血の気が多くないと生き残れない魔境
「待たせたな、エーシと合流したのでこれより地上に帰還する。エーシ、貴君はこの地下街はどこから降りた?」
こちらへ戻ってきたケーラは背後にいるエーシへと問い掛ける。尋ねられたエーシはというと、軽く小首を傾げて眉間にシワを寄せて渋い顔。……うーん、これ暴れて覚えてないとかそういうパターンでは?
「…………」
「エーシ?」
「……す、少し待ってくれないか?いま!いま思い出す!!」
どうやら予想的中のようで、エーシは自身の額を握り締めた拳の親指部分でトントンと叩いて記憶を掘り起こそうとする。衝撃与えて大丈夫だろうか。逆にもっと忘れやしないか?
「似たような建物が立ち並ぶので記憶違いをしやすい場所ではあるが、流石にそれはどうなのだ貴君……」
「自分がどこから来たのか覚えてないとかよっぽどじゃないかい?」
呆れるケーラとレオレクスの言葉を受けて、バツが悪そうな表情を浮かべるエーシ。まあケーラが少しフォローしているように、地下街の建物は似たような形状の造りが多いのでわからなくなるのも無理はない。正直なところ、単独で俺が地下街に来たら迷うと思う。今はガイドを兼ねるケーラのおかげで問題はないが、1人で行動しろと言われたら正直自信がない。
「連れ去られた隊員の捜索に必死だった――というのは言い訳にしかならないな……!!返す言葉もない……!!…………うん?ところで君は誰だ!?」
「ワケあって行動を共にしている地上の一般人だ、貴君は気にしなくていい。それよりもどこから地下街へ降りたのかを早く思い出してくれ。ムルフィームの何番街から降りたかくらいは覚えているだろう?」
「ああ!それなら思い出せる!!2番街の『ル・ベタクフラタ』の裏手にある倉庫からだ!!」
「『ル・ベタクフラタ』であれば……あちらだな。あの辺りは確かどこの組織も支配していないエリアだったと記憶している。とはいえ、地下街の住人から絡まれる可能性は十分にある。急いで向かうとしよう」
それからケーラが先頭に立ち、エーシが降りてきたとされる通路がある場所へと向かう。巨人族と小人族達の騒ぎがあった場所から離れていくにつれて、進みゆく街中は再び最低な活気を取り戻していく。
「――ってぇなァ!?どーこに目ェつけて歩いとんじゃいおどりゃァ!?」
「ああん!?てめぇがどこ見て歩いてんじゃボケ!!その薄汚え三段腹で足元が見えてねぇからだろうが!!ボアみたいな体型しやがって切り落としてやろうか!?」
言葉を選ぶならかなりふくよかな体型でスキンヘッドの男と、腰に剣を差した白いモジャモジャのヒゲを伸ばしたドワーフの男が往来のド真ん中で物凄い剣幕で怒鳴り合っていた。喧騒が収まったと思ったらすぐこれである。血の気が多い輩が多すぎるだろ。




