々と思考を巡らせていたら、両手を重ねて待機姿勢のクーリアから尋ねられる。
後ろから「終わったなら早くどけよ」という圧の視線を感じたので、釈然としない気分になりつつも一つだけ質問することにした。
「戦闘訓練的なのってギルドで出来ますか?」
「可能です。戦闘訓練はこちらから向かって右奥の通路を進んで頂いて、そちらに担当者がおりますので先程冒険者登録して頂いたステートウォッチをご提示願います」
クーリアが指し示す方角には同じく冒険者登録を済ませた他のプレイヤーがゾロゾロと移動していた。
亜人族は左奥の通路、機人族は中央の通路を通っているのでどうやら種族事に戦闘訓練は異なるようだ。
「わかりました。ありがとうございますクーリアさん」
「礼には及びません。シキ様の御活躍をお祈り申し上げます」
互いに会釈をしてカウンターから離れて戦闘訓練が行われている場所へと向かう。
さて、一体何と戦闘訓練させられるのやら。
期待と不安が胸中で渦巻きつつも僅かな高揚感を感じながら、俺も人々の流れに乗るのだった。
冒険者ギルド『レーヴ』受付嬢の小話
ギルドで冒険者登録やクエストの依頼を管理する受付嬢は文字通り多数存在しますが、このギルドをはじめて訪れた際に冒険者登録を行った受付嬢が今後プレイヤーの専属になります。
なので今後シキがギルドを訪れた際、クエストの対応するのはクーリアということです。
ちなみにNPCなので内部的に好感度パラメータが存在します。
横柄な態度や雑な反応をしたプレイヤーは受付嬢の好感度が低下し、クエスト報酬数が最低値で固定されるようになります。
逆に好感度ゲージを高める事で報酬が増えます。
会釈、挨拶、名前呼び。些細な事でも大事な事