歩哨は何処へ
違和感を覚えて慎重な足取りで歩みを進めたパトロの後ろをついていく。路地裏の、それも突き当りという事もあってか人通りはなく、周囲の建物もどこか寂れた雰囲気が漂っている。周辺の街灯の数も少なく全体的に視界が暗い。背後からの攻撃とか来たら見逃してしまうかもしれないな。
それから曲がり角の直前まで進むとパトロの姿勢がやや前傾に変化する。腰の位置を落とし、角からそーっと覗き込むような体勢になっているのを2m近い巨体がやるのは少しシュールな光景である。
『……廃墟正面に生体反応及び熱源反応なし、か。戦闘の痕跡も……特になし、ね。なら歩哨の任を任されている隊員は一体何処へ……?』
「なにか判明したのかい?」
後頭部に両手を回して危機感や警戒感の欠片もないレオレクスがパトロに尋ねた。それを見たフルフェイスの部下がレオレクスの無礼な態度にイライラしているのが一目でわかったが、その怒りの矛先がこちらに向いても面倒なことになりそうな気配しかなかったので、ここは見なかったことにする。
正直NPCからの好感度、めちゃくちゃ低そうなんだよなレオレクス、いつか刺されたりするんじゃなかろうか。
『……そうね、まず歩哨の任についているはずの人員が新たに消息不明。本来であれば正面入口には本部と同様に番兵が正面入口に居るはずなのだけれど、それが不在になっているのは見過ごせないわね。戦闘の形跡はないし、正面入口は鎖で完全に施錠されている。廃墟も軽く見た限り、荒らされた形跡も特になし』
「建物内にいたりするとかそう話ではなくて?」
『その可能性も考慮したけれど、熱源反応が欠片もないのであれば、なんらかの事件へと巻き込まれた可能性がもっとも高いわ。兎に角、異常事態なのは間違いないわ』
「ふぅん?」
『けれど、現状では結論を語るには情報が足らなさ過ぎるわ。ひとまずは廃墟の地下保管庫まで向かいましょう』
姿勢を戻したパトロはそれから覗き込んでいた曲がり角の先へと歩みを再開した。俺たちもその後を追う。先行するパトロが正面入口、左右に開きそうな形状をしている扉が入念に金属の鎖で縛られている箇所まで到達すると、パトロはゆっくりと鎖を解き始めた。あ、ここの入口はそういうレベルのアナログチックなのね。




