その高み、未だ届くことなく
「私も捜索へ協力したい所なのだけれど、本日の稼働限界時間が迫っているから申し訳ないのだけれど御暇させてもらうわ。節度を保つのは、何よりも優先される事ですもの」
「へぇ、バーサーク、なんて異名がつけられてるくらいだからプレイ時間とかお構い無しだと思っていたけど、意外と気にするんだ」
「……バーサーク、狂戦士呼びは非常に不本意なのだけれど、そう称される戦闘を披露してしまった責任は私にあるから甘んじて受け入れますわ。ええ、誠に遺憾の意ではあるのだけれど」
腕を組み、小さく溜息を零すミサさん。闘技場にてつけられた自らの異名に対して思う所があるらしい。個人的には格好いいとは思うけど、当の本人からすれば納得がいかない様子。
「あれ、その言い方だと異名気に入ってないのかい?」
「ほほほ、淑女に対して狂う戦士という評価を下されて気に入る要素がどこにあるのか、是非貴女の考えをお聞かせ願いたいわね。バーサークという読みだけでなく、レディのルビを振られている単語が貴婦人ならともかく鬼婦人、ですわよ?」
「あー、…………うん、オレが浅慮だった、ゴメンナサイ」
「分かれば宜しい」
ミサさんの据わる視線の圧に耐えきれず、レオレクスはペコリと平謝りする。傍若無人なレオレクスですら、ミサさんの圧の前には借りてきた猫のように大人しくなってしまう。
今後ミサさんを呼ぶ時は異名呼びは控えた方がいいんだろうな。いやまあ異名で呼ぶような状況はまずはなさそうだけど、留意しておくに越したことはなさそうだ。
「さて、これから地下街へと向かう貴方達だけれど、『常在戦場の心を保ちなさい』という事を伝えておくわ。特殊な外套を身に着けてはいるようだけれど、気休め程度に留めておくように。鍛錬を積み重ねて得た技量や経験に基づいて下される判断力ではなく、外付けの力に依存した人間に未来はないわ、覚えておきなさい」
「忠告痛み入るね、武器に依存しない徒手格闘最強がそれを言うと説得力が違うよ」
「……、私は最強ではないわ。常に頂点を目指し続ける求道者であって、私の思い描く至高の頂きには既に彼女が居るの。それを越えない限り、『最強』なんて自他共に認めるわけにはいかないわ」
「彼女?」
「ヴィクトリア・ペレス。私が越えなければならない世界最高峰の存在で、世界最硬の障壁よ」
ヴィクトリア・ペレス
プロの女子総合格闘家。女子格闘技界において前人未踏の八階級制覇を達成した【絶対女王】と称される女傑。プロゲーマー顔負けのアマチュアゲーマーでもある。
170に満たないやや小柄な体型から繰り出す「神の左手」と称される、全身連動させた螺旋の力を繰り出して放たれる左ストレートは、どんなヘヴィーな相手であっても一撃で意識を刈り取る威力を誇る。




