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破刻

外套を羽織っているおかげで周囲のNPC達から存在は気付かれていない。事前に即興で練った策である水蒸気の煙幕を出すには問題ないタイミングではあるが、エーシ達が睨み合っている場所は少々離れている。



「あの奥にいる槍使いがエーシかな。それと巨人族がいるみたいだけど、あれは?」


「巨人族のみで構成された『ティタンズ』の女首領フェニアと副首領メニアだ。白髪がフェニア、銀髪の方がメニアだ。フェニアはデタラメな耐久力と無尽蔵のスタミナが特徴だ。フェニアは二振りの剣を巧みに操る技量を持ち合わせているとの報告を受けている」


「ふぅん、懐に潜り込めばそれなりに攻める手段は色々とありそうだけど、銀髪の方があの長い剣を振り回してくることを考えると、接近戦に持ち込むのは少し厳しいかもね。白髪の方は耐久型かぁ、消耗を考えるとあんまり相手したくないタイプだ」



ケーラから2人の特徴を聞き、顎に右手を当てて考え込むレオレクス。そうなんだよな、普通戦闘に発展しそうな状況下であれば、即座にこういう思考に至らなければならないのである。対峙したキャラ造形が好みのタイプだからといって容姿をつぶさに凝視するような事はあってはならない。反省しろ俺。



「――――『破刻(ハコク)』!!」


「――――軽いねぇ!!ちゃんと肉食ってんのかいヴィヒテル!!アタイを潰したいならもっとたらふくメシを喰って身体をもう二周りはデカくしなきゃねぇ!!」



脳内で反省会を開いていると、近くに雷でも落ちたのかと思う程の凄まじい轟音が響いて現実に引き戻される。音の発信源に視線を向けると、小人族の男が大地を蹴って繰り出した右拳をフェニアが左手の指先2本だけで受け止めていた。



「――――精々ほざいてろ!!『破刻(ハコク)弐次(ニジ)』!!』



フェニアのあからさまな煽りに対して激情する男が更に吼える。受け止められた右拳とは逆の左拳がフェニアに襲い掛かる。フェニアはその攻撃に対して右手を差し出すが、その手は突き出された男の拳とぶつかると自身の後ろへと大きく弾き返されてしまう。



「―――――へぇ!!案外やるじゃないか!!」


「――ッ!」



弾かれた右手を見てフェニアは即座に小人族の男を蹴り返した。男は咄嗟に防御の姿勢を取るが、小人族と巨人族という種族間で最も大きな体格差の影響もあってかかなり後方へと下がっていく。



「ええい!!邪魔をしないでもらえるだろうか!!」


「……アナタは、騒々しいわね」



その一方でエーシに対して腰の剣を引き抜き、攻勢に出るメニア。深い濃紺と薄く発光する水色の刻印が施された二振りの剣が宙を舞い、エーシへと襲い掛かる。



「――――むぅ!?い、いきなり何をする!?」


「それは、我々の台詞よ。地下街で暴動が起こるのは、日常茶飯事。けれどアナタは、地上の治安維持部隊の者。それが我が物顔で暴れるのを見過ごすのは、到底看過出来るものではない」



現実に置き換えるなら警察がスラム街で住民相手に暴れるようなものだろうか。そりゃごもっともな意見ではある。


先に警察に手を出したのはスラム街の住民ではあるが、それとは関わりのない住民相手から苦情が出るのは当然といえば当然だ。


【片翼】の部下による襲撃があっただけで、『ティタンズ』とやらは手を出してはいないのだから。いや過去に手を出している可能性は否定出来ないが、まあ今回の一件には絡んでいないとは思われる。

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