とりあえず釈放です
「………………………………。――フンッ!!」
ケーラから手渡された分析結果が書かれたであろうプレートを眺めるレオレクスだったが、読み進めていくにつれて苦虫を噛み潰したかのような表情へと変化していき、最後まで読み終えた直後、握っていたプレートをそのまま勢いよく床へと叩きつけた。よほど見たくないモノを直面させられたらしい。一体何が書かれてたんだ……。
「耐久性は高い代物とはいえ、あまり乱暴に扱ってもらいたくはないのだが……。さてシキ、貴君はどうする?」
「え?えーっと、…………遠慮しておきます」
ケーラから閲覧するかを問いかけられたが、今回は怖いもの見たさの好奇心よりも珍しく忌避感が勝ったので見ない事にする。気になったら迷わす突き進むのが正解とは限らない、あえて知らない事で平静を保てる時だってあるだろう。しらんけど。
「Hey!ワタシのはないデスか?」
「申し訳ないが、貴女の分析は今回行っていない。脅威対象となり得る可能性のある睡醒者にのみ解析は許可されている為だ、ご理解願いたい」
「Oh、残念デス。ならレオの結果でも……ンー?何も書かれてないデス?」
床に叩きつけられたプレートを摑んだクレイが首を傾げる。
「ああ、この解析結果は調査対象本人と我々の一部でしか詳細を把握出来ない仕組みが施されている。関係者以外の閲覧は不可能だ」
「ホー、ナルホドー」
「…………うん、未遂に終わったけどしれっと人のプライバシー覗こうとするのやめてもらえるかい?」
「HAHAHA、見られて困るモノを捨てたレオが悪いデース!」
「……っ、とりあえず返してくれるかい?」
「NO!モノを乱暴に扱うのはスルー出来まセン、本来の持ち主に返しマース!」
プレートを取り上げたクレイはレオレクスへとは渡さずケーラへプレートを返却した。
「……ふむ。感謝する。さて、少々目に余る行動もあったが、レオレクス、貴君も解析結果からは大幅に逸脱した行為は見られなかった。私への攻撃は……姉君との縁に感謝することだな。先の騒動の対応も過剰防衛気味ではあったが、従機士二人組の脅威度を考慮して今回限りだが不問とする。ただし次回もそうなるとは限らないので留意するように。場合によっては冒険者資格の停止や剥奪の措置を取るようになる」
「………………、はいはい」
渋々、と言った感じでレオレクスが答える。迷惑行為で治安維持部隊のお世話になると、冒険者資格の停止や剥奪もあるのか。冒険者資格が停止されるとなると、Bランク以上で利用が出来る施設が使えなくなるのはもちろん、クエストの受注も不可能になるわけだ。普通にプレイするなら致命的でリセット案件レベルである。
他人事のように考察しているが、もしかしなくても一歩間違えたら俺もそうなっていたわけで。……うん、国家権力には逆らうべきじゃないな。リーラライフさんが通りすがった幸運に感謝しよう。
「取調は以上だ。では貴君らに掛けたバングルを解錠する為これより移動する。鍵を保管している一室まで案内するので遅れず付いてくるように」
そう言って部屋から退出していくケーラの後ろ姿を追いかける。先を行くケーラは長い廊下の突き当りを左折して階段を登っていく。俺達も続けて階段を昇ると、上段から複数の足音と機械の駆動音が耳に届いた。




