次はどこへ行こうか
「大鎌以外にも小盾、剣、大槌に変形するのか。LDDで実装されているすべての武器種に変形が可能……?だとすると武器を持ち替えることなく戦闘中に様々な武器を扱えることになるが、スキルを一切使用していないのが気になったな……。変形機能そのものがスキルなのかそれとも実力を隠す為にあえてスキルを使用しなかったのか……」
「おーいソーマ、試合終わったぞ」
「――ハッ!? ……すまん、熱中しすぎていた」
「試合中ずーっとブツブツと早口で言葉を回してよく飽きなかったわねアンタ……」
考察思考領域から帰還したソーマを呆れ顔で流し見るアセリアさん。
まあある種の持病というか抑えきれない衝動なので、とりあえず生暖かい目で見守ってあげてくださいと心の中で思う。
『――これにて正午台の部は閉幕となります!次の夕刻の部の予選開始時刻は17時からとなりますので、参加をご希望の冒険者様は16時30分までに闘技者専用の入場口までお集まり下さいませ!以上、実況解説のキャメラがお送りしました!!』
『結局蓋を開ければ前評判通り【拳鬼婦人】の圧勝だったなぁ。【鉄仮面】はなんか動きがチグハグだし【槍兵紳士】も積極的に攻めようとはしてなかったし』
『【拳鬼婦人】も特に新スキルは使ってなかったしなぁ。月末のジェミニ杯に向けて奥の手は温存してるんだろ多分、知らんけど』
『俺の5000G……』
『現実換算で50円じゃねぇかそれくらい気にすんなよ』
『さぁてと、たんまり稼がせてもらったし、このあとはカジノで倍プッシュの時間だぜ』
『それフラグだろお前、前もそんな事言ってマイナスになってなかったか?』
『夕刻の部どうするー?』
『んー、SNSで参加表明してた【拳鬼婦人】の戦闘見たらなんか満足しちゃったから夕刻の部はいいかなぁ。それより新しい武器作るのに素材足りないから手伝ってくれない?』
試合が終わり、終焉を告げるアナウンスと共に観客席にいた他のプレイヤー達はみなそれぞれ会話をしながら出口へと向かっていった。
ステージでは場外に弾き飛ばされた2名の選手と勝者であるミサ選手が何か会話をしている様子が見て取れる。が、流石に聞き取れる位置ではないので内容まではわからない。
「試合終わったけどこのあとどうする?」
「そもそも今何時?たしか17時までには退店してないとまずいんだっけ?」
「時間はだいたい14時過ぎくらいだ」
「じゃああと3時間は余裕あるか。とは言っても時間ピッタシは延長料金とかかかる可能性があるし、余裕をもって30分前にはログアウト出来るようにはしておきたいな」
「だったらまた周囲の人達が言ってたんだけどさ!カジノ!カジノ行きたい!!現実のIRはオレら未成年だから入れないけどゲーム内なら問題ないじゃん!?」
「俺ちょっとお前の将来が心配になってきた……せめて大学は卒業しような?」
「?なんで急に大学の話になるんだ?」
「こいつの将来は置いておくとして、まあそう悪くはない判断かもしれん。クエストをやるにもギルドに戻る必要があるし時間のロスもある。ならいっそのことカジノで丁度いい時間まで過ごせばいいだろう」
「ならカジノ決定か!?」
「俺は特に行きたい場所はないからシキ次第だ」
「俺の要望は通ってるから断る理由もないしな……じゃあカジノでいいんじゃね?」
「だ、そうだ」
「おっしゃ!」
「………………また走るの?」
「いや、カジノのある7番街はそこまで距離は離れていないから走る必要はない。無理せずゆっくり行こう」
ソーマの受け答えを聞いてほっと胸を撫で下ろすアセリアさん。
そりゃさっき熱暴走したばかりだから二の舞を演じるのは御免被りたいよなと思うのであった。
……………………あれ?なんか忘れている気がするような……?




