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屋内及び地下での火属性魔法の発動はお控え下さい

「その蝙蝠とやら、光に反応するならどうやって進むんだい?隠し通路って言うくらいなら通路は暗そうだけど」


『通路の天井には等間隔で自然発光するスプライト鉱石が埋め込まれているから、少し薄暗い程度で移動する分には支障はないわ。問題なのは、彼の装備が発する光量がスプライト鉱石より明るいからよ。猛毒を持つ蝙蝠のテトロドバッドはより強い輝きに対して襲い掛かる習性があるの』



発光するスプライト鉱石……黄昏の洞窟の中が、ヒカリゴケとか何もなくぼんやりと発光してたけど、それと似たような鉱石なのだろうか。



「ふぅん、とりあえず明るいモノは厳禁って事か」


『ええ、テトロドバッド1匹1匹は簡単に駆除出来るけれど、群れで行動するから下手に刺激しないようにして頂戴。ただ通過するだけなら何も問題は起こらないわ。けれど光だけでなく、大きな音でも襲い掛かってくる事が――――ッ、ケーラ!!【氷壁】を前面に!!』



説明をしながら前を進んでいたパトロが唐突に叫んだ。俺の後ろにいたケーラが一瞬でパトロを追い越して先頭に立つと、ノータイムで前面に巨大な氷の壁が展開された。



「な、何があったんですか?」


『テトロドバッドの群れが通路から飛び出してきそうになったの。ひとまずケーラに押し留めてもらったけれど、隠し扉が粉砕されたその破壊音の影響で気が立っているようね』



氷の向こう側では大量の蝙蝠がバタバタと羽を忙しなく動かして蠢いており、鋭い赤の瞳がギラギラとこちらに狙いを定めていた。あれがテトロドバッドか、一般的な蝙蝠のサイズがわからないけど、1匹1匹が林檎くらいの大きさだ。


辺り一面には、くの字になったプレートや粉々になった扉の残骸がそこかしこに散乱していた。おそらくミサさんが文字通りこじ開けたのだろうが、まるで重機で無理矢理破壊したかのような光景である。扉も金属で出来ているっぽいのだが、完全に折れ曲がってしまっており、破砕の威力の高さを悠然と物語っている。



「ああ、そういえばさっき爆発したみたいな音がしたね」


「武器の所持はなく隊員達を担いでいたからおそらく蹴りで破壊したのだろうが、凄まじい破壊痕だな。膂力だけでこれを成したというなら第六部隊長のガドー以上だ」


『救助活動に伴う破壊行為なので黙認はするけれど、弱ったわね……。扉がここまで壊れているとなると、一度通路内のテトロドバッドは駆除しないといけないわ。放っておくと、地上にまで出てきてしまうおそれがあるわ』


「害獣駆除?なら燃やしていいのかい?」


『待ちなさい。あなた、地下で炎を使うつもりなの?酸欠になる自殺行為よ、絶対にやらないで』



何処からともなく取り出した槍を構えたレオレクスに、パトロが忠告する。ああそうか、このパトロの物言いで気付いたが、地下で炎系魔法を使うと燃焼に使える酸素に限りがあるから危険なんだな。俺も知らずの内に使う所だった、あぶないあぶない。

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