陰鬱な空間
「それで、隠し通路とやらは何処にあるんだい?」
『この保管庫の最奥の壁に隠し扉があるわ、隠し通路はその先よ。それで、隠し扉を開くには少しコツが必要なのだ、け――――ッ、総員!警戒態勢!!』
「ッ!――了解!!」
「――了解」
レオレクスの問いに答えていたパトロが突然声を荒らげて厳戒態勢に移行する。命令に咄嗟に反応してみせたのはサウスとケーラで、サウスは折りたたみ式の警棒を、ケーラは銃を抜いて前方に向けて構えた。
レオレクスは特に慌てるそぶりもなく、マイペースに槍を取り出した。状況が上手く飲み込めないのだが、俺も遅れてランスロッドを取り出して構える。
『前方に生体反応あり!数は3!!…………?いや、妙ね。この反応は――』
「ごめん、キミの視界に何が見えてるのかよくわからないんだけど、もう少し詳しく説明してもらえるかい?」
『私は装備している【機殻鎧装】の機能で生体反応と熱源反応を感知出来るの。そしてたった今、生体反応を感知したのだけれ――』
――――ドォン!!
「ッ!?」
と、パトロが紡いでいた言葉を遮るように、前方から物凄い破砕音が炸裂した。サウスのヘルメットから差す探照灯の光が、前方に粉塵が立ち込めているのを照らし出す。
なんだなんだ?一体何が出てきたんだ?保管庫の奥から音が鳴り響いたという事は、隠し通路から出てきた可能性が高い。地面の中を掘り進んでモンスターが出てくる可能性もゼロではないだろうが、街の外ならともかく街中の、ましてや地中ではまずあり得ないだろう。
となると一番可能性が高いのは人であるプレイヤーかNPC、もしくは従機士か。
粉塵が舞い上がり、明かりに照らされて砂埃のプロジェクターにぼんやりと浮かぶのは人影だ。なんかやたら両肩の部分がゴツく出っ張った逆三角形のシルエットが、こちらにコツコツと響く足音と共に近づいてくる。
俺はランスロッドを固く握りしめて前方に注意を払う。パトロ達も同様に警戒を厳とする。レオレクスは特に構えるでもなく、自然体で立っていた。
そして反響する足音は止まることはなく、探照灯に照らされた粉塵を掻き分けてあ姿を現したのは――――
「――――あら、随分と陰鬱な空間ですこと」
両肩にフルフェイスのヘルメットを被った治安維持部隊の隊員を担いだミサさんであった。




