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巨獣屠りしは、星すら砕く金剛ノ拳撃

「頭上を見上げてどうし――ああ、()()か」


「うん?上に何かあるの…………えぇ、何アレ、骨に見えるんだけど?」


『まごうこと無き骨よ。かつての大戦時、ルナティスの王家直属の魔法部隊が召喚士達の命を犠牲に召喚したと記録に残る巨獣フィリム――の骨らしいわ』



大戦、か。『無明』と『雪月天』について聞いた時にフィーさんが軽く説明してくれたな。亜人族と人族同士での戦争がこの『ムルフィーム』の街が出来る前にあったんだっけか。


20年くらい前に大戦が始まってそれから10年くらい前に終結したらしいけど……うん?ってことは、大戦時にこの巨大怪獣がこの地で暴れ回ってたって事?怖すぎるだろ。



「なんだってあんなのが街の地下深くに?」


「巨獣フィリムはサンセットの王が討伐したのだが、その戦闘の余波でフィリムの死体は地中の奥深くまで押し込まれる事になったと言われている」


「えぇ……」



サンセットの王様って事は人族なんだろうけど、特撮に出てくるような大怪獣を討伐したってなんなんだよ。化物ってレベルじゃないだろ。ちゃんと人なのか?



「あのとんでもなくデカい骨を持つ生物をこの地下深くに押し込んだ?ハハ、冗談きついよ」


『にわかには信じがたいけれど、歴史書にはきちんとそう記されているわ。大戦終結後にゴルドノア様の持つ規格外の建築技術とルナティスの優秀な土属性の魔法使い総出でフィリムの死体を土で埋め立て、その上にこの『ムルフィーム』の街が出来上がったのよ』


「その後、一体誰がどのようにしてこの地下街を作り上げたのかは諸説あるが、機人族から技術提供を受けた者達によるものというのが有力だ」



なんともまあスケールがデカすぎる話だ。巨獣フィリムとそれを仕留めてしまうサンセットの王。死体の骨を再利用してどこぞの誰かが地下に街を作り上げる。ファンタジー極まれりって感じだ。



「……なんか規模感が桁外れでオレは理解する気にはなれないや、アレが骨なのがわかっただけでヨシとしておくよ。とりあえず、捜索だよね?隊員の特徴聞いてなかったんだけど、教えてもらえるかい?」


『そういえば特徴までは説明していなかったわね。消息不明になっている隊員はミシィ、性別は女。種族は人族。背格好はケーラと同じくらいね。髪色は赤茶。格好は潜入捜査の為、支給している我々治安維持部隊の隊服ではなく黒のスーツよ。消息を絶った地点はここから少し離れた位置にある建物前。まずはその周辺を捜索するわ』


「それと、地上で行方不明の歩哨も捜索対象だな。地下街にいない可能性もあるが……、まあ探してみない事にはわからない。パトロ、私はそちらを優先で捜索するが、構わないだろうか?」


『ええ、お願いするわ』



そうだ、なんか色々あって数十分程度前の事なのに忘れかけてたけど、廃墟周辺に居た歩哨の人達もいなくなってるんだっけか。や、やることが多いな……、地味に頭がこんがらがりそうだ。

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