実はヘルメット全体に衝撃が及ぶと、周囲に光が拡散して疑似閃光弾になる
「…………眩しくてよく顔が見えないのだけれど、とりあえずどなたか回復魔法かポーションを彼らに使ってくださる?生憎、持ち合わせがないの」
担いでいる隊員をゆっくりと地面へと降ろしたミサさんは俺達へと呼び掛ける。その言動で脅威性はないと判断したのか、パトロは右手を水平に下げるハンドサインを出すと、サウスとケーラは武器を取り下げる。
『サウス、回復をお願い出来るかしら』
「ハッ!」
警棒を収納したサウスは駆け足で倒れている隊員の元へと向かい、回復魔法を発動する。光の奔流が倒れていた隊員を包み込むと、横たわっていた2人は小さなうめき声を洩らした。
「うっ……」
「……っ、こ、ここは……?」
「気がついたか?自分の所属部隊と名前は答えられるか?」
「…………わ、たしは……第三、部隊……所属、…………カトー……っ」
「…………同じ、く、第三部隊、所属……キネカ……」
「一体何があった?」
「……3番街の路地裏、で、見かけた……指名手配されている【片翼】を、追跡……している時に、尾行がバレて、襲撃されました……。……それで【片翼】の仲間達に、地下街へと連れ去られて……」
「……【片翼】の支配する、区画へと連行されている、途中で……、現れた……そこの睡醒者に、助けられた……」
かなりのダメージを負っていたのか、回復魔法を施されたのにも関わらず息切れを起こしながら2人は状況を報告する。
……カタヨク、肩良く、……片翼か?翼だと鳥人族かな。おそらく翼が片方しかないとかなんとかで、文字通りの【片翼】の異名を付けられたであろうNPCに襲われて根城へと連行されかけた所を、通りすがったミサさんに助けられたようだ。
「そうだったのか、とにかくご苦労だった、今は休め。すぐに救護部隊へ連絡する。そこの婦人!我が組織の同胞を救出して頂き感謝申し上げる!」
サウスの視線がミサさんへと向けられると、その動きに合わせて頭上の探照灯がミサさんを直撃する。光線を真正面からぶつけられたミサさんは堪らず顔を横に背ける。
「……っ、礼には及ばないわ。それと、申し訳ないのだけれど、少々そちらの光量を抑えてもらえないかしら?」
「ッ!これは失敬!!」
指摘されて光害を発生させていることに気づいたサウスは左手でヘルメットの左側頭部を1回叩いた。すると光量が一段階下がり、保管庫内がやや薄暗くなる。光量調整出来たのかその探照灯。まあ調整するにも側面を叩かなきゃいけない謎仕様なのは変わらないようだが。




