夜道に気をつけて
「さてと、そしたらあとはエーシとそこにいる2人、……いや3人だ。姿が見えない理由はとんとサッパリだが、傍観しているだけで手は出さなかった事に免じで、アタイも手出しはしないでやるから観念して姿を見せな?」
「ッ!?」
外套の効果で姿を消して見えていない筈にも関わらず、フェニアが俺達に指を向けて呼び掛けた事実に思わず息を呑む。どういう事だ?外套を纏っていれば認識されないって話じゃなかったのか?
小人族と巨人族が乱戦を繰り広げていた更に先での俺達の会話に気がついたのか、それとも俺達が気がついていないなんらかの理由で存在が露見したのか。人数を2人から3人に訂正した辺り、俺とレオレクスはモロバレしている?そういえばケーラの気配が空気に解けてるレベルで薄くなってたけども。
「……フェニア姉様?そこに誰かいるのですか?」
折れた刀身の先を拾いながらメニアがフェニアへと問い掛ける。どうも俺達の存在を把握しているのはフェニアだけらしい。周囲の巨人族やメニアは気がついていない、となるとフェニアの気配探知能力が異様に高いだけなのだろう。
そういえばさっき【片翼】も俺達がいる方角を見たんだよな。うーん?レベルが高い存在には効果が薄いのだろうか?強敵には装備の効果が通じないとかはまあゲームならよくある話ではあるが。
「なぁに、女のカンってやつさ。アンタも女も磨けば出来るようになるよ、なんてったってアタイの自慢の妹だからね。ま、ちょいと混み合った話になりそうな予感がするから、アンタ達はアジトに戻ってしっかり身体を休めな」
「ハイ、承知しましたフェニア姉様。では我ら、先にアジトへと帰還致します」
ペコリとフェニアに向けて礼儀正しくお辞儀をしたメニアは、倒れていた巨人族の部下達を引き連れて俺達がいる方角へと歩き始める。どうやら『ティタンズ』のアジトとやらは現在俺達が居る場所の先にあるようだ。このまま道の真ん中に居たら巨人族の行進に巻き込まれてしまうので、慌てて道の端へと寄った。
「……どうもあの女巨人に存在バレてるみたいだけど、どうするんだい?」
巨人の行列が通り過ぎていくのを眺めていると、レオレクスが声のトーンを抑えめにして疑問を呈する。
「……『黒隠糸』の認識阻害が通じない以上、姿を隠し続けるのは不信感を募らせる行為でしかない。ひとまず先程のやり取りを見て、彼女は自身の言葉に嘘をつかないタイプなのは間違いないだろう」
「……まあ確かに。裏表とか一切なさそうな感じはするね」
「……なので『ティタンズ』が去ったら私だけが『黒隠糸』を解除して対面する。貴君らはそのままでいい。我々治安維持部隊の隊長格は全員素性が割れているから把握されても対して支障はないが、貴君らはあくまで臨時で同行している一般市民だ。素顔を晒す必要はない」
「……ふぅん?地下街の住人に顔バレすると何か問題でもあるみたいな言い方するじゃないか」
「……逆恨みによる襲撃を防ぐ為だ。地下街の住人に顔を覚えられたら夜道や地上の裏通りは一人では歩けなくなると思った方がいい。部下へ支給される装備にフルフェイスのヘルメットが含まれるのも、顔を把握されてオフの日に襲撃されないようにという理由がある」
あ、ちゃんと理由あったんだあのフルフェイスのヘルメット。ただの面白探照灯ギミック搭載した頭装備じゃなかったのか。




