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弱体化のスペシャリスト達

「この地下街はヴィヒテルを筆頭に地上での常識が通じない者が複数確認されている。魔力を一切持たぬ者、常世の魂を使役する禁忌の魔法を操る者、触れた者を溶かしてしまう者と様々だ。死してなお蘇る睡醒者のように、理の外に連なる者達が跋扈する場所だ。対峙する際は頭の片隅に入れておくといい」


「要はびっくり人間の玉手箱みたいな場所って事ね。初見殺しに注意、って感じかい?ま、あれこれ考えた所で実際に戦ってみないことにはなんとも言えないかな。実力はそれなりにあると自負しているし、精々遅れを取らないようにするさ」


「ああ、是非そうしてくれ給え」



それからしばらく進むと、争いの声が徐々に大きくなってきた。建物が崩落する破壊音、金属製の武器がぶつかり合う音、怒号に罵声の飛び交う密度が高まっていく。



「――好き勝手暴れてんじゃねェぞ三下がァ!!ここを何処だと思ってやがる!?」


「そんな事は知らん!!俺はただ奪われた仲間を取り戻しにきただけだ!!うおおおおおお!!返事をしてくれ!!どこだ!?どこにいるんだ!!?」


「――チッ!クソが、ウチのシマで暴れやが――ッ!!――――()()()!!邪魔すんじゃねェ!!」


「邪魔なのは、アナタよ」


「そうさ!ここはアンタらのシマでもないんだよヴィヒテル!!アタイら『ティタンズ』の縄張りさ!!チビはさっさと家に帰ってママの乳でも吸ってな!!大きくなれないよ!!」


「だぁぁれが未熟児だこのクソったれが!!()()()()このクソアマ、いいぜ上等だ!!テメー諸共磨り潰してミンチにしてやる!!大掃除の時間だぜェ!!」



視界に飛び込んできたのは、ライダースーツのようにピッチした黒い衣装に身を包み、槍を振り回しながら暴れる赤髪の男であった。それに対峙するのは先程、周囲のNPCから恐れられていた小人族の男だ。


その2人の戦闘に対してちょっかいを出したのが、巨人族の女が2人。一人は透き通るような銀髪碧眼で左目が隠れた髪型のいわゆるメカクレ。解いたら腰まで届きそうな長髪を後ろで一房にまとめ上げ、腰には大人1人分の長さはあろうかという巨大な剣を二振り下げている。パット見の印象で女騎士、といった感じの印象を受ける。


もう片方はこんがりと焼けた小麦色の肌をした白髪緑眼で、無造作に外ハネした長髪が目を引く野性味溢れる女巨人。大きく胸元を露出したラフな服装に、腰に大きくスリットの入ったパンツスタイルに自然と目が吸い寄せられそうになるのを必死に抗う。角度がエグすぎるんだけどレーティング大丈夫か?


いや心配するのはそこではなく、と頭をブンブンと振って邪念を振り払う。女の巨人族と相対するとすぐこれだ。視界から取得しようとする情報の密度が無意識下に上昇するのは我が事ながらちょっとキモいなと思いつつ、更に情報収集に務める。


特に目立った4人の周囲では、それぞれ小人族と巨人族の男女入り乱れての乱戦を繰り広げている。体格的に小人族が不利かと思われたが、実際はそんなことはなく、どうも小人族の面々は弱体化魔法を駆使しているようで、その影響で大きくパフォーマンスを落とした巨人族が少し押され気味であった。

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