黒紅金剛晶
「ほぉー、こいつはまた随分と立派な装備を身に着けてるもんだ。『黒紅金剛晶』で出来た鎧かい!!世界一硬い鉱石と言われている『金剛晶』には『蒼』と『黒紅』の名を冠する超希少なモノがあるって聞いちゃいたが、実物を拝むのははじめてだよ!!」
「その世界一硬い鉱石を殴りつけて無傷な貴様にはつくづく呆れるがな」
「ハハッ!!アタイの鍛え方はそんじょそこらのヤツとは違うからねぇ!!」
「……フン。とりあえずこれで一撃は一撃だ。もう貴様に構う義理も意味もない。わたしは領地に戻らせてもらう」
「アタイの全力の拳でかち割れなかったのはちょいと不満が残るが、まあ約束だから仕方ないね!お愉しみは今後にとっておこうかねぇ!次に顔を突き合わせた時がお互いにとっての最後さ!それまでにアタイら以外にやられないようにするこったね!!」
「……、精々息巻いているがいい。最後に全てを手にするのはこのわたしだ」
そう捨て台詞を残し、女は金属の翼で地面を叩きつけて砂埃を巻き上げて視界を遮る。そして砂埃が晴れた頃にはもう女の姿はなく、破れた白いローブの切れ端が地面に散らばっているだけとなった。
「…………やれやれ、まるで歩く爆弾みたいなヤツだねシファールのヤツは。さて、メニアー、アンタ生きてるかーい?」
「…………は、ハイ、フェニア姉様。刀身が折れましたが、な、なんとか」
フェニアの問いかけに対して地面に突っ伏していたメニアがゆっくりと身体を起こし、折れた剣を杖代わりにしてゆっくりと立ち上がる。
「うんうん、そいつは重畳。ヴィヒテルは……うーん、当たりどころが悪かったようだね、死んだかい?」
一方蹴り飛ばされてスーツが土埃塗れになっていた小人族の男は、大の字で仰向けになり上を仰いでいた。
「………………勝、手にッ!人の事を殺すんじゃねェぞクソが!!!!」
わざとらしいフェニアの呼びかけに対してブチギレながら地面から飛び起きた男は、地団駄を踏みながら怒りの矛先を彼女へと向ける。
「おお、生きてた!見かけによらずタフだねぇアンタ!!」
「すっとぼけやがって!! 死んでない事をわかった上でワザと言ってんだろテメェ!!」
「おーおー、そんだけキレられるなら問題なさそうだね、そしたらアンタも部下連れてさっさと帰りな。今夜はお互いなにもなかった、いいね?」
「…………チッ!あとで菓子折りでも送り届けてやるよクソが!それで貸し借りナシだからな!!」
「菓子だけに、かい?ハハハ!!なんだいアンタ、そんなシャレも言えるのかい!!」
「…………あ?……ッ!?バッ、ちがッ!……いや違わねぇケド!!別にそういう意味で言ったんじゃ…………あ~~~~~クソがッッ!!!!後遺症出てきてくたばれボケが!!――おい帰るぞテメェら!!いつまでノビてやがんだ起きねぇか!!」
「あだっ!?」
「ちょっ!ヴィヒテルの兄貴!?や、やめてくだせぇ!!と、トドメになっちまいますよぉ!?」
「弱音吐いてんじゃねぇ雑魚が!!オレ含めてテメェら全員鍛え直しだ!!帰ったら覚悟しやがれ!?」
「ひっ、ヒィ~~~~!?」
ちょっとしたコントのようなやり取りをしつつ、小人族の部下を引き連れてヴィヒテルはこの場から立ち去っていった。なんだかしらないが、戦闘に発展することなく各自解散の流れになっている。正直、ロクに準備も出来ぬまま耐久オバケとキレたナイフみたいな存在相手に戦うハメにならなくてホッとしている。現状だと、逆立ちしたって勝てそうにないからな。




