掃討完了
考察して視界が回復するのを待つもなかなか戻らないでいると、前方から此方へと近づいてくる音がした。
『――――ハァッ!』
「Kiii!?」
パトロが気迫の籠もった声を吐いた直後、足元で雷鳴と断末魔の叫びが聞こえた。それからゴトリ、という鈍い音が遅れて聞こえてきたが、地面に落下したクイーンをパトロが電光剣でトドメを刺したのだろう。
『目標の沈黙を確認。周囲に敵影――――ナシ。掃討完了。……ふぅ』
パトロが安堵するように小さな吐息を零すと同時に、白に包まれていた視界が徐々に回復していく。
ホワイトアウトから色を取り戻した視界に飛び込んできたのは、煌々と極彩色の輝きを放つ『恢白』と、頭と胴体が泣き別れになっているクイーンの姿であった。
ちょっと、いやかなりグロかったので視線をすぐに逸らし、心の中で反射的に念仏を唱える。南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏、成仏しろよ。いやまあゲームだから成仏も何もないけども。
『ご苦労様。それとごめんなさいね。クイーンの攻撃から防ぐ為に割って入れず、あなたを見殺しにしてしまう所だったわ。よく切り抜けられたわね』
「偶然命拾いしました。特に何かしたってわけじゃないので、本当にたまたまです」
『ウルトラソニック』が魔法攻撃じゃなかったら『恢白』で吸収する事なくモロに被弾してただろうから、こればかりは偶然に助けられた形だ。物理系の攻撃だったら今頃無惨に砕かれた氷壁よろしくボロボロになっていただろう。
しかし『恢白』これ本当に便利だな。攻撃では魔法の範囲と威力をブーストさせて、貯蔵されている魔力がない時限定だが、魔法攻撃を吸収する盾にもなる。全身をリペアドランの素材で固めた防具を作ったら最強なんじゃないか?
魔法攻撃はほぼ完封、放つ魔法は常時ブーストされるトンデモ魔法戦士になれる気がする。まあ素材調達どうすんだよっていう最大の問題があるのでそう簡単になれそうにもないが。
『運も実力の内よ。なにはともあれ、無事で何より。ケーラ達と合流して先に進みましょうか。二人を呼んでくるわ』
そう言うとパトロは通路の入口の方へと歩いていった。さて、パトロが二人を連れて戻ってくるまでにランスロッドを回収するか。俺は通路の奥で倒れているクイーンの亡骸の元まで歩いていき、胴体に突き刺さったランスロッドを引き抜いて回収する。
そういえばこの大量のテトロドバッドは回収してもいいのだろうか?テトロドバッドに近付くとステートウォッチがチカチカと発光はしているのだが、フードゥルを回収した時とは異なり、まるで警告するかのように高速での明滅を繰り返している。
試しに恐る恐るテトロドバッド達の亡骸にステートウォッチをかざしてみると、ステートウォッチからウインドウが飛び出した。
『テトロドバッドを【亜空間箱に収納しますか?』
『※警告:テトロドバッドは毒性を保有するモンスターの為、収納後1時間以内に排出しない場合、【亜空間箱】が汚染されます』
「そんなことある?」
思わず口からツッコミが飛び出してしまった。なんだこの仕様。いやまあ『ブルーボアの蹄』が1ヶ月くらいでダメになるみたいだから、収納しているアイテムを放置していると何かしらの悪影響があるのはわかるんだが、なかなか尖った仕様すぎるだろ。なんでこうも変にこだわりが強いんだこのゲーム。




