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虚空より来たりしは

「繰り出す度に威力が増してく拳のようだねぇ!今のはなかなか悪くなかった!そぉら、まだ次があるんだろう!?出し惜しみせずにみせてみな!!」


「ッ!クソアマがぁ……!」



迎撃したフェニアの額には傷一つついておらずピンピンとしていた。逆に予期せぬ行動のせいで打ちどころが悪かったのか、男は右手首を抑えて地面に片膝をついてフェニアを睨み上げる。



「――――どぉぉぉぉぉぉりゃあああああああああああ!!『(だい)(せん)(ぷう)(なぎ)』ィィィィィィ!!!」



「くっ――!?」


直後、騒々しいエーシの雄叫びと共に暴風が吹き荒れた。力任せに振り回されたエーシの握り締める槍を起点に発生する風が、凄まじい勢いで空気を押し出していく。



「――――おっと、大丈夫かいメニア?」


「――っ、ハイ。ありがとうございますフェニア姉様」



エーシを中心に四方八方に弾けた風に運ばれたメニアをフェニアが片手で軽々と抱きとめる。



「……油断しました。あの男、中々やるようです」


「ほぅ?たしか()のモンだったね?ふむ……どぉれ、ならアタイが一肌脱いでやろうじゃないか。メニアはアタイの代わりにそのチビッコの相手を頼むよ」


「承知しました」


「待てやゴラ!!誰がチビッコだこのクソアマ!!」


「口を慎みなさいヴィヒテル。アナタの相手は、この私が引き――――ッッッ!!?」



――――それは、何の前触れもなく訪れた襲撃だった。



甲高い金属の衝突音が周囲に響き渡るのと、メニアが苦悶の表情を浮かべるのはほぼ同時であった。そしてその直後、メニアの握り締めていた剣の刀身が真っ二つにへし折れ、力なく地面に倒れた。



「ッ!?――――ぐはっ!?」



地面に片膝をついていた男が何者かに蹴り飛ばされて地面を転がる。いや、転がったのは彼だけではなかった。気がつけばいつの間にか周囲にいた小人族と巨人族が全て地面に倒れ伏していた。



「うん?――――ッ!っとぉ!!?この()()()()()()、アンタだね()()()()()



何かに気が付き回避運動を取ったフェニアが誰もいないはずの虚空に向かって語りかける。するとその虚空から全身真っ白なローブで包み込み、背中に金属の翼を携えた女が突如現れた。




「わたしの眠りを妨げる愚物共め。一体全体なんなのだこの騒動は。フェニア、貴様が原因か?」

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