Yes, My Lord
「寝首を掻くなどという蛮行!!たとえ俺に嫌がらせをしてきた者の仲間であったとしても、到底見過ごすわけにはいかない!!!!――――『カムバック』!!」
『Yes, My Lord』
エーシの叫び声に反応を示したのは、なんと巨人族を襲った剣を弾いて軌道を変えてみせた槍であった。
地面に転がった槍は流暢な英語を発声した直後、石突の部分から青白い炎が噴射して勢い良く飛び出し、エーシの手元へと戻っていく。なんだその面白ギミック!?叩いたら探照灯の出てくるヘルメットといい、電光剣といい、やたらギミック色の強い武器を使うんだな治安維持部隊。
「ヒュ~。やるじゃないかアンタ!アタイの大事な仲間をよく守った!!気に入ったからアンタの蛮行、今日は目を瞑ってやろうじゃないか!!」
「そうか!!それは恩に着る!!ところで蛮行と呼ばれる行為に身に覚えがないのだが!!!?」
飛んできた槍を掴み直したエーシが大声でフェニアへ言葉を返す。どうも大声で暴れまわるという行動に対して、他人に迷惑をかけているという認識がない模様。おそらくエーシの認識では『捜索活動では行方不明者に対して大声で呼びかけるのは当然の行為であり、迷惑行為には当て嵌まらない』みたいな考えなんだろう。
あと完全に推測になるが、捜索活動中にいきなり襲われたので正当防衛として迎撃したから問題行動ではない、みたいな認識になってそう。うーん、始末書増えそうですね。まあ俺には関係ない話だが。
「――ああ、貴様だ。貴様の声だ。非常に耳障りで不愉快極まりない咆哮を撒き散らしていたのは、貴様だな?」
「ッ!! そういう君は白いローブに金属の翼……【片翼】の特徴と一致する!!ようやく姿を見せたな悪名高い【片翼】!!!!連れ去った部下はどこにいる!?」
「連れ去った部下?……。……ああ、どうやらわたしの寝ている間に好き放題してくれたようだな。――なに?尾行されていたから仕方がなかった?戯け。ならなぜその直後に消さずに連れ去る手間を掛けた愚図め」
突如、女は一人でボソボソと言葉を紡ぎ始める。なんらかの通信装置で会話をしているのだろうか?
「……は?しかも連行途中で逃げられた、だと?貴様はとんだ愚図で愚鈍で大間抜けだな。もういい、貴様は用済みだ。――――――『疾く、爆ぜよ』」
―――――――ドガァァァァァァァン!!
「ッ!?」
「なんだッ!?」
ここより少し離れた建物から隕石でも落下したかのような爆発音が炸裂し、まるで花火のように上空へと火の玉が舞い上がると、上空で再びけたたましい轟音が四方八方へと拡散した。
「おー!?キレーな花火だねぇ!!」
花火の概念あるんだ、という感想はともかく、真っ白な光の球を見たフェニアがケラケラと笑いながら空を見上げている。上空で飛び散った物体はかなりの高温による爆発だったのか、燃え滓となってまるで粉雪のようにはらはらと地面に舞い降ちていく。いや、花火じゃなくてこれ、会話から察するに人間爆弾的なヤツじゃねーかな……。




