三つ巴の混戦
開戦の狼煙が上がり地響きのような歓声を一身に浴びた戦士達は互いに睨み合う。
三つ巴という形式上、片方のプレイヤーの攻撃に集中すれば意識外からもう片方のプレイヤーから繰り出される攻撃を捌く事が困難となる為、取るべきは先の先ではなく後の先である。
「――――まあ、随分と隙だらけですこと」
「ッ!」
『開始早々先制パンチを繰り出したのはミサ選手!!一瞬で間合いを詰めてジレン選手へ強襲!!初撃はヒット!しかし二撃目はジレン選手はこれを槍で防御!!』
しかしそれはあくまで一般的な話だ。
真の強者であれば攻撃を仕掛ける機会を自分好みに決定し、攻撃のリズムを自ら生み出す事が出来る。
ミサが繰り出した初撃は的確に胴を捉えるも続けざまに放った攻撃はジレンが構えた槍が割り込み不発に終わる。
そしてその隙間を縫うように突き出されたウルスの刺剣が彼女の背後へと襲い掛かった。
「見えてましてよ?」
「っ!?」
『ミサ選手の動きに釣り出されるようにウルス選手が迫るも、ミサ選手はこれを即座の後ろ蹴りで一蹴!彼女の背中にはもう1つ目がついているのでしょうかぁ!?』
刺剣で刺し貫く為に伸ばした腕へ、地から天に昇る脚がウルスの腕に直撃して金属音が反響する。
衝突した箇所は篭手であり、ウルスに大きなダメージはないが、完全な死角からの一撃を軽々と防がれてしまった彼女の動揺は計り知れない。
「完全に死角取ったと思ったとに……!?」
「貴女、控室の時もそうだったけれど狼狽えると方言が出るのね?」
「戦闘中にお喋りとは、随分と余裕がおありのようで」
『間髪入れずにジレン選手の槍がミサ選手に迫る――!!が、これをサイドステップで回避!!一度距離を取りますミサ選手!!』
「そうね、あくまで今日は本番前の肩慣らしですもの」
「肩慣らし、ですか。随分と我々は低く見られているようで」
「あら、貴方もそうでなくて?予選では変形機構は使用していなかったようだけれど、故障でもしていて?」
「予選では変形機構を使うまでもない相手だった、というだけですよ。お望みとあれば、お披露目しましょうか。――――『形状変化【大鎌】』」
ジレンが手にする黒の槍が所有者の声に呼応しその姿を変えた。
持ち手の部分が伸び、穂先から半月を描くように漆黒の刃が生成される。
『おっとここでジレン選手の槍が形状を変える!!全てを刺し穿つ槍が万物を刈り取る漆黒の大鎌へと変貌です!!』
「接近戦に持ち込まれると分が悪そうなので、ミドルレンジから攻めさせてもらいます」




