成否を分けるは己の技量
『クイーンの群れと遭遇すること自体珍しいのに、クイーンが複数体いるなんて聞いたことがないわよ』
「クイーンが複数となると、先程みたいに『ウルトラソニック』を連続で放たれた場合、発動後の隙がなくなり厄介なことこの上ないな……」
『本来の目的である隊員の捜索に着手する前に、随分と厄介な状況になってしまったわね……。ツキに恵まれないわ』
「こうなると後手を踏むのは悪手だな、多少のリスクは承知の上で隠し通路に飛び込んで、一気にクイーンと群れを撃破するしか突破口はなさそうだ。レオレクス、貴君は「ウルトラソニック』の音が聞き取れるんだな?」
「理屈はよくわかってないけれど、不快な音が鳴る気配みたいなのは察知出来るよ」
「それで十分だ。パトロ、作戦変更を提案する」
ケーラは瞬く間に氷壁を3枚、ドミノのように間隔を開けて展開させてパトロへと進言する。
「私が前衛で『ウルトラソニック』に対してレオレクスの指示で氷壁を展開し、僅かでも時間を作る。その生み出した時間でパトロとシキ、両名が通路に突撃して群れの掃討にあたるというのはどうだろうか?」
『いいでしょう、承認します。ただし万が一、3体目のクイーンがいる可能性を考慮して、先陣は私が切るわ。生身で『ウルトラソニック』は被弾させられないもの。あなたは私の背後について、確実に群れへ魔法を直撃させて仕留める事だけを考えて頂戴』
「わ、わかりました」
これは責任重大だ。俺がテトロドバッドの群れとクイーン達を仕留められるかどうかに、この突破作戦の成功の全てがかかっている。失敗は最悪の場合、このパーティーの壊滅を意味する。ミスは許されないぞ。
「――ッ、音がした。来るよ」
レオレクスの反応から数秒後、ケーラが展開した氷壁が1枚、2枚と粉々に砕け散り、3枚目に亀裂が走った所で崩壊が止んだ。通路からテトロドバッドの群れは飛来してこない。こちらの出方を伺っているのだろうか。
「ふむ、テトロドバッドの襲撃がなかったな」
『有効打にならないと判断したのかしら。とりあえず『ウルトラソニック』の連撃は氷壁2枚で防げるようだから、次に割れたタイミングで攻め込むわ。少しでも距離を詰めておきましょう』
パトロの指示に従い俺達は隠し通路の入口付近まで近づき、ケーラが壊れた入口を塞ぐように氷壁を2枚並び立てる。それからケーラはマナポーションを取り出し、一息に飲み込んだ。街中で戦闘した時は魔力を回復してるそぶりは一切なかったんだが、何か勝手が違うのだろうか?




