行ってみたいな、よその国
『ひとまず解錠処理を済ませてきてもらえるかしら。私達は正面入口で待機しているわ』
「了解した。対応が完了次第、すぐに向かう」
それからパトロらと別れて、再び歩き始めたケーラの後を追う。階段を登りニ階に到着し、それから廊下を突き当りまで進むと『解錠処理室』というプレートが付いた扉の前に到着。すぐ傍に設置されているパネルをケーラが操作すると扉が開き、部屋の中には腕を包み込むタイプのハンドマッサージャーの様な機械が台座の上に鎮座していた。
「その機械にバングルのついた腕を差し込んでくれ。発光後、音が鳴ったら腕を抜いてもらえれば解錠処理が完了となる」
ケーラの指示通りに機械に腕を突っ込むと、ヴオンという小さな唸る音の直後、機械が淡く青色に発光すると、カチリという音と共に腕に纏わりついていた拘束感が緩むのを感じた。極端に減少していた魔力ゲージとスタミナも正常値に戻る。腕を機械から引き抜くと、銀のバングルは跡形もなく消えていた。
「……あれ?バングルがないんですけど」
「ああ、バングルはその装置で解錠した後は装置の機能で一度粒子状にまで分解し、再構築するようになっている。気にしなくていい」
「え、なにその物騒な機能。そんなものに腕を突っ込ませたのかい?」
「特殊な鉱石を通して照射された光源に反応すると、粒子状に変化する貴金属でバングルは作られているから人体には無害……だそうだ。私も技術的な話は専門外な為、詳しい話は申し訳ないが答える事が出来ない」
「ンー、粒子化なら『プラチナノ鉱石』あたりデス?それを武器に加工して、粒子化で色々スタイルチェンジ出来る武器がある話なら聞いた事ありマース」
「ああ、その武器ならオレ闘技場で見た覚えがあるよ。その時は槍から大鎌に変形させてたね。二つ名持ちだったけど、なんだったっけかな……」
「もしかして、【槍兵紳士】じゃないですか?」
はじめて闘技場に行った時にミサさんと戦ってた相手が変形する武器を使っていたっけ。プレイヤーネームが確か……ジレンだった気がする。音声認識で槍から大鎌、小盾、剣、大槌と色々変化してたな。蒼馬がやたら没頭してブツブツ解析してたっけ。
「あー、うん、そんな二つ名だったかも。かなり珍しい武器で、何度も闘技場に参加してるけど未だにあの人以外に使ってる人は見たことがないね」
「『プラチナノ鉱石』はチョウキショー素材とワタシに鍛冶を教えてくれたマスター言ってたデス。採掘場所が限られてるのと、出回っても海上都市内でしか取引されないってボヤいてマシタ」
海上都市はサンセットとルナティスとは別のエリアだ。その名の通り、海の上に浮かぶ都市で街全体が海の上に建っているらしい。
ただ入場するには闘技場とかと同じように制限があるらしく、Aランク以上でないと入れないエリアとの事。まだBランクの俺には関係のない話だ。ランクを上げたら行ってみたい所ではあるが、まあ当分先の事か。




