誠意の見せすぎは逆効果
「おいおいおい、150万Gだって?桁が1つ間違ってるよアンタ!そいつは地上での相場だろう?下ならそんな額じゃあ外壁ひとつ直せやしないよ!」
「……む」
地下街の相場がどの程度なのかを知らないので、フェニアの発言が嘘かホントかわからないが、フィクション作品で見るような闇市とか闇オークションはだいたい値段が法外でぶっとんでいる。あちこち建物の一部が壊れていてもそのままなのは、修繕費がかかりすぎるからなのかもしれない。
だったらそんな気軽に挨拶するような感覚で喧嘩して、建築物をぶち壊すレベルで暴れるなって話ではあるが、まあ無法地帯にモラルや常識を求めるのもおかしな話か。NPCだからそういう風に動くようにアルゴリズムで指定されているだろうし。
「そうか!では1500万G……は生憎持ち合わせがないので『サフィアモント宝晶』!!末端価格で2000万Gはする鉱石でどうだろうか!?手持ちはないが、謝罪の気持ちも込めてこれで足りるだろうか!!」
エーシが背後からゴソゴソと布の袋に包まれたモノを取り出し包を開くと、どこか気品の漂う深い青い色のピンポン玉くらいのサイズの宝石が現れた。カッティング加工の施されていない、いわゆる原石の状態ではあるが、宝石に詳しくない俺でもひと目見ただけで格が違うというのがわかる。
「サ、『サフィアモント宝晶』!?アンタそれ、世界六大宝晶の内の1つだよ!!?なんだってそんなモンをアンタが持ち歩いてんだい!!?」
エーシが取り出した宝石を見て目を見開いて驚くフェニア。かなりの驚きっぷりからなんかこの世界でもすごい宝石のようだ。
「我が家は母が宝石商、父が採掘現場の最高責任者だからだが、何か不都合でもあっただろうか?」
「いやアタイはそういう事を聞いてるんじゃないんだが!?十分過ぎるどころか過剰すぎるよバカなんじゃないのかいアンタ!?」
「そ、そうか。『サフィアモント宝晶』ではお気に召されないか。では『ラトナラジュ宝晶』では』
「それも世界六大宝晶のひとつだねぇ!?……ああもう冗談さ!!ジョーダン!!壊れた建物は気にしなくて結構!!どうせ直した所ですぐ壊れるのがこの街さ!!こまめに直すのは金を捨てたい変人だけだよ!」
「しかし」
「しかしもなにもないよ!!そもそも世界六大宝晶をポンポン取り出せるようなヤツからせしめるなんて、後が怖くてやってらんないよ!!ほらわかったらさっさと地上に帰んな!!」
どうやらフェニアは足元を見て吹っ掛けようとしたらしいが、エーシの天然無自覚金持ちムーブがそんな気を消し去ったらしい。現実に置き換えるならポケットから2000万円の宝石を小銭感覚で取り出す相手に吹っ掛けようとしたようなモンか。
……うん、それは確かに恐怖体験だな。それだけの額の金を動かせる個人相手とか絶対したくない。間違いなくあとで消される。
【世界六大宝晶】
その美しさと価値が認められた6つの宝石を指す総称。
『アダマス宝晶』『サフィアモント宝晶』
『ラトナラジュ宝晶』『スマラカタ宝晶』
『コスモティクス宝晶』『オブシディアン宝晶』
『アダマス宝晶』『サフィアモント宝晶』はルナティスの大陸で産出される
『ラトナラジュ宝晶』『スマラカタ宝晶』はサンセットの大陸で産出される
『コスモティクス宝晶』『オブシディアン宝晶』は産出地が不明ではあるが、コスモティクス宝晶は星を閉じ込めたような幻想的な美しさを、オブシディアン宝晶は全てを飲み込む常闇のような恐ろしさと軽い衝撃で砕けてしまう儚い脆さが同居しているのを評価した各大陸の王族に評価されて列挙されている。




